奈良時代平安時代日本史

平安時代の音楽の教科書?「うつほ物語」について元大学教員が5分で解説

よぉ、桜木建二だ。「うつほ物語」は作者不詳とされているるが、複数の人の手によって記されたという説が濃厚。中心的な書き手は源順(みなもとのしたごう)と言われている。全20巻により構成され、成立したのは平安中期とされているが今でも謎が多い作品だ。

宮廷生活が写実的に生き生きと描写されて、当時の文化を知ることもできる面白い作品だ。そんな「うつほ物語」について日本史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/ひこすけ

アメリカの歴史や文化を専門とする元大学教員。平安時代にも興味があり、気になるものがあったら色々調べている。「うつほ物語」は、ストーリーとしてはもちろん音楽の教科書としても面白い作品だと思い、紹介することにした。

1.うつほ物語とはどんな作品?

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「宇津保物語」とも表記されます。作者は不詳ですが、複数の人の手によって記され、中心的書き手は源順(みなもとのしたごう)という説が濃厚。全20巻で、成立したのは平安中期の永観2年(984)年ごろと推測されています。平安時代の年中行事、装束、舞楽の描写がとても詳しく書かれているのが特徴。全編にわたり中国大陸文化への崇拝が見られます。

うつほ物語のあらすじ

清原仲忠(なかただ)という人物をめぐる音楽伝承。秘伝の曲を伝えることにまつわる物語です。前半は清原俊蔭(としかげ)と孫の仲忠を中心とする「琴(きん)の物語」。竹取物語のような伝奇的色彩が特徴です。後半は当代の貴族の憧れであった貴宮(あてみや)という女性をめぐる求婚と政権争い。仲忠一族の繁栄の物語です。

宮廷の年中行事が生き生きと事細かに描写されており、読むだけでも楽しいうつほ物語。源氏物語以前に成立した話で、源氏物語にも大きな影響を与えました。貴族にとっては必須の教養であった琴の演奏技術の伝来について、ストーリー仕立てで楽しめるという一面も。「先祖から伝わった秘伝」という日本的な考え方のルーツを垣間見ることができます。

琴(きん)の演奏法の秘技

「うつほ」という名前は、後半の主人公の仲忠と母親が森の中の杉の空洞(うつほ)に住んでいたことに由来します。前半と後半は別物語のように異なっており、前半は、唐土(もろこし)から音楽という文化が伝来したことがメイン。日本の文学史上、初めて書かれた壮大な物語で、のちの源氏物語の成立にもつながります。

中国においても日本でも、古代社会で王と呼ばれる人たちは、音楽の技をマスターすることが必要不可欠。音楽と神は一体であると思われていたからです。皇帝が聖なるものであるように音楽も聖なるものと考えられていました。なかでも琴(きん)は聖人君子の楽器として崇められていました。

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日本では、日本古来の音楽よりも外来の大陸渡来の音楽のほうが神聖と思われていた。前半の主人公である清原俊蔭(としかげ)が遣唐使として唐に渡る途中にペルシャで座礁。その地で琴の秘技を仙人から教わる際、音楽の神性についても語られている。

2.「うつほ物語」の壮大なストーリー

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うつほ物語は、竹取物語の伝奇的な要素を引き継ぎながら、写実的な描写も取り込んでいきます。その写実性は、のちに生れる源氏物語に引き継がれることに。源氏物語や枕草子にも、うつほ物語に関する記載があり、清少納言は熱心な仲忠ファンでした。当時の宮中勤めの女房達のあいだでうつほ物語は大ブーム。近年は長編小説として源氏物語よりもうつほ物語を高く評価する研究者もいるほどです。

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