最近は生徒たちが積極的に質問してくるようになってなぁ、俺が話す時に使った言葉についても色々聞いてくる。これはとても良いことです。分からないことは人に聞く。大切なことです。

今日は「受験はライバルとの"鍔迫り合い"だ」という話をしたら、「鍔迫り合い」について質問を受けた。この鍔迫り合いっていうのは「緊迫した状況で激しく勝負すること」という意味で…

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ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「鍔迫り合い」の意味や語源は?

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「鍔迫り合い」という言葉、漢字だけを見てもよく分からないという人が多いかもしれません。「つばぜりあい」と書けば見聞きしたことがある人が出てくるのではないでしょうか。まずは、この「鍔迫り合い」について、意味と語源を確認していきましょう。

「鍔迫り合い」の意味は「緊迫した状況で激しく勝負すること」

最初に、「鍔迫り合い(つばぜりあい)」の辞書での意味を確認していきましょう。「鍔迫り合い」は、国語辞典には次のように意味が掲載されています。

1.打ち合わせた刀を互いの鍔もとで受け止めたまま押し合うこと。
2.緊迫した状況で激しく勝負を争うこと。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「つば-ぜりあい【鍔迫り合い】―ゼリアヒ」

「鍔迫り合い」は、辞書には2つの意味が掲載されていることが多いです。そのうち1番目は語源となっている大本の意味であるため、語源のコーナーで改めて解説します。

現在では、2番目の「緊迫した状況で激しく勝負すること」という意味で使われるのが通常です。スポーツの試合や、実際の戦い、勢力争いなどで使用される表現ですね。また、戦っている者同士の実力がほぼ同じであるというニュアンスが含まれていることが特徴です。

「鍔迫り合い」の語源は日本刀を使った戦い!

この「鍔迫り合い」の語源は日本刀を使った戦いです。日本刀の「鍔(つば)」は、刀の刃と柄(つか・握る部分)の間にある金属製の板のこと。日本刀で戦う2人が、相手に斬られないように互いに相手の刀の刃を鍔で受け止めて押し合う様子から生まれた言葉です。

当初は「互いに相手の刀の刃を鍔で受け止めて押し合う様子」という語源そのままの意味のみを表していましたが、徐々に意味が広がっていきました。

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「鍔迫り合い」の使い方を例文とともに確認!

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続いて、「鍔迫り合い」の使い方を確認していきましょう。「鍔迫り合い」が文中に含まれている例文を3つ用意しました。どのような場面や文脈で使用されているのか、見ていきましょう。

1.サッカー日本代表対韓国代表の試合は、両者一歩も譲らずに0対0の鍔迫り合いの状況が続いた。
2.激しい鍔迫り合いの末、延長戦でうちのチームが勝利した。
3.A国の大統領選挙は、スミス氏とケイト氏が鍔迫り合いを演じている。

例文1では、日本対韓国のサッカーの試合について、両者一歩も譲らない試合展開を「鍔迫り合い」を用いて表現しています。お互いの実力が近く、試合で接戦となっている場合は、この「鍔迫り合い」を用いて状況を表現できますね。

例文2では、「両者譲らぬ激しい攻防の末、延長戦でうちのチームが勝利した」という意味で「鍔迫り合い」が使用されています。現在では例文1、2のようにスポーツで使用されることが多いです。

例文3では、「A国の大統領選挙で、スミス氏とケイト氏が大接戦である」という文脈で「鍔迫り合い」が使用されています。スポーツ以外にも、実際の戦いや政治的な争い、勢力争いにも「鍔迫り合い」は使用可能です。

「鍔迫り合い」の類義語は?

続いて、「鍔迫り合い」の類義語を確認していきましょう。「鍔迫り合い」の類義語は「鎬を削る」「白熱」「一歩も引かぬ」です。意味やニュアンスを確認し、「鍔迫り合い」と比較してみてください。

「鎬を削る」:激しく争う

「鎬を削る(しのぎをけずる)」は「激しく争う」という意味の慣用句です。「実力の似た者同士が争っている」というニュアンスが含まれる点も、「鍔迫り合い」と共通していますね。

この「鎬を削る」も、日本刀が語源となっている言葉です。「鎬(しのぎ)」は日本刀の刃と背の境界に当たる少し高くなった部分を指します。お互いの日本刀の「鎬」の部分が削れるほどに激しく戦うことから生まれた言葉です。

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「白熱」:勝負・議論などが最高潮に達する

「白熱」は「勝負・議論・熱意などが最高潮に達する」という意味を持った表現です。スポーツの試合や実際の戦い、勢力争いなどで対立している両者が激しくぶつかっている場合、接戦になっている場合に使用される表現ですね。

その他に、「物体が高温において白色に近い光を発すること」という、漢字そのままの意味もあります。1000度以上に金属を熱した場合などに「白熱」は見ることができるそうです。

