この記事では「かぶりを振る」を解説する。
「かぶりを振る」という慣用句、頭を縦と横どちらに振っているかわかるか? 実は「横」なんだ、よって「否定・不承知」となる。どうして縦横書いていないのに「No」の意味なのでしょうか。もっとくわしい意味や使い方などを知って「かぶりを振る」を使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「かぶりを振る」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「かぶりを振る」の意味・使い方

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会話ではなかなか使いませんが小説などではよく目にする「かぶりを振る」という表現。「かぶり」とは「頭」のことですが、振るのは左右か上下どちらでしょうか。頷き肯定していると迷いそうになりますが、「かぶりを振る」は否定の意思です。くわしい意味や使い方を見ていきましょう。

「かぶりを振る」の意味

それではまず辞書で意味を調べてみましょう。

頭を左右に振って否定・不承知の意を表す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頭を振る(かぶりをふ・る)」より

「かぶりを振る」の「かぶり」は「頭」で、読み方は「あたま」「かしら」も辞書で出てきます。精選版日本国語大辞典では「かしらを振る」で否定・肯定、双方の意味が記載。「振る」は上下左右前後動かすこと、さまざまな方向なのに、どうして「かぶりを振る」は否定と理解するのでしょうか。

「かぶりを振る」は暗黙に、頭を左右に振ること

同じような意味を持つ「首を振る」を調べると、縦に振れば賛成、横に振れば否定、と双方出てきます。しかしながら「キャッチャーのサインに首を振って、ピッチャーが投げた」と野球の解説者が言った場合、ピッチャーは要求と別の球種を投げたと理解するでしょう。

それを踏まえて「かぶりを振る」。「私のお願いに彼はかぶりを振った」は、彼は拒絶したのだと感覚的に分かります。肯定か否定かは前後の文章から読み取りますが「横」は省略されがちのようで、「縦」と明記されていない場合、否定・不承知と受け止めるようです。

\次のページで「「かぶりを振る」の使い方・例文」を解説!/

「かぶりを振る」の使い方・例文

それでは慣習的な「否定・不承知」の意味で「かぶりを振る」を使ってみましょう。

1.別れたくないと彼女がかぶりを振って泣くので、僕はとても困った。
2.次期PTA役員の話、友人はむげなくかぶりを振った。
3.試験の出来を尋ねると、娘はかぶりを振って嘆息した。

1.2.の例文は拒否・拒絶・不承知などの意思を示した「かぶりを振る」です。3.は口では言わず、頭を振って不出来を暗示。落ち込む娘に家族はかける言葉がありませんね。2.や3.は直接的なセリフ・表現はありませんが、「かぶりを振る」ことでその困惑した状況を把握することが出来ます。

「かぶりを振る」の類義語は?

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それでは否定・不承知の意味で他の表現をご紹介しましょう。

「首を横に振る」:否定の意思を表す

先項、言葉の意味の説明に登場した「首を振る」。「首」とは頭と胴体を繋ぐ部分だけでなく、頭部全体を指します。「横」と明記されているので、否定の意思表示ですね。しかしながら「横」を省略しても「彼の申し出に私は首を振った」との例文は、否定・拒絶だと理解できます。

\次のページで「「不承知(ふしょうち):承知しないこと」を解説!/

「不承知(ふしょうち):承知しないこと

「承知(しょうち)」とは事情などを知ること・聞き入れること・理解して許すこと。これに打消しの「不」を付けるので、聞き入れないの意味になります。使い方は「体調不良の生徒の大会参加は不承知だ」「ろくでもない男だと、両親は娘の婚約に不承知である」などです。

「難色(なんしょく)を示す」:賛成できない

「難色を示す」とは不承知・賛成できない意思を表すこと、渋い顔をすることです。「企業が出資に難色を示し、研究は頓挫した」「繁忙期の有給休暇に上司が難色を示した」と使われます。

「かぶりを振る」の対義語は?

