この記事では「勘弁」について解説する。

端的に言えば勘弁の意味は「許すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「勘弁」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「勘弁」の意味や語源・使い方まとめ

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「勘弁」という言葉、馴染みのある言葉ではないでしょうか。とはいえ、正しい意味はと聞かれると不安になりませんか。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「勘弁」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「勘弁」の意味は?

まず初めに、「勘弁」の意味を辞書で確認してみましょう。「勘弁」には、次のような意味があります。

1.他人の過失や要求などを許してやること。堪忍。
2.物事のよしあしをよく考えること。
3.やりくりすること。算段。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「勘弁」

「勘弁」の読み方は「かんべん」です。後ほど詳しく説明しますが、「勘弁」はもともと2番の「物事のよしあしをよく考えること」を意味する言葉でした。それが転じて1番の「他人の過失や要求などを許してやること」の意味を含むようになり、次第にその意味で使われることの方が多くなりました。また、1番の意味に転じる以前、江戸時代には、3番の「やりくりすること」の意味を持っていたのです。このように、次第に変化してきた言葉なのですね。現在では主に「相手の過失や不利益をもたらす物事などを、許して咎めずに済ますこと」を意味する言葉として使われています。

「勘弁」の語源は?

次に「勘弁」の語源を確認しておきましょう。

漢字の「勘」は「考え合わせてよく取りしらべる」(勘案)「罪をただす」(勘当)「五感以外の直感で判断する能力」(勘所)の3つの意味を持っています。また「弁」は「事の是非をわきまえる」(弁償)などの意味を持つ漢字です。ここから「勘弁」は「よく考えて事の是非を判断する」という意味の言葉でした。この「勘弁」は、もともと禅僧が修行者に対して悟りの浅深を見極める問答のことを指していました。修行者の実力を確認する試験のことだったのですね。禅僧から「勘弁ならぬ」と言われることは、試験に受からなかった=まだふさわしくないという意味となり、ここから転じて「過失を許す」という現代の使われ方になったと考えられます。

「勘弁」の使い方・例文

「勘弁」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「勘弁」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.時差通勤で混雑は回避できたが、毎朝早起きは勘弁してほしい。
2.今回ライフスタイルマガジンに表示された画像につきましては、別記事にて内容を説明することでご勘弁願えませんでしょうか。
3.あなたには過去に何度も登録をお断りしたはずです。これ以上はもう勘弁なりません。

「勘弁」は、人の過失や罪を許すことを表現する時に使われる言葉です。「そろそろ勘弁してやる」というように相手を許す時にも使われますし、「それは勘弁してください」と自分が許しを請う時にも使うことができます。「勘弁してくれ」と使えば、「もうがまんならない」「いい加減にしてくれ」という気持ちを表現することもできますよ。「勘弁してください」という表現は婉曲表現ですので、「止めてください」「できません」などとはっきり断るよりも印象が柔らかくなり目上の人にも使うことができます。また、「ご勘弁願います」「ご勘弁くださいますようお願いいたします」などのように丁寧な表現にすると、正式な謝罪の気持ちを表現することもできますよ。

「勘弁」の類義語は?違いは?

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「勘弁」の類義語を見ていきましょう。

その1「堪忍」

「堪忍(かんにん)」は「怒りを抑えて、人の過ちを許すこと」「肉体的な痛みや苦しい境遇などをじっとこらえること、我慢すること」を意味する言葉です。「勘弁」の「勘」と「堪忍」の「堪」の漢字が違うことに気づきましたか。「勘」が「よく考える」という意味の漢字であったのに対し、「堪」は「がまんする」という意味を持つ漢字です。どちらも同じように「人の過ちを許すこと」という意味を持っていますが、「勘弁」は「いろいろな事情を考慮して許すこと」。「堪忍」は「耐え忍ぶこと」なのですよ。

その2「寛恕」

「寛恕(かんじょ)」は「心が広くて思いやりのあること」「過ちなどをとがめだてしないで許すこと」を意味する言葉です。「御寛恕を請う」などと用います。広くゆったりとした心で相手を許すことを表現する時に使える言葉ですよ。

その3「容赦」

「容赦(ようしゃ)」は「失敗・過失などを許すこと」を意味する言葉です。「ご容赦ください」「容赦しない」などと用いますね。「容赦」には「手加減すること」「控え目にすること」の意味が含まれています。ですので、「勘弁」とは違い、「ご容赦ください」と丁寧な形にしても正式な謝罪の気持ちを表すことはできず、許してほしいとお願いする気持ちが含まれてしまうのですよ。

\次のページで「その4「目こぼし」」を解説!/

その4「目こぼし」

「目こぼし」は漢字で「目溢し」と書きます。「とがめるはずのことを、わざと見逃すこと。大目に見ること」を意味する言葉です。「お目溢しを願います」などと用いますね。

その5「酌量」

「酌量(しゃくりょう)」は「事情をくみ取って、​処置・処罰などに手ごころを加えること」を意味する言葉です。「勘弁」とは違って「許す」ことではありません。しかし、事情をよく考慮して手加減を加えるという意味には共通するものがありますね。

「勘弁」の対義語は?

