

ドラゴン桜2では、そんな悩みを解決するためにドラゴン桜式・数の暗黙知を身につける学習法を提案している。
今回はドラゴン桜2の8巻より、なんと48ページを無料で大公開。東大受験生が小2の算数から勉強し直すべき理由と方法を、自称資格マニアのNagiの考察付きで解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/Nagi
映像翻訳スクール出身。総合旅行業取扱管理者、鎌倉検定1級、TOEIC910点など、多くの資格試験・検定試験に合格している資格マニアでもある。
まずは「ドラゴン桜式・数の暗黙知」をチェック!
まずは漫画を読んでいきましょう。東大専科がゴールデンウィークを利用して、鎌倉のゲストハウスで勉強合宿をしている場面です。数学の小テストを受けた早瀬さんと天野くん。高1レベルの問題にも関わらず全問不正解となり、2人そろって0点を取ってしまいます。
ここで「高1の数学を復習だ」とはならないのがドラゴン桜式。なんと、小2の算数にまでさかのぼった特訓が始まります。さらには、数学の鬼と呼ばれた、あのスパルタ講師も登場です!
それでは、さっそく漫画をご覧ください。
















































数学が得意になるための条件は「計算力」
高1数学の小テストで0点を取った早瀬さんと天野くんは、小2の算数から学び直すことになりました。足し算と引き算からやり直すとは、なかなか驚きですよね。基礎を学び直すにしても極端すぎると思った人も多いのではないでしょうか。ここで重要視されているのは、当然、足し算と引き算ができるかどうかではありません。計算力があるかないかに焦点が当てられています。
桜木先生が2人に課したのは、速く正確に計算する特訓。つまり「計算力を高める特訓」です。小学2年生レベルの計算とはいえ、足し算・引き算100問を3分で解き、かつ満点を取るのは容易なことではありません。
まさに、この「計算力」の差こそが、数学を得意とする人と苦手とする人の差になります。逆に言えば、計算力を鍛え上げることで、数学が得意な人たちと同じ土俵に立てると言えるでしょう。
数学の得意不得意は小学2年生の時点で決まる!その分岐点とは?
では、なぜ「小2の算数」なのでしょうか。小学校の授業では、基本的に2年生から足し算・引き算の筆算(ひっさん)が始まります。筆算とは、紙に書いて行う計算のこと。つまり、この時期にどれだけ多くの時間を計算ドリルに費やしたか、いかにたくさんの数字に触れたかが、その後の運命を決めるというわけです。数学のセンスが根付くのも、この段階だと言えるでしょう。
筆者は小学校低学年の頃に公文式に通っており、それなりに計算問題に取り組んだ子どもでした。それでも、暗算教室やそろばん教室に通っていた同級生の計算力との違いは歴然。幼いながらも数字に対する感覚の違いを感じていたものです。
数学は嫌いではありませんでしたが、難解な高校数学にはついていけませんでした。それにも関わらず、最終的に数学受験で文系の学部に進んだので、数学が大の苦手というわけではなかったようです。公文式のおかげと言えるかもしれませんね。
その1.小2の算数は優等生・劣等生への分岐点
