端的に言えば天に唾するの意味は「人に害を与えると、かえって災いが降ってくる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
読書家ライターの伊勢雄真を呼んです。一緒に「天に唾する」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/伊勢雄真
理工学部に所属する現役大学生。読書が好きで自然科学分野から人文学・社会科学まで幅広く読む。
読書で培った様々な知識と理系の勉強で養った論理的思考力で、みなさんを「天に唾する」の奥深い世界に誘う。
「天に唾する」の意味は?
「天に唾する」は「てんにつばする」と読みます。それでは「天に唾する」という言葉の辞書的な意味は何か。それを、国語辞典を引いて調べていきましょう。「天に唾する」は「天に向かってつばを吐く」と同じ意味なので、こちらから引用していきます。
[上に向かってつばを吐くと、それがそのまま自分の顔に落ちてくるところから]人に害を与えようとして、かえって災いを招くことのたとえ。点に仰いでつばきする。天につばする。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「天に向かってつばを吐く」
「天に向かって唾を吐く」は「てんにむかってつばきをはく」と読みます。「天に唾する」と同じ意味を持つ慣用句はたくさんあり、他にも「天に仰いでつばきする」や「寝て吐く唾は身にかかる」といったものもあるのです。これらの意味はすべて同じ、すなわち「同義語」であります。
「唾き」とは唾を吐くという意味の「唾く(つはく)」の連用形です。唾を吐くという意味はもちろん、単に唾という意味も持っています。
仰ぐはどんな意味があるのでしょうか?ここで、国語辞典で「仰ぐ」を引いてみましょう。
1.上を向く。上方を見る。あおむく。
2.尊敬する。敬う。
3.教え。援助を求める。請う。
4.あおむいてひと息に飲む。あおる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「仰ぐ」
「天を仰いで」の意味は1.の上を向くという意味になります。4.は「毒を仰ぐ」という使われ方がされがちな意味ですね。
「天に唾する」の語源は?
「天に唾する」は四十二章経に出てくる文言から取られた慣用句です。四十二章経では次のように使われています。
悪人の賢者を害するものは、猶し天に仰いで而も唾せん、唾、点を汚さずして、還って己の身を汚し、風に逆らって人に塵くに、塵、彼を汚さずして、かえって身に塵すがごとし。
四十二章経6
ここから取られたのが「天に唾する」です。上記の引用を訳すと、「悪人が賢者を害するのは、点に仰いで唾を吐いても、天を汚さずに還って自分の身を汚すようなものだ。それ(悪人が賢者を害すること)は、風に逆らって、相手に塵をかけようとしても、塵は相手を汚さずに自身の身を汚すようなものだ」となります。
この教えは、釈迦が教えに否定的で罵ってきた男に向かって「今、私に向かってはいた言葉を持って帰りなさい、必ず自分に返ってくる」といった場面で言われたことです。この二つの教えはセットなので、覚えておくと良いでしょう。
「天に唾する」の使い方・例文
続いて、「天に唾する」の使い方を見ていきます。例文をご覧ください。
1.相手への八つ当たりが夫婦問題となり、離婚することになってしまった。天に唾するとはこのことか。
2.職場のできる人間に意地悪するのは、天に唾するようなものだ。
3.転校してきた人気の男の子に嫉妬し、リレーで上位になるのを邪魔した。しかし、結局自分が転んでしまって天に唾する事態となった。
3つの例文とも正しい使われ方がされているのがわかりますね。
ここで、一つ注意です。「天に唾する」を「天に向かって唾を吐きかけるような無礼を働くこと」とするのは誤用となります。他人に働いた悪事が、自分に返ってくるといった意味合いで使うようにしましょう。
その1「因果応報」
前世や過去の行いの善悪に応じて、その報いが必ずあるという意味の四字熟語です。「天に唾する」と異なり、良いことも悪いことも含む意味ですが、現在では悪いことに関して言われることが多いですね。「因果応報」について注意が必要なのは、悪事に報いるという意味で使うのは間違いとなります。今起きていることには必ず過去の行いなどの原因があるんだ、そういった意味を持つことに注意しましょう。
その2「お天道様に石」
「お天道様」と書いて「おてんとうさま」と読みます。これは、「天に唾する」と完全に同じ意味の同義語です。「お天道様」は太陽のことを指します。太陽に向かって石を投げると自分の方に落ちてくるでしょう。その様子は「天に唾する」と似ています。そこから同じ意味となったと理解してよいでしょう。
「お天道様に石」と同じように「天に唾する」の同義語となることわざは「悪事身に変える」です。こちらも併せて覚えておくと良いですね。
「天に唾する」の対義語は?
続いては「天に唾する」の対義語を1点紹介します。
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