
その1「似合わしい」
「似合わしい」は「丁寧な挨拶がいかにも彼ににあわしかった」「仲人がにあわしい娘さんを紹介してくれますよ」などのようによく似合う様子を表します。ただし、対象のもっている条件に合致するというニュアンスがあるので、外見がよく映って美しいという意味では用いないことが多いでしょう。「似合わしい」は「似つかわしい」に似ていますが、「似つかわしい」が対象の外見によく合致するというニュアンスを持つのに対して、「似合わしい」は対象の現在の条件に合致するというニュアンスをもつ点が異なります。また「似合わしい」は「相応しい」にも似ていますが、「相応しい」は対象の理想像に合致するニュアンスを持つ点が異なりますよ。なお「お安くない」との違いは、「お安くない」には揶揄するニュアンスがあるという点です。
その2「相応しい」
「相応しい」はある状況における理想に合致している様子を表す表現。「君にはもう少し年齢にふさわしい思慮が必要だ」はその年齢ならば当然持っている程度の思慮、「彼こそ賞をもらうにふさわしい」は賞をもらうべき業績、「奴は紳士の名にふさわしくない」は紳士がその理想です。「相応しい」は「似つかわしい」や「似合わしい」に似ていますが、「似つかわしい」や「似合わしい」は理想像までは暗示せず、対象の外見や雰囲気・条件などに合致する暗示のある点が異なります。そのため「やわらかな物言いがいかにも彼に相応しい」は誤用となり、正しくは「やわらかな物言いがいかにも彼に似つかわしい」となりますよ。ちなみに「お安くない」との違いは、「お安くない」は男女の親密な間柄をひやかして言う言葉だという点です。
その3「親しい」
「親しい」は人間関係が親密でよく慣れている様子を表します。「悩みをしたしい友人に相談する」などが最も一般的な用法で、心が通じている、仲が良いという意味を表しますよ。「この言葉は耳目にしたしい」は「耳目に親しい」または「耳に親しい」という慣用句の形をとり、「しばしば見聞してよく知っている」という意味になります。親密な人間関係といっても、親子・兄弟・夫婦などの関係において心が通じているという場合に用いられる表現。
この「親しい」は「近しい」に似ていますが、「近しい」では関係が近い、交流が盛んだというニュアンスがあるのに対して「親しい」は心が通じている、仲が良いというニュアンスになり、親密さは「親しい」の方が程度が高くなることが多いでしょう。また「睦まじい」にも似ていますが、「睦まじい」はより深い愛情の存在を暗示し、異性や子供同士の親密な愛情関係について用いることの多い点が、客観的な親密さを意味する「親しい」と異なります。
「お安くない」の対義語は?
「お安くない」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「冷たい」
「冷たい」は「彼女は姑のつめたい仕打ちに堪えられなかった」や「クラスが少年を見るまなざしはつめたかった」など愛情や思いやりがない様子を表しますよ。冷淡であるという意味ですが、とても客観的な表現で被害者意識は暗示されていない点が、「つらい」「つれない」などと異なります。また「冷たい」は「ひややか」にも似ていますが、「ひややか」にある冷静さの暗示は「冷たい」にはありません。
\次のページで「その2「冷ややか」」を解説!/