小2の算数に力を入れることは、その後の算数(数学)を習得する上での影響だけにとどまらないようです。桜木先生は、小学2年生の時点で算数が得意に「なれる」か「なれない」かで、中高の勉強の「できる」「できない」までもが決まると断言しました。小2算数の習得が、他の科目や将来的な成績に影響すると言うのです。
筆者の小学校時代を振り返ってみると、確かに、算数ができる生徒というのはトータル的に見ても優秀だったように思います。さらに言えば、算数の最大難関とも言える「掛け算九九」を習うのも小学2年生。ここでつまずいた生徒は算数だけでなく、他の科目の習得に対しても苦労していました。
優等生の道を歩むか、劣等生の道を歩むかの分岐点は、小2の算数にあったというわけです。
その2.できる子への登竜門は「算数」にあり
前述したとおり、算数ができる生徒は他の教科ができる生徒よりも目立つ傾向にあり、その逆も然りです。例えば、足し算・引き算や九九ができない子は、勉強ができないというレッテルを貼られがち。これに対して、漢字が書けない子は練習不足で、勉強次第では挽回が可能といったイメージがあります。
自我が未発達なこの時期に「できない子」という烙印を押されてしまうのは、教育において致命的なこと。烙印を押された子は、自己を肯定する力が育たず、勉強に対する意欲も低下してしまいます。周りの評価が、子どもの成長に絶対的な影響を与えてしまうのです。
小2の算数は、いわば「できる子への登竜門」。ここをくぐれた子は、自他ともに認める優等生として育っていけるのです。
文科省における算数のカリキュラムの位置づけ
ここで、日本の教育過程、カリキュラムの位置づけという視点から、小2の算数の重要性を見ておきましょう。
小学2年生の一年間、7歳から8歳というのは、算数の基盤固めの時期。位取(くらいど)りや、足し算・引き算のくり上がり、くり下がりの完成といった算数の根幹となる考え方が授業に登場します。さらには、九九を丸暗記するのもこの時期です。
漫画が示したデータからも分かるように、小学校のカリキュラムで算数が占める時間の割合は小学2年生で大きく増加。文科省が、この時期の算数の授業を重要視している証拠と言えるでしょう。まさに、小学2年生の一年間を教育の勝負の年と見ているのです。
文科省さえも重視する「小2の算数」。教育においていかに大切かということが分かりましたね。
「数の暗黙知」とは何なのか?
ここからは、いよいよ今回のメインテーマとも言える「数の暗黙知」について考察していきましょう。
桜木先生は、小学2年生という期間に、くり上がり・くり下がり計算と九九を完璧に覚えると「数の暗黙知」が身に付くと言っています。「暗黙知」という言葉を知らなかった筆者は、この言葉を見たとき「数学用語か何かかな?」と思いました。映画や小説のタイトルにも出てきそうですよね。
「暗黙知」というのは、経験的に使っている知識のこと。ベースとなっているのは勘や直感です。そのため「知識」とはいえ、言葉で説明することは難しく、簡単に理解できるものではありません。
その代表例と言えるのが「自転車の乗り方」です。自転車は体で乗り方を覚えなければ、決して乗れるようにはなりません。そして、乗れるようになれば、乗り方を忘れてしまうということもないですよね。
算数(数学)を学んでいく上で、数に対する感覚を身につけることは非常に重要です。これがなければ、当然、計算や数の操作に苦労します。つまり「数の暗黙知」とは「言葉で説明することができない、数字に対する直感力」だと言えるでしょう。
「数の暗黙知」を身につけるための学習法はこれだ!
