奈良時代平安時代日本史

平安時代の音楽の教科書?「うつほ物語」について元大学教員が5分で解説

5.「うつほ物語」で言及された求婚とは

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古代社会は婿入り婚の通い婚が当たり前。つまり男性が女性の家に婿入りするかたちでした。そして夫婦が同居することはなし。夫が妻の家に通っていました。女にとっては自分の実家の興隆に役立つ男性を婿に取りたいもの。男性側もまた、衣食住の生活を一切見てくれる妻の家が資産家であり、自分の出世に役立つ家柄であることを望みました。

多くの男性たちに求婚される女性とは

平安時代は身分がすべて。男性も女性も身分の高い相手を望みました。自分の出世や暮らしにかかわるため、夫あるいは妻の身分が高ければ高いほど良しとされたのです。それに加えて美人であれば帝までを夢中にさせることができました。

うつほ物語の後半のヒロインである「あて宮」は源家の姫君。源姓はもともと皇族であったことを意味したため、皇族と同じように処遇され、敬われました。そこの婿になることは男性にとって「玉の輿」。婿入り婚の時代では、男性の望む最高の結婚のかたちだったのです。さらに女性が美人という噂があれば、男たちは我こそはと殺到しました。

玉の輿に乗るための偏差値は高い

能力のない男性を婿に取ったら実家が落ちぶれてしまいます。そのため女性は実家の浮沈をかけて婿を選びました。男性の才能、美貌、家柄などが、あたかも偏差値のように等級づけられていました。この時代、貴族社会で行われていたのは、すべて家同士の浮沈をかけた戦い。つまり政略結婚に等しいものだったのです。

平安時代は戦争のなかった時代。そのため武力や腕力は無関係でした。漢籍(漢詩や漢字だけで書かれた中国の歴史)や和歌や漢詩が素晴らしいことに加え、楽器の演奏、なかでも琴の演奏に優れていることが、高偏差値につながりました。美貌と家柄は努力してもどうにもなりません。しかし、漢籍、和歌、琴の演奏ならどうにかなると男性たちは頑張りました。

うつほ物語の登場人物のひとりである犬宮の生き方はとても行動的で現代的。仲忠の母に秘伝の琴を習って見事に習得。ふたりの上皇を招待して演奏を聴かせるなど桁違いの能力を発揮しました。彼女の行動のモチベーションは一家の再興。彼女の強さと賢さは読者の心を惹きつけました。古代社会では、香の調合や衣装の染色など技術は、女性から女性に引き継がれていました。秘儀の継承は神聖な行為。古代の母系社会では母なる女性は神聖化されていたのでしょう。

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犬宮の行動力は、宮中のキャリアウーマンとして活躍した紫式部、清少納言,和泉式部、赤染衛門などの歌人たちの活躍と共通している。平安時代、男性も女性も出世するには教養と技術が絶対。今よりも勉強がたいへんな時代だったのかもしれない。

「うつほ物語」は出世のための音楽の教科書

うつほ物語は、楽器を演奏する精神や技術、さらには出世の方法について書いた古典。平安時代のお話としてはもちろん、今は消えてしまった楽器の技術のことが分かる歴史本でもあります。膨大な知識を要する内容のため、複数の人たちにより分担してかかれたのかもしれません。歴史はもちろん音楽に興味がある人にとっても面白い古典と言えるでしょう。

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hikosuke