この記事では「分解者」について学習していきたいと思う。

地球には多くの生物が多様な環境に生息し、それぞれの地域で生態系が成り立っている。各生態系において、動物や植物といった生物は着目されやすいが、それらと同じくらい重要であるにも関わらず注目されにくいのが「分解者」とよばれる存在です。物質の循環に欠かすことのできない小さな生物たちについて理解を深めよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

分解者とは

生物学の世界で「分解者」といえば、生態系の中で生物の死がいや排出物などを分解し、生命活動のためのエネルギーを得ている生物をさします。

これは生態系という広い視点で生物を考えるときに出てくる言葉です。まずは、生態系というものについておさらいしておきましょう。

1.生態系とは

ある地域において、そこに生息している生物や、その周辺環境をまとめて生態系とよびます。

生態系にはたくさんの種類の生物が存在しているのが普通です。たった一種類の生物だけが独立して生きていくことは、まずないといってよいでしょう。食ったり食われたり、体の一部を利用したり…生物どうしは何らかの影響をお互いに及ぼしながら、その土地に生息しています。

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また、生物の周辺環境も、生物の存在によって少しずつ変化していくものです。生物がすむことで土壌中の成分、水の流れや量、空気中の成分などが変わっていきます。生態系はたくさんの生物とその周辺の環境が複雑に絡み合って構成されているのです。

生物とその周辺の環境(非生物的環境)の間に生じる影響は「作用」や「環境形成作用」という用語で表されるんだったな。

\次のページで「2.生産者と消費者」を解説!/

生態系の生物は、よく「生産者」「消費者」「分解者」という大きな3つのグループに分けて考えられます。今回のテーマである「分解者」もこれらのグループの一つです。

さきに、「生産者」と「消費者」について確認しておきましょう。これらに当てはまる生物は、後ほどご説明する分解者という存在に、大きな影響を及ぼします。

2.生産者と消費者

生産者とは、無機物から有機物を生み出すことのできる生物をまとめて指す言葉です。かんたんにいえば、植物のことを指していると思ってください。

光合成をおこなう植物は、二酸化炭素や水といった無機物から有機物を作り出すことができます。私たちは食事をすることでしかエネルギー、栄養を得ることができないのに対し、植物は自分の体の中で有機物を生み出すことができるのです。

水や空気、十分な日光に加え、光合成では作り出すことのできない栄養分を含んだ土壌があれば、光合成をする植物の多くは生きてくことができます。

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消費者は、生産者である植物を直接、もしくは間接的に食べることでエネルギー源を得ている生物を指します。

たとえば、ある草原にウサギが生息し、草原の草を食べて生きているとしましょう。草は生産者、ウサギは消費者です。

ここに、ウサギを食べるオオカミもいるとします。オオカミは草を食べているわけではありませんが、ウサギを捕食することで生産者を間接的に取り入れていることになるのです。このため、この場合はオオカミも消費者とみなされることになります。

上のような例の場合、ウサギのように主に生産者を直接摂食する動物(草食動物)を一次消費者、オオカミのように、一次消費者を捕食する動物(肉食動物)を二次消費者と呼ぶこともあります。

さらに、二次消費者を食べる動物は三次消費者、三次消費者を食べる動物は四次消費者…という風に、より上(高次)の食物段階にいる動物がいることもあるのです。

3.生態系の中の分解者

以上のような、生産者と消費者が存在する生態系の中で、分解者は生産者や消費者のからだや排出物、残骸を分解する役目をもちます。

生物の体を構成する有機物をばらばらにし、水や気体などの無機物にしてしまう能力がある生物たちです。

\次のページで「分解者の例」を解説!/

そうなんです。実際のところ分解者は、広く見れば消費者の一部としてとらえることもできます。

消費者と分解者を分けて考える際、ポイントとなるのは、「消費者が消化・吸収できないような成分も分解者は利用できる」という点です。たとえば、消費者が植物を食べるといっても、その利用範囲は限られています。木の実ややわらかな葉を食べる動物や昆虫はいても、根や硬い樹の幹まで食べるものはあまりいませんよね。

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動物がほとんど利用できないセルロースも、分解者に含まれる生き物には、簡単に分解してしまうことができるものがいるんですよ。牛は胃の中に分解者を住まわせているわけですね。

