この記事では「人口に膾炙する」について解説する。

端的に言えば人口に膾炙するの意味は「広く知れ渡る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「人口に膾炙する」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「人口に膾炙する」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「人口に膾炙する」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「人口に膾炙する」の意味は?

「人口に膾炙する」には、次のような意味があります。

世間の人々の話題・評判となって、広く知れ渡る。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「人口に膾炙する」

「人口に膾炙する」の「人口」は「じんこう」そして「膾炙」の読み方は「かいしゃ」です。「膾」は「なます」と読み「炙」には「あぶる」「焼く」などの意味があります。「膾」はもともと細切りの生肉・生魚のことを指していました。古代中国の春秋時代には、これらにネギやからし菜などの薬味や酢をつけて食べており、料理法としては有名なものです。

一方日本では生肉を細かく刻んだものを「膾」と言いました。「なます」は「生肉(なましし)」や「生切(なますき)」が転じたものと言われています。「炙」は火であぶった肉、いわゆる焼き肉のことです。

「人口に膾炙する」の語源は?

次に「人口に膾炙する」の語源を確認しておきましょう。まず「人口」とは「人の口」のことです。「膾炙」は、なますとあぶった肉のことで、どちらも古代中国ではおいしい料理として人気がありました。

唐の詩人・林嵩(りんすう)の著作『周朴詩集序』に「一編一詠、膾炙人口」の一節があります。「どの文章や詩も、世の中で広く話題になった」という意味で、それがなますやあぶった肉のように人々の間で評判を呼び、人気のあるものを表すようになりました。

\次のページで「「人口に膾炙する」の使い方・例文」を解説!/

「人口に膾炙する」の使い方・例文

「人口に膾炙する」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.司馬遼太郎の歴史小説は、多くの人々に愛され人口に膾炙するものだ。
2.人口に膾炙する名文や名言は、たいてい後世の人々から評価される人物から生まれる。
3.歴代英雄の言葉が人口に膾炙する。

語源からもわかるとおり「人口に膾炙する」は、その多くが詩や小説などの作品を評価するうえで使われます。しかし世界的に賞賛される人や人気アーティストなど、たくさんの人たちの間で話題になった有名人に対しても使われる言葉です。例えば今まで存在さえ知らなかった研究者などがノーベル賞を受賞したり、芥川賞の候補になったりするとあっという間にその名前が知られるようになります。このような場合にも「人口に膾炙する」と使うことが可能です。

「人口に膾炙する」の類義語は?違いは?

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ここでは「人口に膾炙する」の類義語を見ていきましょう。

その1「口の端に上る」

広く話題になる意味では「口の端に上る」は「人口に膾炙する」の類義語と言えます。「人口に膾炙する」と違う点は、ポジティブな話題だけでなくネガティブな話題でも使われることです。「人口に膾炙」は「誰の口にもおいしいもの」がもともとの意味ですから言い意味でしか使いませんが「口の端に上る」にはそのような制限がありません。なぜなら「口の端」には「言葉の端々」とか「噂や評判」の意味があり、それらにはいい意味も悪い意味も含まれるからです。

\次のページで「その2「口の端にかける」」を解説!/

その2「口の端にかける」

「口の端にかける」も「人口に膾炙する」の類義語です。やはり「口の端に上る」と同じく「噂にする」「話題にする」という意味を持っています。噂や話題に限らず、単に言葉の端々に出す物事の意味もありますから、この場合は「人口に膾炙する」ほどの意味はありません。よく似た言葉に「口の端にかかる」があります。この場合は能動的に話題にするのではなく、誰かが言うことですから受動的な意味合いを持っていると言えるでしょう。

その3「もてはやされる」

「もてはやされる」は「盛んに褒められる」ことです。「賞賛する」ことを意味していますから「人口に膾炙する」と同じくいい意味で使われます。ただし「人口に膾炙する」は広く世の中で不特定多数の人たちに褒めそやされる意味がありますが「もてはやされる」は教室や職場など狭い範囲に限って特定の人を褒めるときにも使われることがあり、範囲を限らないのが違う点です。

「人口に膾炙する」の対義語は?

次に「人口に膾炙する」の対義語を見ていきましょう。辞書やウェブサイトには「人口に膾炙する」の対義語を見つけることができませんでした。しかし「人口に膾炙する」の意味が広く知れ渡って評判になることですから、その逆の意味の言葉を考えてみましょう。

「無名」

「無名」とは名前が世間に知られていないことです。その点広く評判になって、名前が世間に知られている「人口に膾炙する」の対義語としてもいいのではないでしょうか。無名の人は、良きにつけ悪しきにつけまったく人の話題にはなりません。「無名」の対義語としてすぐに思い浮かぶのが「有名」です。「人口に膾炙する」場合は当然有名になることですから、名もないものを表す「無名」は対義語と言えます。「無名」は人物に限らず、名の知られていない小説や芸術品に対しても使える言葉です。

「人口に膾炙する」の英訳は?

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最後に「人口に膾炙する」の英訳を見ていきましょう。

その1「be well known」

「be well known」を直訳すると「よく知られた」です。これは「人口に膾炙する」の「世間の人々の話題・評判となって、広く知れ渡る」と同じ意味になります。簡単な英語ですから丸暗記してしまいましょう。

\次のページで「その2「be very well known」」を解説!/

その2「be very well known」

「be well known」によく似たフレーズに「be very well known」があります。この言葉もやはり「非常によく知られた」という意味になり「人口に膾炙する」の英訳といっていいでしょう。例えば「That novel is very well known」は「その小説は人口に膾炙している」という意味になります。

「人口に膾炙する」を使いこなそう

この記事では「人口に膾炙する」の意味・使い方・類語などを説明しました。日常ではまず使うことのない言葉です。しかし文章で、広く評判を呼んでいるとか広く知れ渡る様子を表現したい場合に使うと、あなたの文章の品格が上がるかもしれません。意識して使うようにしてみてはいかがでしょうか。

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【故事成語】「人口に膾炙する」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「人口に膾炙する」について解説する。

端的に言えば人口に膾炙するの意味は「広く知れ渡る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「人口に膾炙する」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「人口に膾炙する」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「人口に膾炙する」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「人口に膾炙する」の意味は?

「人口に膾炙する」には、次のような意味があります。

世間の人々の話題・評判となって、広く知れ渡る。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「人口に膾炙する」

「人口に膾炙する」の「人口」は「じんこう」そして「膾炙」の読み方は「かいしゃ」です。「膾」は「なます」と読み「炙」には「あぶる」「焼く」などの意味があります。「膾」はもともと細切りの生肉・生魚のことを指していました。古代中国の春秋時代には、これらにネギやからし菜などの薬味や酢をつけて食べており、料理法としては有名なものです。

一方日本では生肉を細かく刻んだものを「膾」と言いました。「なます」は「生肉(なましし)」や「生切(なますき)」が転じたものと言われています。「炙」は火であぶった肉、いわゆる焼き肉のことです。

「人口に膾炙する」の語源は?

次に「人口に膾炙する」の語源を確認しておきましょう。まず「人口」とは「人の口」のことです。「膾炙」は、なますとあぶった肉のことで、どちらも古代中国ではおいしい料理として人気がありました。

唐の詩人・林嵩(りんすう)の著作『周朴詩集序』に「一編一詠、膾炙人口」の一節があります。「どの文章や詩も、世の中で広く話題になった」という意味で、それがなますやあぶった肉のように人々の間で評判を呼び、人気のあるものを表すようになりました。

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