「勘弁」の対義語を見ていきましょう。

その1「復讐」

「復讐(ふくしゅう)」は「かたきうちをする。仕返しをする」ことを意味する言葉です。「復讐を果たす」などと用いますね。自分に害を与えた相手に対して、それに見合う害を返すことを意味する「復讐」は、「勘弁」とは反対の意味を持つ言葉ですね。

その2「報復」

「報復(ほうふく)」は「仕返しをすること」を意味する言葉です。相手から受けた仕打ちに対して、仕返しとして同等のことをやり返すことを表します。「敵に報復する」などと用いますね。この言葉も「勘弁」とは反対の意味を持っていますね。

「勘弁」の英訳は?

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「勘弁」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「forgive」

「forgive」は「許す、大目に見る」といった意味を持った単語です。「forgiveness」とすれば名詞の形になります。この単語を「勘弁」の英訳として用いることができますよ。

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その2「excuse」

「excuse」は「容赦する、許す」といった意味を持つ単語です。「Excuse me?」というのはなじみ深い表現なのではないでしょうか。この「excuse」は「すみません」という意味だけではなく、様々な意味で使うことのできる言葉なのですよ。この単語も「勘弁」の英訳として用いることができます。

その3「Give me a break.」

最後に、「もう勘弁してよ」と言いたい時の表現をご紹介します。「Give me a break.」は直訳すると「休憩ちょうだい」ということになりますね。このフレーズをうんざりした感じで言うと「勘弁してよ」の気持ちを表現することができます。他にも「That’s enough!」(もういい加減にしてよ)、「Oh, come on!」(え~、ちょっと待ってよ)、「Stop it.」(もうやめて)など、シチュエーションに合わせて様々な形で「勘弁してよ」を表現することができますよ。

Please forgive me, just this once.
今回だけは勘弁してください。

He excused my carelessness.
彼は私の不注意を勘弁してくれた。

「勘弁」を使いこなそう

この記事では「勘弁」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「勘弁」は「人の過失や罪を許すこと」を表現する言葉でしたね。相手に許しを請いたい時だけでなく、断りたい時にも、婉曲表現として相手に不躾な印象を与えずに気持ちを伝えることのできる言葉です。様々な使い方をマスターすると、コミュニケーションをスムーズにするためにとても便利に使える言葉だと思います。「勘弁」という言葉、ぜひ使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

「勘弁」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

1.時差通勤で混雑は回避できたが、毎朝早起きは勘弁してほしい。
2.今回ライフスタイルマガジンに表示された画像につきましては、別記事にて内容を説明することでご勘弁願えませんでしょうか。
3.あなたには過去に何度も登録をお断りしたはずです。これ以上はもう勘弁なりません。

「勘弁」は、人の過失や罪を許すことを表現する時に使われる言葉です。「そろそろ勘弁してやる」というように相手を許す時にも使われますし、「それは勘弁してください」と自分が許しを請う時にも使うことができます。「勘弁してくれ」と使えば、「もうがまんならない」「いい加減にしてくれ」という気持ちを表現することもできますよ。「勘弁してください」という表現は婉曲表現ですので、「止めてください」「できません」などとはっきり断るよりも印象が柔らかくなり目上の人にも使うことができます。また、「ご勘弁願います」「ご勘弁くださいますようお願いいたします」などのように丁寧な表現にすると、正式な謝罪の気持ちを表現することもできますよ。

「勘弁」の類義語は?違いは?

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「勘弁」の類義語を見ていきましょう。

その1「堪忍」

「堪忍(かんにん)」は「怒りを抑えて、人の過ちを許すこと」「肉体的な痛みや苦しい境遇などをじっとこらえること、我慢すること」を意味する言葉です。「勘弁」の「勘」と「堪忍」の「堪」の漢字が違うことに気づきましたか。「勘」が「よく考える」という意味の漢字であったのに対し、「堪」は「がまんする」という意味を持つ漢字です。どちらも同じように「人の過ちを許すこと」という意味を持っていますが、「勘弁」は「いろいろな事情を考慮して許すこと」。「堪忍」は「耐え忍ぶこと」なのですよ。

その2「寛恕」

「寛恕(かんじょ)」は「心が広くて思いやりのあること」「過ちなどをとがめだてしないで許すこと」を意味する言葉です。「御寛恕を請う」などと用います。広くゆったりとした心で相手を許すことを表現する時に使える言葉ですよ。

その3「容赦」

「容赦(ようしゃ)」は「失敗・過失などを許すこと」を意味する言葉です。「ご容赦ください」「容赦しない」などと用いますね。「容赦」には「手加減すること」「控え目にすること」の意味が含まれています。ですので、「勘弁」とは違い、「ご容赦ください」と丁寧な形にしても正式な謝罪の気持ちを表すことはできず、許してほしいとお願いする気持ちが含まれてしまうのですよ。

\次のページで「その4「目こぼし」」を解説!/

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