この記事では「惚れた腫れた」について解説する。

端的に言えば惚れた腫れたのは「恋に夢中になっている」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「惚れた腫れた」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。「惚れた腫れた」という単語と無縁になって何十年。若い頃をちょっとだけ思い出した彼女が「惚れた腫れた」について解説する。

「惚れた腫れた」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「惚れた腫れた」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「惚れた腫れた」の意味は?

「惚れた腫れた」には、次のような意味があります。

1.恋に夢中になっていることを強めていう言葉。また、からかっていう言葉。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「惚れた腫れた」

「惚れる」恋をして相手に夢中になること。片思い、悲恋、大恋愛…恋は文学を生み出す源です。特に平安時代の貴族達において、恋は文化でした。小倉百人一首では100首の内、恋の歌が43首を占めます。

やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな

「もし、あなたとの(今夜、逢いに行くからという)約束がなかったら、ためらわずに寝てしまったのですが、(その約束があったので)あなたをお待ちしている間に夜は更け、西の空に月がかたむくのを見ることになってしまいましたよ」

この歌は「逢いに行く」といった男性を待つ切ない恋心を読んだ歌。この女性は相手の男性のことを想い、溜息をつきながら待ち続けたことでしょう。そして月が西にかたむく日の出前になって「あぁ…夜が明けてしまう…あの人は来てくれなかった」と少し恨めしく思ったはず。

ところで何故この歌が「女性が男性を待って詠んだ歌」ということができるのかというと…この時代、男性が女性のところへ通うのが恋愛のスタイルだったからです。しかも通う相手は一人とは限らないのが一般的。この女性は「約束しておきながら、他の女のところへ行ったかも…」と思ったかもしれません。

「惚れた腫れた」の語源は?

次に「惚れた腫れた」の語源を確認しておきましょう。

「惚れた腫れた」という言葉の「惚れた」は「好きになった」ということです。では「腫れた」は何でしょう。先ず言えることは「~れた~れた」と、語呂合わせで言葉にリズムを与えているということです。

しかし、何故「腫れる」なのでしょうか。「腫れる」は炎症を起こして膨らんでいるという病気の状態のこと。「恋の病」といいますよね。「惚れた腫れた」には「恋に夢中になっていることをからかう」という意味もあります。「腫れた」は恋にうかれている状況を恋の病になぞらえたものと考えられますね。

\次のページで「「惚れた腫れた」の使い方・例文」を解説!/

「惚れた腫れた」の使い方・例文

「惚れた腫れた」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.もう直ぐ結婚する私に先輩はこう言った。「惚れた腫れたは当座のうち。女は結婚すると変わる。子供が生まれると、もっと変わるぞ」

2.彼女を迎えに行くために車に乗ろうとしたら、隣のおじさんが「これからデートかい?いいねぇ。羨ましいねぇ。そんな惚れた腫れたの頃に私も戻りたいよ」と、言った。僕が「その相手はおばさんでしょ?」と訊いたら、「勿論!」と言う女性の声と同時に隣の家の窓が開き、顔をだしたおばさんがニッコリ笑った。

3.惚れた腫れたって言う前に、ちゃんとした仕事につきなさいよ。今のままじゃ、直ぐに愛想を尽かされるから!」と姉に説教された。

例文1:「恋愛と結婚は別」。これはよく耳にする言葉ですね。この言葉は色んな意味合いを含みますが、「惚れた腫れたは当座のうち」も「恋愛と結婚は別」ということを表す言葉。「当座」は「一時(いっとき)」という意味で、「好きだの何だのと甘い生活をするのは婚約している時期や結婚したての頃のほんの一時で、直ぐに生活に追われるようになってしまう」ということを表しています。

例文2:「当座のうち」が過ぎ去ってしまい、年月が経つと例文2のようになる訳です。我が家の場合、「生活に追われるどころか、パワーバランスまで変わってくる」というのは夫の意見。「あなたは『釣った魚に餌要らず』だったから、お互い様でしょ」というのが私の意見です。

例文3:「あばたもえくぼ」という言葉があります。これは「恋をしているいと、相手の皮膚病の痕も可愛いえくぼに見えてしまう」、つまり「恋をしていると、相手の欠点も長所に見える」という意味ですね。しかし、相手のあばたがいつまでもえくぼに見える訳ではありません。えくぼがあばたに見えた時、愛想を尽かされることはよくある話です。

「惚れた腫れた」の類義語は?違いは?

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「惚れた腫れた」の類義語をみていきましょう。

「首ったけ」

「首ったけ」とは「恋する相手に夢中になること」を言います。語源は足元から首までを指す「首丈」(くびたけ)。足元から首までという、ほぼ全身がどっぷりと浸かり込むほど相手に夢中になることですね。

「首ったけ」は「A子に首ったけ」というように相手に夢中になっている状況を表しますが、「惚れた腫れた」恋に夢中になっている状況を表していますね。

\次のページで「「惚れた腫れた」の対義語は?」を解説!/

「惚れた腫れた」の対義語は?