「一歩も引かぬ」:少しも相手に譲らない

「一歩も引かぬ」は「少しも相手に譲らない」という意味の表現です。戦いや勝負事で「一歩も引かぬ」が用いられる場合は、相手に対して少しも妥協をせずに、激しい戦いが繰り広げられていることを表現します。「一歩も引かない」「一歩も譲らぬ」「一歩も譲らない」も同じ意味を表す表現です。

日本刀が語源となったその他の表現

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今回主にご紹介した「鍔迫り合い」や、類義語でご紹介した「鎬を削る」は、ともに日本刀が語源となった表現でした。実は、他にも日本刀が語源となっている表現が日本語にはあります。その一部をここでご紹介しましょう。

「切羽詰まる」:物事が差し迫って追いつめられる

「切羽詰まる(せっぱつまる)」は「物事が差し迫って追いつめられる」という意味の表現です。対処すべき事態や期限が間近に迫り、追い詰められた状況を表します

「切羽(せっぱ)」というのは日本刀の鍔の両面についている薄い金具のことです。この部分が詰まってしまうと、刀身を鞘(さや)から抜くことができなくなり、いざという事態では追い詰められてしまいます。この、「切羽の部分が詰まり、刀身が抜けずに追い詰められた状態」から生まれた言葉が「切羽詰まる」です。

「単刀直入」:前置きなしにいきなり本題に入ること

「単刀直入(たんとうちょくにゅう)」は「前置きなしにいきなり本題に入ること」という意味の表現です。「単刀直入に伺いますが…」といって、いきなり本題の質問を投げかけるシーンを、刑事ドラマなどで見たことがある人もいるのではないでしょうか。

元々は、「たった一振りの日本刀を持って、単身で遠回りせずに敵陣に切り込むこと」という意味でした。それが転じて、現在の意味で使用されるようになったのです。

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ライバルとの「鍔迫り合い」を制するためには…!

今回は「鍔迫り合い」について解説しました。「鍔迫り合い」は「緊迫した状況で激しく勝負すること」という意味の表現で、戦っている者同士の実力がほぼ同じであるというニュアンスが含まれていることが特徴です。

ライバルとの「鍔迫り合い」を制するためにはどうすれば良いか…。それは簡単です。ライバルより多くの努力をすることですよ!最後は努力の差が結果に表れますから。

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国語言葉の意味

簡単には勝ちを譲れない!「鍔迫り合い」の意味や類義語などを院卒日本語教師が分かりやすく解説

最近は生徒たちが積極的に質問してくるようになってなぁ、俺が話す時に使った言葉についても色々聞いてくる。これはとても良いことです。分からないことは人に聞く。大切なことです。

今日は「受験はライバルとの”鍔迫り合い”だ」という話をしたら、「鍔迫り合い」について質問を受けた。この鍔迫り合いっていうのは「緊迫した状況で激しく勝負すること」という意味で…

ここから先はプロにお任せしよう。院卒日本語教師の”むかいひろき”、「鍔迫り合い」の解説を頼んです!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「鍔迫り合い」の意味や語源は?

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「鍔迫り合い」という言葉、漢字だけを見てもよく分からないという人が多いかもしれません。「つばぜりあい」と書けば見聞きしたことがある人が出てくるのではないでしょうか。まずは、この「鍔迫り合い」について、意味と語源を確認していきましょう。

「鍔迫り合い」の意味は「緊迫した状況で激しく勝負すること」

最初に、「鍔迫り合い(つばぜりあい)」の辞書での意味を確認していきましょう。「鍔迫り合い」は、国語辞典には次のように意味が掲載されています。

1.打ち合わせた刀を互いの鍔もとで受け止めたまま押し合うこと。
2.緊迫した状況で激しく勝負を争うこと。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「つば-ぜりあい【鍔迫り合い】―ゼリアヒ」

「鍔迫り合い」は、辞書には2つの意味が掲載されていることが多いです。そのうち1番目は語源となっている大本の意味であるため、語源のコーナーで改めて解説します。

現在では、2番目の「緊迫した状況で激しく勝負すること」という意味で使われるのが通常です。スポーツの試合や、実際の戦い、勢力争いなどで使用される表現ですね。また、戦っている者同士の実力がほぼ同じであるというニュアンスが含まれていることが特徴です。

「鍔迫り合い」の語源は日本刀を使った戦い!

この「鍔迫り合い」の語源は日本刀を使った戦いです。日本刀の「鍔(つば)」は、刀の刃と柄(つか・握る部分)の間にある金属製の板のこと。日本刀で戦う2人が、相手に斬られないように互いに相手の刀の刃を鍔で受け止めて押し合う様子から生まれた言葉です。

当初は「互いに相手の刀の刃を鍔で受け止めて押し合う様子」という語源そのままの意味のみを表していましたが、徐々に意味が広がっていきました。

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