この記事では「衣鉢」について解説する。

端的に言えば衣鉢の意味は「僧侶の袈裟(けさ)と鉢」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「衣鉢」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「衣鉢」の意味や語源・使い方まとめ

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衣鉢」とは日常ではあまり見慣れない言葉ですね。「いはち」と読みたくなりますが、正しい読みは「いはつ/えはつ/えはち」です。衣服を表す「衣」と、植木鉢という表現で使う「鉢」とは面白い組み合わせですよね。一体どのような意味なのでしょうか。

今回は「衣鉢」の意味や語源・使い方を見ていきます。由来までさかのぼって分かりやすく解説しますので、最後までぜひ読んでみてくださいね。

「衣鉢」の意味は?

「衣鉢」には、次のような意味があります。

1.僧侶が身にまとう三衣 (さんえ) (3種の袈裟 (けさ) )と一つの鉢。
2.禅宗で、法を伝える証拠として授ける袈裟と鉢。また、禅僧が師と仰ぐ僧から伝えられる奥義。
3.広く宗教・学問・芸術などで、師から弟子に授けられる奥義。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「衣鉢」

衣鉢」とは僧侶の持ち物を指します。まず1つ目は「三衣」と呼ばれる袈裟ですね。袈裟とは僧侶特有の着物のことです。「三衣」と言われるだけあって袈裟には「僧伽梨 (そうぎゃり) 」「鬱多羅僧 (うったらそう) 」「安陀会((あんだえ) 」と呼ばれる3種類があります。

次に「鉢」とは食器のことです。托鉢(たくはつ)をしている僧侶が手に持っている器をイメージしてください。鉄製・陶製・木製・匏(ひさご)の四種類があり、材料や色、容量などが細かく決められています。

僧侶になるには俗世間の欲望を断ち、簡素な生活をしなければなりません。個人で所持できる物も限られており、3つの衣と1つの鉢だけが許されていました。修行僧が個人で持つことを許されたこれらを「三衣一鉢」と言います。

「衣鉢」の語源は?

次に「衣鉢」の語源を確認しておきましょう。

衣鉢」の由来となっているのは、中国禅宗の始祖とされているインド人仏教僧の達磨です。ある日、達磨は弟子の慧可(えか)に「正法眼蔵 (しょうぼうげんぞう・悟りの真実のこと)」を伝授しました。その折、伝法の証として袈裟と、施しを受けるための鉄鉢を授けたと言われています。この故事から「衣鉢」という言葉が生まれました。

現代でも宗教や学問、芸術などの道において師匠から弟子に奥義が授けられた際に「衣鉢を継ぐ」という言い方をすることもあります。

「衣鉢」の使い方・例文

「衣鉢」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「衣鉢」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.次の演目は、今は亡き師匠から私が衣鉢を継いだものである。
2.師匠は後継を探しているらしい。衣鉢を継ぐにふさわしいのは彼だろう。
3.あのお寺は住職から息子さんに衣鉢相伝となるらしい。

「衣鉢」は「弟子が師のおしえを継ぐこと、奥義を受け継ぐこと」という意味で使われます。「衣鉢」と単体で使われることはあまりなく、多くは「衣鉢を継ぐ」という慣用表現になることに注意しましょう。

例文1と例文2は「衣鉢を継ぐ」を使っっていますね。どちらも師匠から弟子に、流儀の教えが受け継がれるという意味です。

例文3では「衣鉢相伝(いはつそうでん)」という四字熟語をご紹介しました。意味は「衣鉢を継ぐ」と同じですが、四字熟語にすることで格式が生まれます。場面によって使い分けてみてください。

「衣鉢」の類義語は?違いは?

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「衣鉢」は師匠から弟子に伝えられるおしえのことですね。そんな「衣鉢」に類義語はあるのでしょうか。

その1「真髄」

真髄(しんずい)」とは「物事の中心・精神ともいうべきもの」という意味です。師匠が弟子に教えるのは、流派の根本的な考え方や表現ですよね。目には見えない精神世界も含まれます。「奥義」も同じ意味で使えますよ。

「映画が非常に好きな友人が言うには、あの監督の真髄は悲しみの表現の仕方にこそあるということだ」

その2「極意」

極意(ごくい)」は「芸道や武道などの最も深遠な意味、秘訣」という意味です。芸道や武道という点で、師弟関係の存在を感じさせる言葉ですね。

\次のページで「その3「清貧」」を解説!/

「血を吐くような努力の結果、彼は極意をつかんだ」

その3「清貧」

清貧(せいひん)」も見ておきましょう。「清貧」は師匠から弟子へのおしえではなく、「無理に富を求めようとはせず、行いが清らかで貧しい生活に安んじていること」という意味です。個人の所有物が許されず、袈裟と鉢だけで修行に臨んだ僧侶たちの在り方という意味での「衣鉢」の類義語としてご紹介しました。

「祖母は生涯、清貧な生活を誇りとした人だった」

「衣鉢」の対義語は?

