この記事では「早鐘」について解説する。

端的に言えば、早鐘の意味は「緊急事態を知らせるために激しく乱打する鐘」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「早鐘」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「早鐘」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「早鐘」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「早鐘」の意味は?

「早鐘」には、次のような意味があります。

1.火事や水害などの緊急な事態を知らせるために、激しく乱打する鐘。
2.激しい動悸のたとえ。「心臓が早鐘を打つ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「はや-がね【早鐘】」

「早鐘」には、大きく分けて、3つの意味があります。

1つは、火事や戦(いくさ)、水害といった緊急の出来事を知らせるため、続けざまに激しく乱打する鐘やその音のこと。擦半鐘(すりばんしょう)とも言います。

もう1つは、歌舞伎の下座(げざ)音楽で、変事が起こった場面において、本釣鐘を撞木(しゅもく)で早めに打ち鳴らすこと。

さらに、激しい動悸のたとえという意味もあります。

「早鐘」の語源は?

次に、「早鐘」の語源を確認しておきましょう。

早鐘は、「鐘」を「早く」打つとの言葉から成り立っていることがポイント。鐘は、何かを知らせる時に打つものであり、それが通常よりも早ければ、緊急事態などが起こっている、それをいち早く知らせるため、早鐘が乱打されるというわけです。

中世の歴史書『太平記』に、「院々に早鐘(はやかね)撞いて、西坂已(すで)に攻破られぬと、本院の谷々に騒ぎ喚(よばは)りければ」との記述があります。

\次のページで「「早鐘」の使い方・例文」を解説!/

「早鐘」の使い方・例文

「早鐘」の使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.電車に乗ると、あまりの緊張で動悸が止まらず、まるで心臓が早鐘のように打っている。表情もよくない
2.珍しい外出で、不安とパニック、恐怖で興奮状態となり、早鐘をつくような感情になって、ついに発作が起きた
3.医師による検査、診断、治療により、早鐘をつくような気持ちと症状は治まった。早期受診は期待以上だった
4.早鐘のごとく鼓動が続き、極限まで血圧が上昇する高血圧で、異常な動作や行為も見られた

それぞれの例文について、解説していきます。

例文1は、緊張のあまり、早鐘のように心臓の鼓動が早くなっている様子。例文2も、自分をコントロールできず焦っている様子がうかがえます。

例文3は、激しい動悸のたとえで、心臓がバクバクしていたよくない症状が治まったという表現。そして、例文4は、これも早鐘をうつかのように心拍速度が上がった様子を意味しています。

「早鐘」の類義語は?違いは?

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次に、「早鐘」の類義語(類語)を見ていきましょう。

類義語として、主に、心拍数が高まる動悸が激しくなるドキドキ緊迫する胸が騒ぐ上ずる切迫追われるただならない動転する、などがあります。

その1「動悸が激しくなる」

「動悸が激しくなる」「動悸」とは、医学的に、心臓の鼓動を強く、または速く感じる、脈拍が乱れるといった症状のことです。激しい運動をした後のほか、不安やストレス、睡眠不足や過労、貧血や更年期障害などが原因という場合も。

「早鐘」という言葉の意味に、動悸が激しくなるたとえ、がありますので、ほぼ同じ意味です。

\次のページで「その2「ドキドキ」」を解説!/

その2「ドキドキ」

「ドキドキ」は、「どきどきする」という意味で、何かの感情によって鼓動が激しくなるようす心臓が大きく脈打つようすなどを表す言葉です。

例えば、期待、不安、緊張など。あるいは、激しい運動の直後などを示す表現でもあります。良い時も悪い時も使われる便利な表現です。

「早鐘」は、あまりよくない状況で使われるため、それが「どきどきする」との違いと言えます。

その3「ただならない」

「ただならない」は、普通ではないいつもと異なる特殊な状況などを意味する表現です。昔からある「ただならぬ」という言葉を現代語的に言うと、ただならないとなります。

早鐘も、これと同じ状況を指し、加えて、鐘を乱打することが加わるのが違いです。

「早鐘」の対義語は?