これほどまでに小学2年生という時期の重要性を説かれると、今から「数の暗黙知」を身につけるのは、もう手遅れだと思わずにいられませんよね。
受験生の皆さん、安心してください。桜木先生は、高3になってからでも十分に間に合うと断言しています。もちろん、簡単に身に付くものではなく、特訓が必要。ここで呼ばれたのが、前作のドラゴン桜にも登場した数学の特別講師、柳鉄之介(てつのすけ)先生というわけです。
それでは、柳式「数の暗黙知を身につける方法」を見ていきましょう。
その1. 数の暗黙知能力向上プリント100問ノック
桜木先生の計算プリントは、足し算・引き算を解くものでしたが、柳流プリントでは様々な計算問題が用意されています。まずは、小2レベルの「分解九九」100問。これを5分で解くことを、東大専科の二人に課しました。
この他にも、加減乗除を使って4つの数を10にする「メイク10(小6レベル)」。瞬時に数の大小を判断して等号・不等号を入れる、小5小6レベルのプリントも用意されています。
まさに、野球のスパルタトレーニングである「1000本ノック」ならぬ「100問ノック」。こういった計算問題を満点が取れるまで徹底的に繰り返して、「数の暗黙知」を高校レベルにまで引き上げようというわけですね。
その2. 身体に計算を染み込ませる卓球暗算
今回の漫画では触れていませんが、柳先生は前作で「卓球暗算」という特訓を取り入れていました。特進クラス出身の水野さんも、このイメージトレーニングで「数の暗黙知」を鍛えたのです。
算数や数学の問題は、いわば「向かってくる卓球の球」。反射的に正解を出して打ち返すためには、元になる定義や公式も瞬時に思い出さなくてはなりません。
数学をスポーツと捉えて、目の前の問題を瞬間的に自動的に機械的に解く。まさに暗黙知を身につけるための特訓と言えるでしょう。今回、柳先生が提案している学習法の基盤は、この卓球暗算にあるのです。
その3. 数的基礎代謝を上げるLINEバトル
東大専科の2人が柳式プリント(分解九九100問)を解いた結果、天野くんは6割、早瀬さんにいたっては半分も正解できませんでした。そこで、柳先生が持ち出したのは、なんと「スマホ」。LINEを使って数的基礎代謝を上げるトレーニングを提案します。送られてきた数字の素因数分解を即座に行い、そのスピードを競うトレーニング。名付けて「LINEバトル」です。
柳先生いわく「数的基礎代謝」とは「数の体内分解処理能力」のこと。何だか難しそうですが、簡単に言えば「インプットした数を処理してアウトプットする能力」です。これこそ計算をする上で必要とされる、根本的な能力と言えるでしょう。
卓球暗算を教えていた時代も、数学はゲームや遊びと捉えよ!と説いていた柳先生。時代錯誤とも言われていたスパルタ柳流が、最新テクノロジーとしっかり融合しています。木刀ではなくスマホを手にする柳先生の姿は、何とも感慨深いものがありました。

数の暗黙知は自転車が乗れるようになる感覚と同じで、ひたすら体に教え込むしかないんだ。
計算力を上げたかったら、解いて解いて解きまくる!するとある時自分の中での数字に対する感覚が変わっていることに気づくだろう。そこが打開点だ。
自称資格オタクの感想
筆者は算数や数学が得意ではありませんでしたが、絶対的な答えを導き出す過程の面白さは理解できます。小学2年生の時に、もっと積極的に計算問題を解いていたら、微分積分などの難解な高校数学にも臆することなく取り組めていたのかもしれません。
仕事でExcelを使うようになってからは、学生の頃には気がつかなかった関数の奥深さが理解できるようになりました。もはや、小2でも高3でもない筆者ですが、今回の漫画を読んでいて「私も数の暗黙知を鍛えたい」と本気で思いました。桜木先生の「足し算・引き算プリント」や、柳先生の「数の暗黙知向上プリント」をバカ鉢巻きをして、ひたすら解いてみたいです。
はたして、どれくらいノックを受ければ満点が取れるでしょうか…。
余談ではありますが、筆者は資格オタクなだけに「簿記3級」の資格を持っています。3級で必要とされるのは小学校の算数レベルです。簿記は2級で中学数学、1級で高校数学が出てくると言われています。以上、簿記の資格に興味がある人のためのプチ情報でした。
「数の暗黙知」を武器にして無敵のファイターになろう
今回の記事では、小2の算数から学び直す重要性と「数の暗黙知」について解説しました。数学は「数を学ぶ」教科。数字が嫌いだという人が、数学を得意にできるはずもありませんよね。
文系だから数学は必要ない、数学の公式なんて社会に出て役に立たない。こういった否定的な認識は少なくありません。しかし、数学というのは生きていく上で、私たちが思っている以上に重要です。
数学は論理的な思考と結び付いている学問。数学の答えというのは、自分の頭からひねり出さなければ出てきません。論理的に物事をとらえられる人は、社会的にも優位に立てることは容易に想像できるでしょう。
「数の暗黙知」は、生き抜くための最強の武器です。しっかりと身につけて豊かな人生を手に入れましょう。