この記事では「焦燥に駆られる」について解説する。

端的に言えば焦燥に駆られるの意味は「焦る気持ち」ですが、実はもっと幅広い意味やニュアンスを持つ言葉です。正しく理解しておくと、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「焦燥に駆られる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「焦燥に駆られる」の意味や語源・使い方まとめ

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焦燥(しょうそう)に駆られる」という言葉は、話し言葉より書き言葉で目にする機会が多いかもしれませんね。でも私たちは日常生活でも頻繁に「焦燥に駆られる」感覚を抱いています。話し言葉では「焦ったぁ!」と言われる感情ですね。しかし「焦燥に駆られる」は単に焦るだけではなく、もっと多様な気持ちを表現できる便利な言葉だということは知っていましたか。

早速「焦燥に駆られる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「焦燥に駆られる」の意味は?

「焦燥に駆られる」の核となる言葉「焦燥」には、次のような意味があります。

「いらいらすること。あせること。」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焦燥」

「焦燥」は「焦躁」と書くこともありますが、いずれも正しい表記です。意味は「いらいらすること、あせること」ですね。この「いらいら」がポイントとなります。単に焦って慌てているだけではなく、思い通りに進まずいらいらしている、苛立っているさまをということです。気持ちが「焦燥」し、現状をなんとかしなきゃ!と心も行動も強い衝動に急き立てられている状態が「焦燥に駆られる」といえるのですね。

ちなみに「焦燥」は「焦燥する」と述語で使うこともできますし、「焦燥感」という言い回しで用いられることもありますから合わせて押さえておきましょう。

「焦燥に駆られる」の語源は?

次に「焦燥に駆られる」の語源を確認しておきましょう。「焦燥」の漢字1文字ずつの意味を見てみるとよく理解できますよ。

まず「」は「焦る(あせる)」という訓読みからもわかるように、気持ちが苛立ち急かされるという意味ですね。「焦」は「焦げる(こげる)」という訓読みもある漢字で、火であぶられるようにいらいらするというニュアンスを持っています。

」は「乾燥」の「燥」で、乾くという意味です。「焦燥」という熟語で用いられる「燥」は、「さわがしく落ち着かない」という意味を持つ「躁」の代用として使われています。「躁」が常用漢字ではないので、常用漢字である「燥」が使われているというわけです。

「いらだち、焦る」と「落ち着かない」という意味の漢字が組み合わさってできているのが「焦燥」であり、いらいら、そわそわという様子が目に浮かべばOKですよ。

\次のページで「「焦燥に駆られる」の使い方・例文」を解説!/

「焦燥に駆られる」の使い方・例文

「焦燥に駆られる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.親友と同じ人を好きになってしまった。そして明日、親友が彼女に告白すると聞き、私は焦燥に駆られずにはいられなかった
2.会社の業績が低迷し、やりくりのため融資を申し込んだが、銀行に断られた。明日は給与支払い日、私は焦燥に駆られている
3.上司は小さなミスを見つけてはチクチク嫌味を言う人だ。焦燥に駆られた私は、さらにミスをしてしまう悪循環にある。

「焦燥に駆られる」は、いらいら・そわそわする、苛立ち焦る、という意味でしたね。「駆られる」という言葉からもわかるように、焦りに追い立てられたり、追い詰められたりするといったシチュエーションで使える表現です。例文1から3のいずれも、強い焦りや苛立ちが垣間見えることに注目してください。

例文1の強い焦りはどんな点にあるでしょう。そうですね、親友が自分も好きな人に明日告白する、というのを聞いたからですね。恋愛ではこうした苛立ち焦る場面によく出くわすのではないでしょうか。例文2は融資が受けられず、事業が立ち行かなくなるという状況、例文3はパワハラ気質のある上司の指導に対する焦り苛立ちが、さらに仕事でミスを誘発してしまうということです。いずれもいかんともしがたい強い焦りがある状況で使われていることが分かります。

「焦燥に駆られる」の類義語は?違いは?

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「焦燥に駆られる」と同じ意味を持つ言葉を見てみましょう。そわそわしたり焦ったり、いらいらしたりという意味を持つ言葉は沢山ありますが、「焦燥に駆られる」に最も近い2つをご紹介します。

その1「苛立ち」

1つ目は「焦燥に駆られる」の意味解説でも登場した「苛立ち」です。「思うようにならず気持ちが高ぶること、あせっていらいらすること」という意味を持っています。まさに「焦燥に駆られる」状態ですよね。日常会話で使う場合は「いらいらする」「むしゃくしゃする」と言っても良いでしょう。

\次のページで「その2「焦慮」」を解説!/

その2「焦慮」

あまり見かけない表現ですが「焦慮」という言い方もあります。読み方は「しょうりょ」で、「あせっていらだつこと。いらいらと気をもむこと」という意味です。「焦燥」と同様、「焦慮に駆られる」「焦慮する」という言いまわしで使える点も、「焦燥に駆られる」の類語と言えます。

「焦燥に駆られる」の対義語は?

