この記事では「鸚鵡返し(おうむがえし)」について解説する。

端的に言えば鸚鵡返しの意味は「相手の言ったとおりに言い返すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「鸚鵡返し」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

電話応対の経験から復唱の大切さは痛感しているが、「しつこい」と思われないようにするテクニックも併せて身につける必要性を感じたとのこと。鸚鵡返しとはどんなときに使う言葉なのか、解説してもらう。

「鸚鵡返し」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鸚鵡返し」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鸚鵡返し」の意味は?

「鸚鵡返し」には、次のような意味があります。

1.他人の言ったとおりに言い返すこと。

2.和歌の詠み方の一。相手から詠みかけられた歌の一部だけを変えて、別の趣向で返歌すること。

3.酒宴の席で、相手の差す杯を干して、すぐ返杯すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鸚鵡返し」

辞書にはこのように説明されていますが、日常生活で「鸚鵡返し」はほとんどの場合、1つ目の意味で使われるので、ここでも主に「言ったとおりに言い返すこと」を中心に解説します。

人に何か話したときに、相手がこちらの言葉を繰り返してくれると「ちゃんと聞いてくれているな」「わかってくれたんだな」と安心することが多いでしょう。そのため、コミュニケーションスキルとして適切な鸚鵡返しを推奨する意見もあるほどです。

ただ、オウムが人の言葉を真似するときは、その意味までわかって真似るのではありません。ここから鸚鵡返しには「よく考えずに相手の言葉を即座に繰り返す」というニュアンスも含まれています。過剰に鸚鵡返しをしすぎると適当な人間だと解釈されたり、不快に思われたりということもあるので注意が必要。鸚鵡返しのメリットとデメリットについては例文のあとに紹介します。

「鸚鵡返し」の語源は?

辞書の意味で2つ目に載っている、和歌の詠み方が語源となった言葉です。オウムは人の言葉をよく覚えることで知られていますね。相手の言葉を繰り返すさまを口まね上手なオウムに例えているもので、歌舞伎の世界でも主役のセリフや所作を三枚目役がまねることを「鸚鵡」といいますよ。

なお、「鸚鵡」の漢字は2文字とも漢検準1級レベルと難しいこともあり、「オウム返し」「おうむ返し」と表すことが多くなっています。

\次のページで「「鸚鵡返し」の使い方・例文」を解説!/

「鸚鵡返し」の使い方・例文

「鸚鵡返し」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・お客様から話を聞くときは、鸚鵡返しや相づちを使ってきちんと確認をしましょう。

・彼女の会話は鸚鵡返しが多すぎて、ちゃんと考えて返事をしてくれているか心配になってしまうよ。

例文でも挙げたように、鸚鵡返しはビジネス上の会話でもよく使われます。メリットは、会話への興味や賛同の気持ちを伝えることでコミュニケーションがスムーズになることと、重要な事項について聞き間違いを防げる点。他方、デメリットもあり、何度も使っていると「何も考えずに適当に会話しているのではないか」と疑われかねません。興味や賛同やうなずきだけでも伝えられますから、相手の反応をよく見て言い方や頻度などを工夫すると有効ですよ。

「鸚鵡返し」の類義語は?違いは?

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では、「鸚鵡返し」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。もちろん「復唱する」「繰り返す」と言い換えることもできますが、ここではそれ以外の表現を紹介します。

「顰に倣う(ひそみにならう)」

「善し悪しを考えずに人の真似をする」という意味です。「何も考えず」という点に重きを置いてネガティブなニュアンスで使うこともあれば、他人の言動を見習うことを謙遜して使うこともありますよ。「鸚鵡返し」と異なり、言葉を繰り返す場合に限定せず行動を真似る場合にも用いられます。

この「ひそみ」とは眉間にしわを寄せて顔をしかめること。中国の春秋時代に、有名な美女が病気で顔をしかめているのを見た醜女(しこめ・みにくい女のこと)が、自分も美しく見えるのではないかと眉間にしわを寄せた、という故事に由来します。残念ながら不美人が顔をしかめても美しくなるはずもなく、周囲の人々に気持ち悪がられてしまったとか。

ちなみにこの言葉を使うときは、「ならう」を「習う」と書かないように気をつけましょう。学習するという意味ではなく、「手本にする、真似する」と言意味の「倣う」が正解です。「模倣(もほう)」という単語で見かけることがありますね。

\次のページで「「鸚鵡返し」の対義語は?」を解説!/

・慣れないお茶会で母のひそみに倣って行動しただけなのだが、「作法がよくわかっている」と褒められた。

・先生のひそみに倣って精進します。

「鸚鵡返し」の対義語は?

