この記事では「口を噤む」について解説する。

端的に言えば口を噤むの意味は「黙る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「口を噤む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻していた。普段の私(ライター)は物静かで口を噤むことの方が多い。しかし、紙の上やパソコンの画面上では雄弁だ。

「口を噤む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を噤む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を噤む」の意味は?

「口を噤む」には、次のような意味があります。

1.(「つぐむ」が五段活用の場合)口を閉じて開かない。話すのをやめる。「言いかけて、あわてて—・む」
2.(「つぐむ」が下二段活用の場合)口をとがらせてものを言う。「—・めぬ者はなかりけり」〈太平記・二五〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口を噤(つぐ)・む」

前掲した辞書には2番の意味もありますが、「下二段活用の場合」とあるように、そちらは古語としての「口を噤む」です。よって、現代では1番の意味だけでも理解していれば良いでしょう。

口を噤む」(くちをつぐむ)とは、「口を閉じたまま開かない、話すのをやめる」という意味の慣用句です。「噤む」(つぐむ)という動詞自体にも、「口を閉じる、黙る」などの意味があります。

「口を噤む」の使い方・例文

「口を噤む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「口を噤む」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.あまりの剣幕に思わず口を噤む。
2.どんなに僕が話し掛けても、最近の彼女は口を噤んだまま視線を外に向けてばかりだ。
3.昨日から容疑者への取り調べが始まったが、世間話には応じるものの、肝心の犯行については口を噤んで一切話そうとしない。

例文2や3は、自分の意志で「口を噤ん」で話そうとしない様子を表しています。話し掛けられても返さない、都合の悪いことを自分からは話さないことなどは、その典型と言えるでしょう。

ただし、予期しないことに遭遇するときなど、さまざまな原因で無意識のうちに「口を噤む」こともあります。例文1にある「思わず口を噤む」は、まさにその様子を表したものです。

また、書き言葉として「口を噤む」を使うときには注意しなければなりません。なぜなら、「噤む」を「つぐむ」と読める人は少ないからです。漢字検定でも「噤」は1級レベルとされるため、読めない人が大多数となります。よって、「口を噤む」を文字にするときは振り仮名を振るか、「口をつぐむ」と平仮名で書くのが無難でしょう

「口を噤む」の類義語は?違いは?

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ところで、「口を噤む」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「貝になる」

「私は貝になりたい」という、映画やドラマになった話があります。主人公が戦犯として裁判で死刑宣告され、「生まれ変わるなら貝になりたい」などという言葉を残したものです。

それが語源というわけではありませんが、実際に「貝になる」という言葉は広く使われています。辞書にも掲載され、「何も言わない、黙る、口を噤む」などの意味があるとの記述がありますので、れっきとした慣用句と言えるでしょう。ただし、映画の主人公の言葉から垣間見えるように、「貝になる」には「殻に閉じこもる」や「静かに暮らす」という意味合いもあります

その他にも、「口を閉ざす」「口ごもる」だけでなく、「黙して語らない」や「だんまりを決め込む」なども「口を噤む」の類義語になりうるでしょう。「無言を貫く」「墓場まで持っていく」「お口チャックする」などの表現もよく使われるものです。

「口を噤む」の対義語は?

さらに「口を噤む」の対義語も見ていきましょう。

\次のページで「「立て板に水」」を解説!/

「立て板に水」

「口を噤む」とは真逆と言える慣用句に、「立て板に水」(たていたにみず)があります。

念のため、辞書で意味を確認しておきましょう。「よどみなく話すことのたとえ」などとあります。口を開くだけでなく矢継ぎ早に次々と話すさまは、「口を噤む」とは対照的と言えるでしょう。

ちなみにですが、「横板に雨垂れ」(よこいたにあまだれ)という慣用句も存在します。「立て板に水」の対義語として紹介されることもあるものです。しかし、意味は「詰まりながら話すことのたとえ」であるため、「口を噤む」とは別のものと言わざるをえません。

「口を噤む」の英訳は?

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では、「口を噤む」を英訳するとどうなるでしょうか。

「stop talking」「shut up」

「口を噤む」のままでは、英訳しづらいと感じるかもしれません。ですが、「口を噤む」とは、ようするに「話さない」または「黙る」ことです。それならば、たやすく英訳できるでしょう。

「話さない」は「stop talking」や「not speak」(「do not speak」「won't speak」など)となります。「黙る」を英訳するのであれば、「shut up」や「be silent」などさまざまです。

「口を噤む」を使いこなそう

この記事では「口を噤む」の意味・使い方・類語などを説明しました。

コミュニケーションは大事なことですので、話をするのはとても重要です。しかし、気分が落ち込んでとても話す気分ではないときは、「口を噤ん」でしまうこともあるでしょう。逆に相手のおしゃべりが過ぎるときには、「口を噤ん」でほしいと思うはずです。いずれにせよ、「口を噤む」状況はあまりないほうが良いのかもしれません。ですが、「口を噤む」という言葉の読み方や意味は、覚えておいて損はないでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「口を噤む」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「口を噤む」について解説する。

端的に言えば口を噤むの意味は「黙る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「口を噤む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻していた。普段の私(ライター)は物静かで口を噤むことの方が多い。しかし、紙の上やパソコンの画面上では雄弁だ。

「口を噤む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を噤む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を噤む」の意味は?

「口を噤む」には、次のような意味があります。

1.(「つぐむ」が五段活用の場合)口を閉じて開かない。話すのをやめる。「言いかけて、あわてて—・む」
2.(「つぐむ」が下二段活用の場合)口をとがらせてものを言う。「—・めぬ者はなかりけり」〈太平記・二五〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口を噤(つぐ)・む」

前掲した辞書には2番の意味もありますが、「下二段活用の場合」とあるように、そちらは古語としての「口を噤む」です。よって、現代では1番の意味だけでも理解していれば良いでしょう。

口を噤む」(くちをつぐむ)とは、「口を閉じたまま開かない、話すのをやめる」という意味の慣用句です。「噤む」(つぐむ)という動詞自体にも、「口を閉じる、黙る」などの意味があります。

「口を噤む」の使い方・例文

「口を噤む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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