続いて対義語です。

「愛してその悪を知り憎みてその善を知る」

「惚れた腫れた」は恋に夢中になっている状況を指します。恋に夢中になると、「あばたもえくぼ」というように正しい判断ができなくなってしまいがち。また恋をすると感情だけで判断してしまうこともあります。

恋に夢中になっても、愛憎の感情によって理性を失うことなく、物事を冷静に判断することが重要であることを表したのが愛してその悪を知り憎みてその善を知る」なのです。

「惚れた腫れた」の英訳は?

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「惚れた腫れた」を英語で表現してみましょう。

英文1.  The old man said,”You and her are head over heels in love with each other. And so,you will stare each other even if a natural disaster takes place”.

「君と彼女は惚れた腫れたで、もし天変地異が起こっても、お互いに見詰め合ってるだろう」と、その老人は言った。

英文2.  I am madly in love with her. But I know I can't marry her with this income.

惚れた腫れたと言ったって、この収入では私は彼女と結婚できないことはわかっている。

英文1head over heels in love with each other」「惚れた腫れた」という意味。直訳は「お互いに夢中なので」です。お互いに夢中である彼と彼女を老人がひやかしている状況を表している英文ですね。

英文2は直訳すると「私は彼女に首ったけだ。しかし、この収入では私は彼と女と結婚できないことはわかっている」です。 「madly in love with」首ったけという意味。「私は彼女に首ったけだ」という表現は「彼女を猛烈に愛してる」という意味なので「私」は「惚れた腫れた」という状態なのです。現実は「愛があればなんとかなる」…という訳ではありません。

\次のページで「「惚れた腫れた」を使いこなそう」を解説!/

「惚れた腫れた」を使いこなそう

この記事では「惚れた腫れた」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「惚れた腫れた」は「恋に夢中になっていることを強めていう言葉。また、からかっていう言葉」で、類義語は「首ったけ」、対義語は「愛してその悪を知り憎みてその善を知る」、英語では「madly in love with」等と表現されること等がわかりましたね。

脳科学的にいうと「恋」は動物的な欲求に基づくもの。だとすれば「恋をすると、理性が働かない」といわれることも納得できますが、そこは人間。「恋」に振り回されることなどなく、自分というものを失わないようにしましょう。

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国語言葉の意味

「惚れた腫れた」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「惚れた腫れた」について解説する。

端的に言えば惚れた腫れたのは「恋に夢中になっている」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「惚れた腫れた」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。「惚れた腫れた」という単語と無縁になって何十年。若い頃をちょっとだけ思い出した彼女が「惚れた腫れた」について解説する。

「惚れた腫れた」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「惚れた腫れた」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「惚れた腫れた」の意味は?

「惚れた腫れた」には、次のような意味があります。

1.恋に夢中になっていることを強めていう言葉。また、からかっていう言葉。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「惚れた腫れた」

「惚れる」恋をして相手に夢中になること。片思い、悲恋、大恋愛…恋は文学を生み出す源です。特に平安時代の貴族達において、恋は文化でした。小倉百人一首では100首の内、恋の歌が43首を占めます。

やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな

「もし、あなたとの(今夜、逢いに行くからという)約束がなかったら、ためらわずに寝てしまったのですが、(その約束があったので)あなたをお待ちしている間に夜は更け、西の空に月がかたむくのを見ることになってしまいましたよ」

この歌は「逢いに行く」といった男性を待つ切ない恋心を読んだ歌。この女性は相手の男性のことを想い、溜息をつきながら待ち続けたことでしょう。そして月が西にかたむく日の出前になって「あぁ…夜が明けてしまう…あの人は来てくれなかった」と少し恨めしく思ったはず。

ところで何故この歌が「女性が男性を待って詠んだ歌」ということができるのかというと…この時代、男性が女性のところへ通うのが恋愛のスタイルだったからです。しかも通う相手は一人とは限らないのが一般的。この女性は「約束しておきながら、他の女のところへ行ったかも…」と思ったかもしれません。

「惚れた腫れた」の語源は?

次に「惚れた腫れた」の語源を確認しておきましょう。

「惚れた腫れた」という言葉の「惚れた」は「好きになった」ということです。では「腫れた」は何でしょう。先ず言えることは「~れた~れた」と、語呂合わせで言葉にリズムを与えているということです。

しかし、何故「腫れる」なのでしょうか。「腫れる」は炎症を起こして膨らんでいるという病気の状態のこと。「恋の病」といいますよね。「惚れた腫れた」には「恋に夢中になっていることをからかう」という意味もあります。「腫れた」は恋にうかれている状況を恋の病になぞらえたものと考えられますね。

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