「焦燥に駆られる」の対義語はどのような表現になるでしょうか?「いらいらする、焦る」と反対の意味を持つ言葉、思いつきますか?

「安堵」

安堵(あんど)」は「気がかりなことが除かれ、安心する」という意味です。物事が順調に進み、ほっとするというニュアンスですね。「安堵感」ということもできます。

「焦燥に駆られる」の英訳は?

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「焦燥に駆られる」という気持ちは万国共通のもの。では英語ではどのように表現するのでしょうか?

「feel frantic」

「焦燥に駆られる」は「feel frantic」と表現できます。「feel」は「感じる」、「frantic」は「大急ぎの、あわただしい、恐怖・興奮・喜びなどで気が狂ったような」という意味です。さまざまな状況に急き立てられ、慌てるさまを表す表現として押さえておきましょう。

People felt frantic to escape.
「人々は逃げ出そうと焦燥に駆られていた」

\次のページで「「焦燥に駆られる」を使いこなそう」を解説!/

「焦燥に駆られる」を使いこなそう

この記事では「焦燥に駆られる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

物事が思うようにいかずに焦る、いらいらすることは誰しもあるものです。気持ちの整理ができず不安な心理状態、そんな気持ちがまさに「焦燥に駆られる」でしたね。これまで「いらいらする!」「もうっ、どうしよう!」と感情を直球で乗せた表現をしていた人は、ぜひこれから「焦燥に駆られる」も表現のバリエーションとして加えてみてください。表現を変えようと考えをめぐらす一瞬が、自分をおちつけてくれるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

「焦燥に駆られる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「焦燥に駆られる」について解説する。

端的に言えば焦燥に駆られるの意味は「焦る気持ち」ですが、実はもっと幅広い意味やニュアンスを持つ言葉です。正しく理解しておくと、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「焦燥に駆られる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「焦燥に駆られる」の意味や語源・使い方まとめ

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焦燥(しょうそう)に駆られる」という言葉は、話し言葉より書き言葉で目にする機会が多いかもしれませんね。でも私たちは日常生活でも頻繁に「焦燥に駆られる」感覚を抱いています。話し言葉では「焦ったぁ!」と言われる感情ですね。しかし「焦燥に駆られる」は単に焦るだけではなく、もっと多様な気持ちを表現できる便利な言葉だということは知っていましたか。

早速「焦燥に駆られる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「焦燥に駆られる」の意味は?

「焦燥に駆られる」の核となる言葉「焦燥」には、次のような意味があります。

「いらいらすること。あせること。」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「焦燥」

「焦燥」は「焦躁」と書くこともありますが、いずれも正しい表記です。意味は「いらいらすること、あせること」ですね。この「いらいら」がポイントとなります。単に焦って慌てているだけではなく、思い通りに進まずいらいらしている、苛立っているさまをということです。気持ちが「焦燥」し、現状をなんとかしなきゃ!と心も行動も強い衝動に急き立てられている状態が「焦燥に駆られる」といえるのですね。

ちなみに「焦燥」は「焦燥する」と述語で使うこともできますし、「焦燥感」という言い回しで用いられることもありますから合わせて押さえておきましょう。

「焦燥に駆られる」の語源は?

次に「焦燥に駆られる」の語源を確認しておきましょう。「焦燥」の漢字1文字ずつの意味を見てみるとよく理解できますよ。

まず「」は「焦る(あせる)」という訓読みからもわかるように、気持ちが苛立ち急かされるという意味ですね。「焦」は「焦げる(こげる)」という訓読みもある漢字で、火であぶられるようにいらいらするというニュアンスを持っています。

」は「乾燥」の「燥」で、乾くという意味です。「焦燥」という熟語で用いられる「燥」は、「さわがしく落ち着かない」という意味を持つ「躁」の代用として使われています。「躁」が常用漢字ではないので、常用漢字である「燥」が使われているというわけです。

「いらだち、焦る」と「落ち着かない」という意味の漢字が組み合わさってできているのが「焦燥」であり、いらいら、そわそわという様子が目に浮かべばOKですよ。

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