「鸚鵡返し」のちょうど反対に当たる言葉はありません。「相手の言ったとおりに繰り返す」の逆は、返事をしないならば「無言」でしょうか。とはいえ復唱せずに肯定、否定の返事をすることもあり、これは鸚鵡返しでもありませんが反対とまでは言えませんね。

また、鸚鵡返しの「よく考えず即座に繰り返す」点に着目するなら、十分考えることをいう「熟考(じゅっこう)」がありますが、ここには「口に出す」の意味は含まれません。

「鸚鵡返し」の英訳は?

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最後に、「鸚鵡返し」の英訳を見ておきましょう。

「parrot」

なんと英語でもそのまま、というか日本語以上にダイレクトに、「オウム」という単語1つで「鸚鵡返し」の意味を表すことができます。他動詞として「わけもわからずに真似る、繰り返す」という意味があるほか、名詞としても「言葉を真似る人」を表しますよ。

もしparrotを使わずに「鸚鵡返し」を表現したい場合は、repeat one’s word mechanically(機械的に繰り返す)としたり、blankly(ぼんやりと、何も考えずに)を用いたりしてもいいでしょう。

「鸚鵡返し」を使いこなそう

この記事では「鸚鵡返し」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「鸚鵡返し」のもととなった鳥のオウムは、元をたどればオーストラリアが原産で、日本には大化の改新の直後、647年に新羅(しらぎ)から伝わったのが最初だとか。その後、江戸時代には将軍や大名に飼育される鳥だったそうです。そんなに昔から日本人の生活に身近な鳥だったからこそ、言葉を繰り返すという習性も知られ、「鸚鵡返し」というだけでニュアンスまで伝わるようになったのでしょうね。

桜木先生のおっしゃった「ミラーリング」とは、相手の行動や言葉のパターンを観察して真似ること。家族や親しい友人同士だと、意識しなくてもいつの間に仕草や口癖が似てくることがあります。これをあえて意識的に取り入れると、共感を表すラポールが形成され、親しくなりやすかったり、会話がスムーズに進んだりというメリットがありますよ。

鸚鵡返しは嫌がられない程度に適切な場面で使いたいですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「鸚鵡返し」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鸚鵡返し(おうむがえし)」について解説する。

端的に言えば鸚鵡返しの意味は「相手の言ったとおりに言い返すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「鸚鵡返し」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

電話応対の経験から復唱の大切さは痛感しているが、「しつこい」と思われないようにするテクニックも併せて身につける必要性を感じたとのこと。鸚鵡返しとはどんなときに使う言葉なのか、解説してもらう。

「鸚鵡返し」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鸚鵡返し」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鸚鵡返し」の意味は?

「鸚鵡返し」には、次のような意味があります。

1.他人の言ったとおりに言い返すこと。

2.和歌の詠み方の一。相手から詠みかけられた歌の一部だけを変えて、別の趣向で返歌すること。

3.酒宴の席で、相手の差す杯を干して、すぐ返杯すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鸚鵡返し」

辞書にはこのように説明されていますが、日常生活で「鸚鵡返し」はほとんどの場合、1つ目の意味で使われるので、ここでも主に「言ったとおりに言い返すこと」を中心に解説します。

人に何か話したときに、相手がこちらの言葉を繰り返してくれると「ちゃんと聞いてくれているな」「わかってくれたんだな」と安心することが多いでしょう。そのため、コミュニケーションスキルとして適切な鸚鵡返しを推奨する意見もあるほどです。

ただ、オウムが人の言葉を真似するときは、その意味までわかって真似るのではありません。ここから鸚鵡返しには「よく考えずに相手の言葉を即座に繰り返す」というニュアンスも含まれています。過剰に鸚鵡返しをしすぎると適当な人間だと解釈されたり、不快に思われたりということもあるので注意が必要。鸚鵡返しのメリットとデメリットについては例文のあとに紹介します。

「鸚鵡返し」の語源は?

辞書の意味で2つ目に載っている、和歌の詠み方が語源となった言葉です。オウムは人の言葉をよく覚えることで知られていますね。相手の言葉を繰り返すさまを口まね上手なオウムに例えているもので、歌舞伎の世界でも主役のセリフや所作を三枚目役がまねることを「鸚鵡」といいますよ。

なお、「鸚鵡」の漢字は2文字とも漢検準1級レベルと難しいこともあり、「オウム返し」「おうむ返し」と表すことが多くなっています。

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