この記事では「虎の威を借る狐」について解説する。

端的に言えば虎の威を借る狐の意味は「権力者を頼りにして威張る小者のこと」という意味の故事成語ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

放送局の制作現場で10年の経験を積んだsinpeito88を呼んです。一緒に「虎の威を借る狐」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/sinpeito88

放送局の現場で10年間、ニュース原稿などを日々執筆。より正確な情報を届けられるよう言葉の探求を続けている。

「虎の威を借る狐」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「虎の威を借る狐」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。ちなみに、読みは「とらのいをかるきつね」です。

「虎の威を借る狐」の意味は?

「虎の威を借る狐」には、次のような意味があります。

他の権勢に頼って威張る小人(しょうじん)のたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の威を借る狐」

「虎の威を借る狐」は「他の権勢に頼って威張る小人のたとえ」です。自分自身が力を持っていないにもかかわらず、身分が上の者の権力などを後ろ盾として横暴にふるまうようなさまを指して使われています。例えば、会社で中間管理職に当たる人間が、部下に対して命令をするときに、その指示が自分から出されたものではなく、より上位の人間から出ているものだと強気に出てくるときなどが「虎の威を借る狐」です。大変醜いさまで、自分自身の実力ではなく、誰かの権勢にすがって命令を押し通そうとするような様子をさして使われています。

つまり、強力な後ろ盾がなければ、その人間は「とるに足らない者だ」ということが、共通認識なのです。現実社会であれば、後ろ盾がいなくなった途端、それまでの人間関係が崩壊するということはよくあります。

「虎の威を借る狐」の語源は?

次に「虎の威を借る狐」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の「戦国策」という本の「楚策」の中のお話からできたものです。百獣を探して食べていた虎が狐を捕まえて食べようとします。そこで狐が「私を食べれば、私を動物の長とした天帝の意向に背くことになる」とはったりをかまし、「嘘だと思うなら私についてきてみるがいい」と虎を誘いました。そして、虎がついていくと、見事に他の動物は狐が通ると、逃げて行ったのです。

しかし、これは狐におののいて逃げていたのではなく、後ろをついて歩いていた虎を見て逃げていたのでした。虎は見事にキツネに騙されたのです。このことから「虎の威を借る狐」という言葉が生まれました。

\次のページで「「虎の威を借る狐」の使い方・例文」を解説!/

「虎の威を借る狐」の使い方・例文

「虎の威を借る狐」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

その美人な新入社員は社長のごり押しで採用された。まさに彼女は虎の威を借る狐だ。

「虎の威を借る狐」は、周囲の人間がみな、トラが誰を指しているのかが分かっていることが前提です。そうでなければ、キツネは横暴にふるまったり、権勢に頼ることができません。この場合、社長というトラがいて、新入社員として入ってきた人物がキツネです。虎の威光がどこまで働いて、自分という狐を守ってくれるのか。その範囲をわきまえている狐ほど、厄介なものはありません。時代が変わっても、こういう人に振り回されるというのが、人間の歴史の一コマなのかもしれませんね。

「虎の威を借る狐」の類義語は?違いは?

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「虎の威を借る狐」は「他の権勢に頼って威張る小人のたとえ」という意味です。類義語として挙げられるのは「笠に着る」「親の光は七光り」「勝ち馬に乗る」といった言葉があります。「笠に着る」は、権力者から受けた恩恵などを利用して、威張ったり勝手なことをするさまです。また、「親の光は七光り」は親の威光を子供が利用すること。また「勝ち馬に乗る」は力のある人の側につくことで恩恵を受けるさまを言います。

その1「笠に着る」

「笠に着る」は「権勢のある後援者などを頼り、保障されている地位を利用して威張る。また、自分の施した恩徳をいいことにして勝手なことをする。」という意味の言葉です。「虎の威を借る狐」と同様に、権勢のある人間を頼って威張る」わけですが、「笠に着る」では、その権勢のあるものから施されたものを上手く利用するという意味合いも込められます。

