この記事では「かまける」について解説する。

端的に言えばかまけるの意味は「あることに夢中になって何かをなおざりにする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「かまける」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

昔から読書が好きで、面白い本に夢中になると睡眠時間を削って読み終えてしまうらしい。小説にかまけていないで寝るべきだったと後悔することもしばしばだとか。そんなヤザワナオコに、「かまける」とはどんな意味なのか、使い方も含めて解説してもらう。

「かまける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「かまける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「かまける」の意味は?

「かまける」には、次のような意味があります。

1.あることに気を取られて、他のことをなおざりにする。

2.心を引かれる。感心する。共感する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

このように「かまける」には2つの意味がありますが、現在は2.の意味で用いられることはほとんどありません。「くだらないことにかまけていないで少しは勉強しろ」など、「かまける」対象を否定するニュアンスで使われることも多い言葉です。

なお、漢字では「感ける」と書いて「かまける」と読みます。自分が書く際に感じにする必要はありませんが、もし見かけたら読めるといいですね。

「かまける」の語源は?

次に「かまける」の語源を確認しておきましょう。元は「気負く」という言葉だったと言われていて、これは「気持ちが何かに惹かれて感動する」の意味。

紹介した意味のうち、2.に近いですね。こちらの意味の「かまける」の用例は古く、万葉集にも登場しています。「はしきやし翁の歌におほほしき九の児らやかまけておらむ」という歌で、老人の歌のすばらしさに心惹かれる9人の娘の様子を描いたもの。

初めは「心を惹かれる、感心する」の意味で用いられた「かまける」が、次第に「何かに心を惹かれすぎてほかのことをいいかげんにする」の意味に変化したと考えられます。

 

\次のページで「「かまける」の使い方・例文」を解説!/

「かまける」の使い方・例文

「かまける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・まだ学生なのに、ゲームにかまけて宿題もやらないとは困ったものだ。

・忙しさにかまけて資料の確認が疎かになり、申し訳ありませんでした。

このように、「××にかまけて○○をしない」という使い方が一般的です。「××」が理由、「○○しない」がその結果を表していますね。

一つのことに集中するあまり、他のことをする余裕がなくなった経験は誰しもあることでしょう。そんな様子を表すのが「かまける」です。多用すると言い訳がましいと思われる可能性もあるので注意しましょう。

また、勉強そっちのけで遊んでいる子どもを注意するようなシチュエーションでも「かまける」が使われますよ。

「かまける」の類義語は?違いは?

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「かまける」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。夢中になる様子を表すなら「熱中する」「打ち込む」「寝食を忘れる」もありますが、それ以外のものを紹介します。

その1「かかりきりになる」

「かかりっきり」ということもあり、ある物事だけをすることを言います。

一つのことに時間を取られて別のことをするゆとりがないという点では「かまける」と似ていますが、筆者は「かかりきり」にはあまり否定的なニュアンスを感じません。「かかりきりになるのも無理はない」状況で使われるケースが多いのではないでしょうか。

\次のページで「その2「忙殺される(ぼうさつされる)」」を解説!/

その2「忙殺される(ぼうさつされる)」

多忙なこと、仕事が忙しいことを表します。「殺」は意味を強めるために使われており、ほかにも「大笑いする」という意味の「笑殺する(しょうさつする)」がありますよ。

目の前の仕事に追われるあまりほかのことが疎かになった場合に「忙殺されて…」と使うことがあり、この点では「かまける」と共通します。

ただ、「かまける」は自分の意思であることに夢中になるニュアンスなのに対し、「忙殺」はやむを得ず忙しくなった雰囲気が感じられるのではないでしょうか。

その3「現(うつつ)を抜かす」

ある事に夢中になり、心を奪われることを言います。何かに熱中してそれ以外のことが適当になってしまう点は「かまける」と同じですが、より程度がひどい印象があるのが「うつつを抜かす」。

なにせこの「うつつ」は「現実、意識がはっきりしている状態」を表します。それが抜けてしまうのですから、ある物事に魂を抜かれるほど心奪われていることになりますね。そのため、夢中になる対象があまりよくないものの場合に使われることが多いのが「うつつを抜かす」の特徴です。

 

・このところ育児にかかりきりで、美容院など何年も行けずにいます。

・イベントの準備に忙殺されて月末締めの書類提出を忘れ、上司に注意された。

・彼の父親はギャンブルにうつつを抜かし、ほとんど仕事をしなかったと愚痴っていた。

「かまける」の対義語は?

