
「心ここにあらず」は簡単に言うと「集中していない」ってことです。授業中でもあるよな、つまらないとぼんやりして別のことを考えてしまう。目の前のことに身が入らない状態。この「心ここにあらず」、実はこの後につらつらと文が続いているんだ、知っているかな。くわしい意味や使い方も確認して、使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「心ここにあらず」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ
言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。
「心ここにあらず」の意味・使い方

image by iStockphoto
たとえば、好きな人を想っている、病院に検査に行った家族が気になる、また、来月予定の旅行が楽しみでならない…など理由は様々ですが。今しなければいけないこと、していることに集中できない。話しかけられても反応できない、何を聞かれたのかもわからない、といった経験は誰でもありますよね。
別のことが気になって集中力に欠いた状態を「心ここにあらず」と表現します。くわしい意味や使い方を確認していきましょう。
「心ここにあらず」の意味
まず、辞書で意味を調べてみます。
心が他のことにとらわれて、当面のことに心を集中できない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「心ここに有らず」より
辞書の意味にある「当面」とは向き合っていること・さしせまっていること。別の何かに気を取られて、今、直面していることをおろそかにしている状態が「心ここにあらず」です。別のことを考えながら、あれもこれも出来るマルチタスクの人がうらやましいですね。
「心ここにあらず」の語源は長い!
「心ここにあらず」は故事成語です。故事とは昔あったこと・いわれ・伝わっている話のこと。主に中国の故事から生まれた言葉を「故事成語」といいます。「心ここにあらず」は紀元前・戦国時代から後漢初期の儒教(じゅきょう)経典「礼記(らいき)」より「大学」の一節からの出典です。辞書の意味を引用します。
「心焉(ここ)に在らざれば、視(み)れども見えず(心が他のことにとらわれていると、たとえ目がそちらに向いていても、きちんと見てはいない)」のあと、「聴けども聞こえず、食らえども其(そ)の味を知らず(耳を傾けていても聞いてはいないし、食べていてもその味はわからない)」と続いています。心身を鍛えるには、精神の集中が大切だ、ということを述べた一節です。
出典:故事成語を知る辞典 「心ここにあらざれば視れども見えず」 より
上記辞典にあるように「心ここにあらず」の語源は長いのです!心がなければ見えない、聞こえない、味もしない、といっています。「心」の定義は難しいですが、「心」がないと五感がまったく働かないということでしょう。
ここから、集中せずに何かしていることをたとえて「心ここにあらざれば視れども見えず」と使われます。さらに短くしたのが「心ここにあらず」と思われ、上記辞典には「異形」との表記です。
「心ここにあらず」の使い方・例文
意味が分かったところで、使って確認しましょう。
・失恋のショックでこの1週間、彼は心ここにあらずの状態だ。
・結婚式を間近に控えた彼女は浮かれて、心ここにあらずだ。
・なぜか心ここにあらずの妻は、家事もおざなりだ。
いずれも、日々の生活・していることに集中していない、という例文です。そわそわと落ち着きがない、また、ぼんやりとしているなど「心ここにあらず」な人の状態は状況によって様々。集中できない状態が続くと、ミスが重なったり重大な事故を引き起こしたりすることもあります。勉強や仕事では気持ちを切り替え、私生活ではリフレッシュ、心を自分の中に戻していきましょう。
「上(うわ)の空」:ほかのことに心がとられて、集中できないこと
「上の空」は他のことに気を取られて今していることに注意が向かないこと、また、空中やあてにならないことの意味もあります。使い方は「ストレスでイライラする彼女は、何を聞いても上の空で生返事だった」「スマホが気になる生徒は、授業中も上の空だった」などです。
こちらの記事もおすすめ

「上の空」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!
\次のページで「「注意散漫(さんまん)」:気が散っていること」を解説!/