\次のページで「その2「親の光は七光り」」を解説!/

首長の支援者の中心的存在であることを笠に着て、優先的に予約を取れるようにさせた。

その2「親の光は七光り」

「親の光は七光り」は「親の七光り」と短縮して使われることもあります。意味は「親の威光によって子が恩恵を受けること」です。「虎の威を借る狐」で言えば、虎は親であり、狐が子ということになります。日本でも、まだまだ「親の七光り」は見受けられますね。多くの場合が、周囲にとって迷惑な人事などを引き起こす要因で、ネガティブな表現です。しかし、親の威光によって、簡単には立てないようなステージに立って力を発揮したり、新しい事業を生み出すような人もいるわけですから、決して悪い事とは言い切れないのかもしれません。

この会社は、親の光は七光りで社長の息子が名ばかりの役員として報酬を受け取る末期ぶりだ。

その3「勝ち馬に乗る」

「勝ち馬に乗る」は「有利な方につくこと。便乗する。力のある人間の側について恩恵を受ける」という意味の言葉。「虎の威を借る狐」や「親の光は七光り」とは違って、主体者がどうすれば恩恵を受けられるかを考えて、そこに乗っかっていくさまが見える表現です。既に権勢を誇っているものにすり寄っていく感じもあります。

リーグ戦の初優勝という重大な場面を目前にして、勝ち馬に乗ろうする報道陣が一気に増えた。

「虎の威を借る狐」の対義語は?

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「虎の威を借る狐」は「他の権勢に頼って威張る小人のたとえ。」ですので、その対義語として挙げられるのは「他の権勢に頼って威張るようなことをしない人」ということになります。よって、そうした意味の言葉はないので、「虎の威を借る狐」の対義語はありません。

\次のページで「「虎の威を借る狐」を使いこなそう」を解説!/

「虎の威を借る狐」を使いこなそう

この記事では「虎の威を借る狐」の意味・使い方・類語などを説明しました。自分以外の力を上手く利用することは、ビジネスにおいても重要なことかもしれません。しかし、それが行き過ぎれば周囲の反感を買い、その後ろ盾を失えばたちまち人間関係の崩壊まで起こりかねません。自分の力をしっかり蓄えながら、いつか自分だけではできないことを起こしたいと思うときに支えになってくれる人を見つけておきたいものです。

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【故事成語】「虎の威を借る狐」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「虎の威を借る狐」について解説する。

端的に言えば虎の威を借る狐の意味は「権力者を頼りにして威張る小者のこと」という意味の故事成語ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

放送局の制作現場で10年の経験を積んだsinpeito88を呼んです。一緒に「虎の威を借る狐」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/sinpeito88

放送局の現場で10年間、ニュース原稿などを日々執筆。より正確な情報を届けられるよう言葉の探求を続けている。

「虎の威を借る狐」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「虎の威を借る狐」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。ちなみに、読みは「とらのいをかるきつね」です。

「虎の威を借る狐」の意味は?

「虎の威を借る狐」には、次のような意味があります。

他の権勢に頼って威張る小人(しょうじん)のたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の威を借る狐」

「虎の威を借る狐」は「他の権勢に頼って威張る小人のたとえ」です。自分自身が力を持っていないにもかかわらず、身分が上の者の権力などを後ろ盾として横暴にふるまうようなさまを指して使われています。例えば、会社で中間管理職に当たる人間が、部下に対して命令をするときに、その指示が自分から出されたものではなく、より上位の人間から出ているものだと強気に出てくるときなどが「虎の威を借る狐」です。大変醜いさまで、自分自身の実力ではなく、誰かの権勢にすがって命令を押し通そうとするような様子をさして使われています。

つまり、強力な後ろ盾がなければ、その人間は「とるに足らない者だ」ということが、共通認識なのです。現実社会であれば、後ろ盾がいなくなった途端、それまでの人間関係が崩壊するということはよくあります。

「虎の威を借る狐」の語源は?

次に「虎の威を借る狐」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の「戦国策」という本の「楚策」の中のお話からできたものです。百獣を探して食べていた虎が狐を捕まえて食べようとします。そこで狐が「私を食べれば、私を動物の長とした天帝の意向に背くことになる」とはったりをかまし、「嘘だと思うなら私についてきてみるがいい」と虎を誘いました。そして、虎がついていくと、見事に他の動物は狐が通ると、逃げて行ったのです。

しかし、これは狐におののいて逃げていたのではなく、後ろをついて歩いていた虎を見て逃げていたのでした。虎は見事にキツネに騙されたのです。このことから「虎の威を借る狐」という言葉が生まれました。

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