「かまける」の逆の意味は「一つのことに熱中しすぎず、他のことをおろそかにしない」となるでしょうが、これを一語で表すような対義語は存在しません。

「全てのことをもれなくこなす」ことを表したいなら、手抜かりがないことを表す「遺漏(いろう)なく」を使うといいでしょう。また、「一つのことにとらわれず全体を把握している」と言いたいときは、「目配りが利く」はいかがでしょうか。

・転職者の紹介なら、秘書に任せておけば遺漏なく行ってくれるだろう。

・社会人経験が豊富なだけあって、目配りのきいた心遣いができる人だね。

「かまける」の英訳は?

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英文の中で「かまける」と表現したい場合はどうしたらいいか、見ておきましょう。「かまける」と直訳できる単語があるわけではないので、似たニュアンスを表せるものを紹介します。

\次のページで「その1「too busy to~」」を解説!/

その1「too busy to~」

「忙しすぎて~できない」の意味です。仕事や勉強に追われている状況なら、シンプルなこの表現で十分通用するので助かりますね。

その2「be occupied with」

occupyは「占領する、塞ぐ」なので、be occupied with~で「~に夢中になっている」という意味を表せます。時間や心が何かに占領されているから、他のことをする暇がないというイメージですね。

方言としての「かまける」って?

桜木先生ご指摘のとおり、地域によっては「かまける」を紹介した辞書上の意味とは異なるニュアンスで使うことがあります。

長野県や岐阜県が代表例で、「かまける」は「愚痴を言う」という意味だとか。これらの地方で仕事をするような場合は、「かまける」の意味の違いに気をつけたほうがよさそうですね。 

「かまける」を使いこなそう

この記事では「かまける」の意味・使い方・類語などを説明しました。夢中になる対象と疎かにしてしまう物事によっては、悪いイメージがあるのが「かまける」という言葉。でも子育てをしていると、何かに熱中して取り組める資質はほかの分野でも役立つことがあるように感じます。桜木先生も、「部活と勉強を竹馬の関係で両立できるとよい」とおっしゃっていましたよ。一生懸命になりつつも、ほかのことにも配慮できるバランスが保てるといいのでしょうね。

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国語言葉の意味

「かまける」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「かまける」について解説する。

端的に言えばかまけるの意味は「あることに夢中になって何かをなおざりにする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「かまける」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

昔から読書が好きで、面白い本に夢中になると睡眠時間を削って読み終えてしまうらしい。小説にかまけていないで寝るべきだったと後悔することもしばしばだとか。そんなヤザワナオコに、「かまける」とはどんな意味なのか、使い方も含めて解説してもらう。

「かまける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「かまける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「かまける」の意味は?

「かまける」には、次のような意味があります。

1.あることに気を取られて、他のことをなおざりにする。

2.心を引かれる。感心する。共感する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

このように「かまける」には2つの意味がありますが、現在は2.の意味で用いられることはほとんどありません。「くだらないことにかまけていないで少しは勉強しろ」など、「かまける」対象を否定するニュアンスで使われることも多い言葉です。

なお、漢字では「感ける」と書いて「かまける」と読みます。自分が書く際に感じにする必要はありませんが、もし見かけたら読めるといいですね。

「かまける」の語源は?

次に「かまける」の語源を確認しておきましょう。元は「気負く」という言葉だったと言われていて、これは「気持ちが何かに惹かれて感動する」の意味。

紹介した意味のうち、2.に近いですね。こちらの意味の「かまける」の用例は古く、万葉集にも登場しています。「はしきやし翁の歌におほほしき九の児らやかまけておらむ」という歌で、老人の歌のすばらしさに心惹かれる9人の娘の様子を描いたもの。

初めは「心を惹かれる、感心する」の意味で用いられた「かまける」が、次第に「何かに心を惹かれすぎてほかのことをいいかげんにする」の意味に変化したと考えられます。

 

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