
「噤む」の使い方・例文
続いて「噤む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.容疑者は事件について何も語らず、口を噤んで黙秘している。
2.部長が仕事のミスを責め立てている間、彼女は口を噤んで、うな垂れていた。
3.妹夫婦はダイエットの話からケンカになり、互いに口を噤んだまま目を合わせることもしていないそうだ。
4.漫画の掲載が中止になった理由について、出版社の編集者は口を噤むだけだった。
例文1は、追及されることに対して黙っていてよいという権利(黙秘権)を行使している状況です。一言たりとも話さないといった強い意志が感じられます。
例文2のように責め立てられると、口を噤まずにいられなくなるでしょう。何かを説明したり弁解したりする気力がなくなっていることが分かりますね。
例文3には、険悪なムードがただよっています。どちらが先に口を開くのか、ピリピリとした雰囲気が見て取れるでしょう。
例文4は、真実を打ち明けられない担当者の気持ちが「噤む」に表れています。面と向かって伝えるには、なおさら言いづらい内容なのかもしれません。

「口を噤む」は「押し黙る」といった表現に言い換えることもできる。動作が止まって微動だにしない上に、言葉も発さない様子が伝わってくるだろう。
次の章からは、類義語と対義語を出して「噤む」とのニュアンスの違いを見ていくぞ。
その1「黙する」
「黙(もく)する」は「黙(だま)る」の「黙」を音読みした形です。キーワードでもある「黙」の字には「声を出さない」という意味があります。「黙する」も「黙る」も意味は同じですが、「黙する」のほうが文語的な響きがあるといえるでしょう。
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