続いて、「早鐘」の対義語(反対語)を確認しておきましょう。

早鐘の対義語として、はっきりとした言葉はありません。

他の類義語を見ても、反対の意味となる言葉を調べても、なかなか出てきません。あえて「ドキドキ」の逆だと、ガッカリ、げんなり、ガックリといった言葉が考えられます。

「早鐘」の英訳は?

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さらに、「早鐘」の英訳についても、見ておきましょう。

「早鐘」を英語に訳すと、火急を知らせる鐘の場合は、an alarm (bell) もしくは a fire bell です。そして、激しい動悸だと、one's heart beat fast など。

その他にも、さまざまな英語表現があります。

その1「a fire bell」

「早鐘」をそのまま英語に訳すと、a fire bell または an alarm bell です。そして、早鐘をつくだと、sound [ring] an alarm bell となります。

ちなみに、fire bell は火災報知器、alarm bell は目覚まし時計です。

・Ring the fire bell.

早鐘を打つ

・It had an alarm bell that would be rung when this area was in danger.

この地区に危険が迫った時、(寺の)早鐘が鳴らされた。

\次のページで「その2「one's heart beat fast」」を解説!/

その2「one's heart beat fast」

「早鐘」のもう1つの意味である、動悸が激しいという意味だと、one's heart beat fast です。直訳すると、心臓の鼓動が早いという意味。

例文を紹介します。

・His heart beat fast from fear.

彼の心臓は恐怖のあまり早鐘を打った。

・Her heart was hammering.

彼女の胸は早鐘を打つようだった。

・My heart was palpitating wildly.

私の胸はドキドキと早鐘を打った。

・beat like an express train

(心臓が)早鐘を打つ

「早鐘」を使いこなそう

この記事では「早鐘」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「早鐘」はその言葉通り、緊急事態に鐘を早く乱打するという意味とは別に、激しい動悸のたとえという意味も。その意味の違いから、そのまま英語表現も違い、別々に覚える必要があります。

わからない日本語があれば、辞書・辞典で調べる、インターネットで検索することも忘れないようにしましょう。

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国語言葉の意味

「早鐘」の意味や使い方は?例文や類語を元新聞記者がわかりやすく解説!

この記事では「早鐘」について解説する。

端的に言えば、早鐘の意味は「緊急事態を知らせるために激しく乱打する鐘」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「早鐘」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「早鐘」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、「早鐘」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「早鐘」の意味は?

「早鐘」には、次のような意味があります。

1.火事や水害などの緊急な事態を知らせるために、激しく乱打する鐘。
2.激しい動悸のたとえ。「心臓が早鐘を打つ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「はや-がね【早鐘】」

「早鐘」には、大きく分けて、3つの意味があります。

1つは、火事や戦(いくさ)、水害といった緊急の出来事を知らせるため、続けざまに激しく乱打する鐘やその音のこと。擦半鐘(すりばんしょう)とも言います。

もう1つは、歌舞伎の下座(げざ)音楽で、変事が起こった場面において、本釣鐘を撞木(しゅもく)で早めに打ち鳴らすこと。

さらに、激しい動悸のたとえという意味もあります。

「早鐘」の語源は?

次に、「早鐘」の語源を確認しておきましょう。

早鐘は、「鐘」を「早く」打つとの言葉から成り立っていることがポイント。鐘は、何かを知らせる時に打つものであり、それが通常よりも早ければ、緊急事態などが起こっている、それをいち早く知らせるため、早鐘が乱打されるというわけです。

中世の歴史書『太平記』に、「院々に早鐘(はやかね)撞いて、西坂已(すで)に攻破られぬと、本院の谷々に騒ぎ喚(よばは)りければ」との記述があります。

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