この記事では「心ここにあらず」という言葉を解説する。
「心ここにあらず」は簡単に言うと「集中していない」ってことです。授業中でもあるよな、つまらないとぼんやりして別のことを考えてしまう。目の前のことに身が入らない状態。この「心ここにあらず」、実はこの後につらつらと文が続いているんだ、知っているかな。くわしい意味や使い方も確認して、使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「心ここにあらず」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「心ここにあらず」の意味・使い方

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たとえば、好きな人を想っている、病院に検査に行った家族が気になる、また、来月予定の旅行が楽しみでならない…など理由は様々ですが。今しなければいけないこと、していることに集中できない。話しかけられても反応できない、何を聞かれたのかもわからない、といった経験は誰でもありますよね。

別のことが気になって集中力に欠いた状態を「心ここにあらず」と表現します。くわしい意味や使い方を確認していきましょう。

「心ここにあらず」の意味

まず、辞書で意味を調べてみます。

心が他のことにとらわれて、当面のことに心を集中できない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「心ここに有らず」より

辞書の意味にある「当面」とは向き合っていること・さしせまっていること。別の何かに気を取られて、今、直面していることをおろそかにしている状態が「心ここにあらず」です。別のことを考えながら、あれもこれも出来るマルチタスクの人がうらやましいですね。

「心ここにあらず」の語源は長い!

「心ここにあらず」は故事成語です。故事とは昔あったこと・いわれ・伝わっている話のこと。主に中国の故事から生まれた言葉を「故事成語」といいます。「心ここにあらず」は紀元前・戦国時代から後漢初期の儒教(じゅきょう)経典「礼記(らいき)」より「大学」の一節からの出典です。辞書の意味を引用します。

「心(ここ)に在らざれば、視(み)れども見えず(心が他のことにとらわれていると、たとえ目がそちらに向いていても、きちんと見てはいない)」のあと、「聴けども聞こえず、食らえども其(そ)の味を知らず(耳を傾けていても聞いてはいないし、食べていてもその味はわからない)」と続いています。心身を鍛えるには、精神の集中が大切だ、ということを述べた一節です。

出典:故事成語を知る辞典 「心ここにあらざれば視れども見えず」 より

上記辞典にあるように「心ここにあらず」の語源は長いのです!心がなければ見えない、聞こえない、味もしない、といっています。「心」の定義は難しいですが、「心」がないと五感がまったく働かないということでしょう。

ここから、集中せずに何かしていることをたとえて「心ここにあらざれば視れども見えず」と使われます。さらに短くしたのが「心ここにあらず」と思われ、上記辞典には「異形」との表記です。

「心ここにあらず」の使い方・例文

意味が分かったところで、使って確認しましょう。

・失恋のショックでこの1週間、彼は心ここにあらずの状態だ。
・結婚式を間近に控えた彼女は浮かれて、心ここにあらずだ。
・なぜか心ここにあらずの妻は、家事もおざなりだ。

いずれも、日々の生活・していることに集中していない、という例文です。そわそわと落ち着きがない、また、ぼんやりとしているなど「心ここにあらず」な人の状態は状況によって様々。集中できない状態が続くと、ミスが重なったり重大な事故を引き起こしたりすることもあります。勉強や仕事では気持ちを切り替え、私生活ではリフレッシュ、心を自分の中に戻していきましょう。

「心ここにあらず」の類義語は?

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それでは次に、目の前のことに集中できていない意味で別の言葉を紹介しましょう。

「上(うわ)の空」:ほかのことに心がとられて、集中できないこと

「上の空」は他のことに気を取られて今していることに注意が向かないこと、また、空中やあてにならないことの意味もあります。使い方は「ストレスでイライラする彼女は、何を聞いても上の空で生返事だった」「スマホが気になる生徒は、授業中も上の空だった」などです。

\次のページで「「注意散漫(さんまん)」:気が散っていること」を解説!/

「注意散漫(さんまん)」:気が散っていること

「注意」は気配りや用心、「散漫」は散らばって広がること・気が散っていることなどの意味です。「注意力散漫」という表現もあります。「注意力」とは一つに心を集中し続ける力のこと。いずれにせよ、集中力が足りず注意をおこたっている状態です。「簡単なテストで凡ミス、注意散漫だった」「注意力散漫で運転してあわや事故になるところだった」と使います。

「ぼんやりする」:集中していないこと

「ぼんやり」にはぼやけている・はっきりしない、などいろんな意味がありますが、ここでは集中できず間が抜けている、元気がない様です。「食事中、ぼんやりしていたら母に心配された」「人間関係のトラブルで疲れはてた私は、海を見てぼんやりする」と使われます。

「心ここにあらず」の対義語はなんだろう

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集中していない状態を表す言葉とは正反対、注意深く物事に取り組んでいる表現をご紹介しましょう。

「一心不乱(いっしんふらん)」:ひとつに集中して心が乱れない

「一心不乱」はほかに気を取られず、ひとつのことに熱中して打ち込んでいる様を表現した四字熟語です。「受験に向けて一心不乱に勉強した」「優勝目指してチーム一丸、一心不乱に練習する」と使います。

「夢中」:我を忘れるほど熱中すること

「夢中」とは物事に心を集中して他のことが見えなくなってしまう状態です。寝ても覚めてもそのことばかりに心身を費やす様は、ある意味「心ここにあらず」かもしれませんね。「初めての恋愛、彼女は彼に夢中だった」「ドラマに夢中で徹夜した」と使います。