続いて「衣鉢」の対義語を見てみましょう。「衣鉢」と反対の意味を持つ言葉にはどのようなものがあるでしょうか。

「断絶」

断絶(だんぜつ)」とは「系統や交際、精神的つながりなど、ずっと続いてきたものが切れ絶えること」という意味です。師匠から弟子へ、そして孫弟子へと脈々と教えが続くのが「衣鉢を継ぐ」でしたから、途中で途絶える「断絶」は対義語と言えますね。

「戦後長らく有効な国際関係を維持してきた両国だったが、人種問題を機に国交を断絶するに至った」

「衣鉢」の英訳は?

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「衣鉢」は仏教由来の言葉ですが、同じ意味を表す英語表現もあります。

\次のページで「「inherit」」を解説!/

「inherit」

「衣鉢」を英語にしたい場合は、「inherit」という表現を使いましょう。「inherit」は「受け継ぐ、継承する」という意味です。「財産を相続する」という場合にも使われることからもわかるように、代々続いているものを引き継ぐというニュアンスを持っています。

We must inherit that wish.
「私たちはその意思を受け継がなければなりません」

「衣鉢」を使いこなそう

この記事では「衣鉢」の意味・使い方・類語などを説明しました。

仏教は私たちの生活の隅々にまで浸透しています。私たちが「仏教由来」だと知らないことも非常に多いのですよ。夏場の作業着として重宝する作務衣も、もとは僧侶の普段着や作業着だったと言われています。調べてみると興味深いテーマ、ぜひ「衣鉢」をきっかけに仏教について関心を寄せてみてくださいね。

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国語言葉の意味

「衣鉢」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「衣鉢」について解説する。

端的に言えば衣鉢の意味は「僧侶の袈裟(けさ)と鉢」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「衣鉢」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「衣鉢」の意味や語源・使い方まとめ

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衣鉢」とは日常ではあまり見慣れない言葉ですね。「いはち」と読みたくなりますが、正しい読みは「いはつ/えはつ/えはち」です。衣服を表す「衣」と、植木鉢という表現で使う「鉢」とは面白い組み合わせですよね。一体どのような意味なのでしょうか。

今回は「衣鉢」の意味や語源・使い方を見ていきます。由来までさかのぼって分かりやすく解説しますので、最後までぜひ読んでみてくださいね。

「衣鉢」の意味は?

「衣鉢」には、次のような意味があります。

1.僧侶が身にまとう三衣 (さんえ) (3種の袈裟 (けさ) )と一つの鉢。
2.禅宗で、法を伝える証拠として授ける袈裟と鉢。また、禅僧が師と仰ぐ僧から伝えられる奥義。
3.広く宗教・学問・芸術などで、師から弟子に授けられる奥義。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「衣鉢」

衣鉢」とは僧侶の持ち物を指します。まず1つ目は「三衣」と呼ばれる袈裟ですね。袈裟とは僧侶特有の着物のことです。「三衣」と言われるだけあって袈裟には「僧伽梨 (そうぎゃり) 」「鬱多羅僧 (うったらそう) 」「安陀会((あんだえ) 」と呼ばれる3種類があります。

次に「鉢」とは食器のことです。托鉢(たくはつ)をしている僧侶が手に持っている器をイメージしてください。鉄製・陶製・木製・匏(ひさご)の四種類があり、材料や色、容量などが細かく決められています。

僧侶になるには俗世間の欲望を断ち、簡素な生活をしなければなりません。個人で所持できる物も限られており、3つの衣と1つの鉢だけが許されていました。修行僧が個人で持つことを許されたこれらを「三衣一鉢」と言います。

「衣鉢」の語源は?

次に「衣鉢」の語源を確認しておきましょう。

衣鉢」の由来となっているのは、中国禅宗の始祖とされているインド人仏教僧の達磨です。ある日、達磨は弟子の慧可(えか)に「正法眼蔵 (しょうぼうげんぞう・悟りの真実のこと)」を伝授しました。その折、伝法の証として袈裟と、施しを受けるための鉄鉢を授けたと言われています。この故事から「衣鉢」という言葉が生まれました。

現代でも宗教や学問、芸術などの道において師匠から弟子に奥義が授けられた際に「衣鉢を継ぐ」という言い方をすることもあります。

「衣鉢」の使い方・例文

「衣鉢」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「衣鉢」の類義語は?違いは?」を解説!/

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