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「ニーチェ」って誰?人間と世界の関係を探究した哲学者の人生と思想について元大学教員が5分でわかりやすく解説

今では当たり前のように「自分らしく生きる」「自分で道を切り開く」という考え方が浸透しています。しかしニーチェの時代、人間の運命を決めるのは自分ではなく神。個人よりも自分のまわりにある環境や価値観のほうが優位とされていました。ニーチェにとって、自分の運命を周囲の環境や目に見えない何かにゆだねるのではなく、自分で考え選択することが大切。しかしながら、人間が自分の力で存在し続けることは困難であり、いつの間にか群衆のなかに埋もれてしまう。それが人間の不幸であると考えました。

ニーチェ哲学の代表的な概念

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ニーチェの哲学を有名にした概念のひとつが「超人」。何だかすごい人のことを言っているようですが、そこに収まらないのが「超人」という概念です。そこでニーチェがどのように「超人」という概念を論じたのか見ていきましょう。

「超人」には自分で自分を乗り越えて到達する

これまでの哲学では人間は動物とは異なる理性的な生物であるというのが前提にありました。しかしながらニーチェにとって人間は、信仰が確立していないと、恨みなどの負の感情に左右される非理性的な生物にすぎません。負の感情をルサンチマンと表現。これが人間の苦悩の元になってると考えました。

「ツァラトゥストラはかく語りき」のなかでニーチェは、人間は負の感情を乗り越えた存在になるべきだと主張。登場人物であるツァラトゥストラが、日々の楽しみに浮かれ騒いでいる人々に対して「超人」について説きました。それは、神に依存するのではなく、自分自身によって乗り越えるものだとも言いました。

「ツァラトゥストラはかく語りき」は、ニーチェの分身であるツァラトゥストラが、「超人」をはじめとするニーチェの思想を物語形式で話していくもの。いわばニーチェ入門書と言えよう内容です。ニーチェは「神が死んだ」と述べたと聞くことがあると思いますが、これもツァラトゥストラのセリフのひとつ。「神が死んだ」と叫んだ理由は人々が、神ではなく自分自身を向き合うきっかけを作るためでした。ある意味、現実を直視しようとした人なのかもしれません。

ナチズムに悪用された「超人」の概念

「超人」という考え方は、20世紀に入りヒトラー率いるナチスドイツの政策の根拠として利用されます。そのきっかけは、ニーチェの妹であるエリザベートが研究メモを反ユダヤ主義に渡していたからという説がひとつ。また、のちにヒトラーが熱狂する音楽家ワグナーが、「超人」をドイツの未来を切り開く概念だと言ったからという見方もあります。

どちらがきっかけだったとしても、ニーチェは自分の思想がナチスドイツの政策に利用されることを望んでいなかったでしょう。ドイツでは、ヒトラーが現れるまえから反ユダヤ主義者が活動を展開していました。ニーチェはそれを嫌悪していたと言われています。「超人」がユダヤ人を虐殺する政策の裏付けとされることがニーチェの本意ではなかったことは確かです。

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