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次に対義語、肯定・了承の意味を持つ言葉を確認しましょう。

「頷く(うなず・く)」:首を縦に振ること

承知・同意などを示すために首を縦に振ることが「頷く」です。語源は項(うなじ)を前に突く「項突く」からといわれています。「頷」はあごやおとがい(顎の先)のことで、あごを上下に動かすことから「頷く」の字が使われているようです。「上々の業績報告に社長が頷いた」「励ましに彼が元気よく頷いた」と使います。

「了解(りょうかい)」:理解して承認

内容や事情を理解して認めること、相手の申し出・意見などを納得して承知することが「了解」の意味です。ちなみにビジネスでは「了解しました」は丁寧語であっても謙譲語でないので、目上の方・取引先などには「承知しました」がふさわしいとされています。

使い方は「留学して世界を学びたいという息子の意志を父親は了解した」「今日の会議の時間変更の通達、すぐに了解の返事をした」などです。

\次のページで「「かぶりを振る」を英訳すると?」を解説!/

「かぶりを振る」を英訳すると?

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「かぶりを振る」という慣用句は英語ではそのものずばり「shake one’s head」が簡単で有効です。使い方・例文を確認しましょう。

「shake one’s head」:かぶりを振る

「shake」は振る・振り動かす、「head」は頭で「shake one’s head」、頭を振ると訳され、否定・不承知・不賛成の意味。不安・悲しみや恥ずかしさを表して首を横に振るしぐさも含まれ、幅広く使われます。

・She shook her head to his opinion.
(彼の意見に彼女は首を横に振った)
・I shake my head in disagreement.
(私は賛成できないと首を振る)
・He was shaking his head at  bad news.
(悪い知らせに彼は首を振っていた)

「かぶりを振る」あいまいな場合は確認を

この記事では「かぶりを振る」の意味・使い方・類語などを説明しました。否定・不承知の意思を表していること、類義語は「首を横に振る」、対義語は「頷く」、英語は「shake one’s head」を使うことが分かりましたね。

「かぶりを振る」は日本語・英語も否定の意味になりますが、世界には真逆、頭を横に振ると「Yes」の国もあるようです。また文書では否定か肯定かあやふやな理解で読み進めると後々混乱するケースもあるでしょう。あいまいな場合はしっかり確認・再確認すると良いですね。

" /> 「かぶりを振る」は「はい」「いいえ」どっち?意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

「かぶりを振る」は「はい」「いいえ」どっち?意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターがわかりやすく解説

この記事では「かぶりを振る」を解説する。
「かぶりを振る」という慣用句、頭を縦と横どちらに振っているかわかるか? 実は「横」なんだ、よって「否定・不承知」となる。どうして縦横書いていないのに「No」の意味なのでしょうか。もっとくわしい意味や使い方などを知って「かぶりを振る」を使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「かぶりを振る」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「かぶりを振る」の意味・使い方

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会話ではなかなか使いませんが小説などではよく目にする「かぶりを振る」という表現。「かぶり」とは「頭」のことですが、振るのは左右か上下どちらでしょうか。頷き肯定していると迷いそうになりますが、「かぶりを振る」は否定の意思です。くわしい意味や使い方を見ていきましょう。

「かぶりを振る」の意味

それではまず辞書で意味を調べてみましょう。

頭を左右に振って否定・不承知の意を表す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頭を振る(かぶりをふ・る)」より

「かぶりを振る」の「かぶり」は「頭」で、読み方は「あたま」「かしら」も辞書で出てきます。精選版日本国語大辞典では「かしらを振る」で否定・肯定、双方の意味が記載。「振る」は上下左右前後動かすこと、さまざまな方向なのに、どうして「かぶりを振る」は否定と理解するのでしょうか。

「かぶりを振る」は暗黙に、頭を左右に振ること

同じような意味を持つ「首を振る」を調べると、縦に振れば賛成、横に振れば否定、と双方出てきます。しかしながら「キャッチャーのサインに首を振って、ピッチャーが投げた」と野球の解説者が言った場合、ピッチャーは要求と別の球種を投げたと理解するでしょう。

それを踏まえて「かぶりを振る」。「私のお願いに彼はかぶりを振った」は、彼は拒絶したのだと感覚的に分かります。肯定か否定かは前後の文章から読み取りますが「横」は省略されがちのようで、「縦」と明記されていない場合、否定・不承知と受け止めるようです。

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