「心ここにあらず」を英訳してみよう

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では「心ここにあらず」を英語でどう表現するのでしょうか。単語なら「distraction」:気が散る。句動詞なら「space out」:ぼっとする・ぼんやりする、「He spaced out.(彼はぼんやりしていた)」と使います。

慣用句的な表現としては「When the mind is absent, the eye is blind.」:心ここにあらざれば見れども見えず。これを単語にしたような表現が、上の空・うっかりしたと訳される「absent-minded」です。詳しくみてみましょう。

\次のページで「「absent-minded」:上の空」を解説!/

「absent-minded」:上の空

「absent」は不在・留守・欠席、「-minded」は~な心・~に熱心という意味。二つ合わせた熟語のような「absent-minded」は心が不在、すなわち「心ここにあらず」という意味で使われます。例文で使い方を確認しましょう。

・She is absent-minded.
(彼女は心ここにあらずだ)
・He made me an absent-minded reply.
(彼は私に上の空の返事をした)
・I was absent-minded because of broken heart.
(私は失恋で心ここにあらずだった)

「心ここにあらず」の状態は改善や解決が必要ですよ

この記事では「心ここにあらず」の意味・使い方・類語などを説明しました。ほかのことが気になって今していることに集中できない状態、類義語は「上の空」、対義語は「一心不乱」、英語は「absent-minded」などを使うことが分かりましたね。

「心」は人の知性・理性・思考・感情・性格・精神などなど、「人」そのものと言っても良いでしょう。「心」がここにないなんてとて重大なこと。悩み事や心配事、自分で解決できないなら早くに信頼する家族・友人知人に相談、またプロの知恵を借りることも必要だと思います。

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国語言葉の意味

簡単でわかりやすい!「心ここにあらず」は実は簡略形で続きがある?意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターが詳しく解説

この記事では「心ここにあらず」という言葉を解説する。
「心ここにあらず」は簡単に言うと「集中していない」ってことです。授業中でもあるよな、つまらないとぼんやりして別のことを考えてしまう。目の前のことに身が入らない状態。この「心ここにあらず」、実はこの後につらつらと文が続いているんだ、知っているかな。くわしい意味や使い方も確認して、使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「心ここにあらず」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「心ここにあらず」の意味・使い方

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たとえば、好きな人を想っている、病院に検査に行った家族が気になる、また、来月予定の旅行が楽しみでならない…など理由は様々ですが。今しなければいけないこと、していることに集中できない。話しかけられても反応できない、何を聞かれたのかもわからない、といった経験は誰でもありますよね。

別のことが気になって集中力に欠いた状態を「心ここにあらず」と表現します。くわしい意味や使い方を確認していきましょう。

「心ここにあらず」の意味

まず、辞書で意味を調べてみます。

心が他のことにとらわれて、当面のことに心を集中できない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「心ここに有らず」より

辞書の意味にある「当面」とは向き合っていること・さしせまっていること。別の何かに気を取られて、今、直面していることをおろそかにしている状態が「心ここにあらず」です。別のことを考えながら、あれもこれも出来るマルチタスクの人がうらやましいですね。

「心ここにあらず」の語源は長い!

「心ここにあらず」は故事成語です。故事とは昔あったこと・いわれ・伝わっている話のこと。主に中国の故事から生まれた言葉を「故事成語」といいます。「心ここにあらず」は紀元前・戦国時代から後漢初期の儒教(じゅきょう)経典「礼記(らいき)」より「大学」の一節からの出典です。辞書の意味を引用します。

「心(ここ)に在らざれば、視(み)れども見えず(心が他のことにとらわれていると、たとえ目がそちらに向いていても、きちんと見てはいない)」のあと、「聴けども聞こえず、食らえども其(そ)の味を知らず(耳を傾けていても聞いてはいないし、食べていてもその味はわからない)」と続いています。心身を鍛えるには、精神の集中が大切だ、ということを述べた一節です。

出典:故事成語を知る辞典 「心ここにあらざれば視れども見えず」 より

上記辞典にあるように「心ここにあらず」の語源は長いのです!心がなければ見えない、聞こえない、味もしない、といっています。「心」の定義は難しいですが、「心」がないと五感がまったく働かないということでしょう。

ここから、集中せずに何かしていることをたとえて「心ここにあらざれば視れども見えず」と使われます。さらに短くしたのが「心ここにあらず」と思われ、上記辞典には「異形」との表記です。

「心ここにあらず」の使い方・例文

意味が分かったところで、使って確認しましょう。

・失恋のショックでこの1週間、彼は心ここにあらずの状態だ。
・結婚式を間近に控えた彼女は浮かれて、心ここにあらずだ。
・なぜか心ここにあらずの妻は、家事もおざなりだ。

いずれも、日々の生活・していることに集中していない、という例文です。そわそわと落ち着きがない、また、ぼんやりとしているなど「心ここにあらず」な人の状態は状況によって様々。集中できない状態が続くと、ミスが重なったり重大な事故を引き起こしたりすることもあります。勉強や仕事では気持ちを切り替え、私生活ではリフレッシュ、心を自分の中に戻していきましょう。

「心ここにあらず」の類義語は?

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それでは次に、目の前のことに集中できていない意味で別の言葉を紹介しましょう。

「上(うわ)の空」:ほかのことに心がとられて、集中できないこと

「上の空」は他のことに気を取られて今していることに注意が向かないこと、また、空中やあてにならないことの意味もあります。使い方は「ストレスでイライラする彼女は、何を聞いても上の空で生返事だった」「スマホが気になる生徒は、授業中も上の空だった」などです。

\次のページで「「注意散漫(さんまん)」:気が散っていること」を解説!/

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