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「ニーチェ」って誰?人間と世界の関係を探究した哲学者の人生と思想について元大学教員が5分で解説

大学で神学を捨てることを決意したニーチェ

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By Anonymous – private collection of Wolfgang Sauber (Xenophon), Public Domain, Link

ニーチェの哲学の思想は、これまでのキリスト教中心の西欧世界を揺るがせ、神学者を中心に多くの論争を巻き起こしたことでも知られています。ニーチェがキリスト教と一定の距離を置いたのが大学時代でした。

牧師の跡を継がないことは異例

プフォルタ学院を優秀な成績で卒業したニーチェはボン大学に進学。神学部と哲学部に籍を置きました。ニーチェの家は牧師が多く、母親も息子が牧師になることを願ってしました。そのため神学部に籍を置いたのです。

ところがニーチェは、神学に対する興味は失せて代わりに古典文献に取り組むようになりました。そのため、1年もしないうちに進学の勉強をストップ。母親に牧師の職を継がないことを伝えます。牧師の家でその職を継がないことは田舎では異例のことでした。

バーゼル大学の教授び推薦されたニーチェ

大学におけるニーチェの成績はとても優秀。それを高く評価されてスイスのバーゼル大学に古典文献学の教授として推薦されました。博士号を取得しておらず、教育資格も取っていないことを考えると異例の大抜擢です。

ニーチェが望んでいたのは哲学を教えること。しかしその願いは却下され、古代ギリシアの古典を教えることになりました。これがニーチェの学問の転換期になります。古代哲学や芸術の専門家と親交を深め、知識を蓄積したニーチェは「悲劇の誕生」を出版するに至りました。

「悲劇の誕生」は現在の演劇論でもよく取り上げられる古典の名著。造形芸術と音楽芸術を、それぞれアポロンとをディオニュソスというギリシアの神に例えて芸術の本質を明らかにしようとしました。ニーチェが芸術の最高形態と見なしたのが悲劇。アポロンの理性とディオニュソスの情動性を併せ持った最高傑作であることを見事に論じました。

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ニーチェが「悲劇の誕生」のなかで高く評価したのがワーグナーの歌劇。実は、ナチスの創始者であるヒトラーが心酔していたのもワーグナーだった。そのためニーチェの思想は、彼の死後になって、ナチズムを正当化することに利用されてしまう。これも彼にとっては悲劇だった。

ニーチェはどんな哲学を確立させた?

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ニーチェは難しい哲学を確立させたと思われがちです。しかし実際は、難解だった哲学を人間にとって身近なものにしたと言ったほうがいいでしょう。これまでの哲学思想を踏まえながら、社会のなかで生きる、自分の人生を生きることの意味を論じました。

哲学史におけるニーチェの位置づけ

ニーチェは、古典文献学を専門としていたことから、これまでの哲学の概要に精通していました。ソクラテス以前のギリシア哲学だけではなく、「生の哲学」の創始者であるアルトゥル・ショーペンハウアーからも多くのことを吸収しました。ニーチェはとにかく読書オタク。幅広く膨大な知識を吸収し、伝統的な哲学や西洋文明を一刀両断します。

ニーチェの哲学史における位置づけは実存主義の先駆者。実存主義とは19世紀のヨーロッパで流行した思想で、今ここにある人間をひとつの実存ととらえ、自ら人生を切り開くことの意味を追求した思想。神の存在を絶対視するキリスト教世界を覆すような内容でした。

 

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hikosuke