さらに、分解者は普通の消費者が食べない排泄物や腐った遺体なども分解することができます。

仮に、分解者とよばれる生物たちが存在しないとどうなるでしょうか?あらゆる場所で生物の死骸や排泄物、倒木、落ち葉などが貯まり続け、我々の住む場所などあっという間になくなってしまうかもしれません。

分解者の例

分解者は基本的に地表面や土壌中に生息しています。死んだ生物やその排泄物は、重力に逆らわず地面に落ちていきますから、都合がいいというわけですね。

では、どんな生物が分解者としてはたらいているのでしょうか?

分解者の例としてまずあげてほしいのが、細菌類です。細菌は原核生物というグループに含まれます。私たち人間や、後述する菌類のような真核生物とは大きく異なる生物です。

一口に”細菌”といってもその種類は多種多様。土壌中には数えきれないほどの細菌が存在し、それぞれが分解者としてはたらいています。

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もう1つ、分解者の例として忘れてはいけないのが菌類です。いわゆるキノコやカビは、菌類に当てはまります。

森林を探索すると、朽ちた樹木や枯葉、土壌などにキノコが生えているのを見かけることがありますよね。キノコは菌糸とよばれる細い糸状のものが集まってできた構造体です。キノコの根元には菌糸が続いており、取りついている樹木や枯葉を分解し続けています。

\次のページで「分解者によって進められる”物質の循環”」を解説!/

image by Study-Z編集部

細菌や菌類のほかにも、ミミズや、枯葉を食べる小さな昆虫といった生物も分解者に含めることがあります。そういった生物も、確かに有機物の分解に一役買っている存在です。

ですが、学校の教科書などを見ると、分解者の例として記載されているのは「細菌類、菌類」だけのことが多いように感じます。ミミズなどを分解者に含めるか否かは意見の分かれるところなのかもしれません。

テストなどで分解者の例を挙げるよう求められたら、細菌類や菌類をこたえておくのが妥当でしょう。

分解者によって進められる”物質の循環”

細菌類や菌類のような分解者は、自身の栄養にするために有機物を分解します。結果として無機物が生じることになりますが、その一部は植物(生産者)にとっての栄養源となり、再びそのからだに取り入れられることになるのです。分解者がいることで、物質が巡っていく…物質循環が進むことになるんですね。

分解者に含まれるのは、肉眼に見えなかったり、あまり目立たない微生物がほとんど。ですが、生態系内では非常に重要な役割をもった生物なのです。

イラスト提供元:いらすとや

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理科生態系生物

生態系の中での「分解者」とは?いないと困る超重要な存在!現役講師がわかりやすく解説します

この記事では「分解者」について学習していきたいと思う。

地球には多くの生物が多様な環境に生息し、それぞれの地域で生態系が成り立っている。各生態系において、動物や植物といった生物は着目されやすいが、それらと同じくらい重要であるにも関わらず注目されにくいのが「分解者」とよばれる存在です。物質の循環に欠かすことのできない小さな生物たちについて理解を深めよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

分解者とは

生物学の世界で「分解者」といえば、生態系の中で生物の死がいや排出物などを分解し、生命活動のためのエネルギーを得ている生物をさします。

これは生態系という広い視点で生物を考えるときに出てくる言葉です。まずは、生態系というものについておさらいしておきましょう。

1.生態系とは

ある地域において、そこに生息している生物や、その周辺環境をまとめて生態系とよびます。

生態系にはたくさんの種類の生物が存在しているのが普通です。たった一種類の生物だけが独立して生きていくことは、まずないといってよいでしょう。食ったり食われたり、体の一部を利用したり…生物どうしは何らかの影響をお互いに及ぼしながら、その土地に生息しています。

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また、生物の周辺環境も、生物の存在によって少しずつ変化していくものです。生物がすむことで土壌中の成分、水の流れや量、空気中の成分などが変わっていきます。生態系はたくさんの生物とその周辺の環境が複雑に絡み合って構成されているのです。

生物とその周辺の環境(非生物的環境)の間に生じる影響は「作用」や「環境形成作用」という用語で表されるんだったな。

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