この記事では「組織液」について学習していこう。

組織液は体液の一種です。よく知られていることですが、動物の体の大部分は水分でできている。体内にある水分=”体液”の機能や成分、仕組みを知ることは、自分たちの身体や健康についてよく知るための第一歩になるはずです。自分自身の体の中で何が起きているのか、しっかりイメージしながら読んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

組織液とは?

今回のテーマは「組織液(そしきえき)」ですね。組織液は生物の体内を満たしている体液の一種で、細胞間に存在しています。間質液(かんしつえき)や細胞間液と呼ばれることも少なくありません。

組織液の成分や役割を知るには、体内に存在する他の体液についても理解しておく必要があります。まずは体液とは何なのか、を把握しておきましょう。

体液とは?

生物の体内に存在している液体を体液といいます。胃液のような消化液や、汗や涙といった液体は、”体の外”に分泌された液体(外分泌)なので、多くの場合体液には含めません。

体液は、細胞の内側にあるか、外側にあるかによって大きく細胞内液細胞外液に分けられます。ヒトでは体重のうちの約6割が水分ですが、その内訳は約4割が細胞内液、約2割が細胞外液だといわれているんです。

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細胞内液と細胞外液では、含まれている成分に違いがあります。体内では細胞内液と細胞外液をうまく循環させ、栄養などの必要成分を輸送し続けることで、細胞が生きていくのに適切な環境がつくられているのです。

細胞外液はさらに細かく分けられます。ここでは代表的な3つを覚えましょう。血管内を流れる血液に含まれる血しょう(血漿)、リンパ管内を流れるリンパ液、そして今回のテーマである組織液です。

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はじめにも書いたように、組織液は細胞と細胞の間を満たす液体であり、血管やリンパ管のように管の中を流れているわけではありません。そのため、組織液は管外液、血しょうやリンパ液は管内液と区分されることもあります。

\次のページで「組織液と血しょう、リンパ液の関係」を解説!/

細胞外液であるこの3種類の体液には、切っても切れない関係があります。なぜならば、それぞれがもとは”同じもの”だからなんです。

組織液がどこからきて、どこへ行くのか、その流れを追ってみましょう。

組織液と血しょう、リンパ液の関係

私たちのからだ中をめぐる体液といえば、血液でしょう。血液は、赤血球・白血球・血小板という有形成分と、無形成分(液体成分)である血しょうからなります。

血しょうの主成分は水ですが、そこに糖類や脂質、無機塩類、タンパク質などが溶け込んだ、複雑な液体です。

細胞の栄養源となるブドウ糖や、細胞の機能を制御するホルモン、病原体に抵抗するための抗体も、この血しょうによって運ばれます。また、酸素を運搬する赤血球も、血しょうの流れに乗って全身へ輸送されるわけです。

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細胞にとって重要な物質を輸送する血しょうですが、それがずっと血管の中にしか存在しないのでは、からだのより内部の細胞にそれを受け渡すことができませんよね。

なんと、血しょうは血管の壁からしみ出し、血管の外側にある細胞へ成分を届けるのです。こうして細胞間に存在するようになった液体が「組織液」と呼ばれることになります。

正確にいえば、少し違います。存在する場所が違うのはもちろんですが、もともとの血しょうに含まれている成分全てがしみ出して組織液になるわけではないのです。たとえば、血しょう中のタンパク質の多くは血管内に残り、組織液側には含まれません。

それでも、含まれている無機塩類(イオン)の組成や割合はよく似ています。完全に同じもの(成分)とは言えないですが、高校レベルの生物学であれば「ほぼ同じ」と考えておいても良いかもしれませんね。

\次のページで「組織液の役割」を解説!/

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さて、組織液は細胞の周囲を循環し、物質のやりとりを行うと、リンパ管や静脈へと回収されます。リンパ管を流れる体液がリンパ液でしたよね。リンパ液はもともと組織液だった、というわけなんです。

なお、リンパ液は最終的に静脈に行き着き、血液と合流します。組織液はリンパ液となり、リンパ液は血管に戻って、また血しょうに混ざっていくんですね。

組織液の役割

ではここで、組織液の役割について改めてみていきたいと思います。

組織液は細胞の周囲を満たし、細胞内外で物質のやりとりをするために必要なものです。細胞内では絶えず代謝反応が起こっています。そのための糖や酸素を必要とし、一方で代謝によって生じた二酸化炭素や老廃物を排出しなくてはなりません。

組織液を通してこの物質のやりとりを行うことで、細胞は活動をし続けることができます。

肺で行われるガス交換では、確かに赤血球が酸素を受け取ります。しかし、最終的に細胞に届けるときには、組織液にその酸素を溶け込ませているんです。

反対に、細胞から二酸化炭素を受け取るときにも、いったん組織液にそれが溶け込みます。その後赤血球に出会うと、赤血球内部へ取り込まれるのです。このあたりの詳しいお話は、赤血球の働きについて勉強するときに学ぶことになるでしょう。

組織液と”むくみ”

以上のように、細胞が正常に働くためになくてはならない組織液なのですが、これが貯まりすぎてしまうといわゆる”むくみ”ができた状態になります。むくみは専門的な言葉で浮腫(ふしゅ)ともいいますね。

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むくみが起きる原因はいくつも考えられます。

例えば、血液(血しょう)中の成分のバランスが悪くなっているために、血しょうが過剰に組織液側に流れ込んできてしまい、組織液の過剰が生じてしまうパターン。また、リンパ液がうまく流れなくなってしまうことで、組織液が上手く循環せず溜まりがちになり、むくみにつながるパターンもあります。

\次のページで「「組織液はどこからきて、どこへいくのか?」」を解説!/

そうなんです。そもそも、組織液やリンパ液には、血液にとっての心臓のような、流れをつくり出してくれる専用のポンプが存在しないんですよね。

心臓や筋肉で生み出された圧力によって血しょうがしみ出し、組織液となり、その”押し出す力”でリンパ管まで送られます。心臓が弱っていたり、筋肉が減少すると、このような体液の循環がスムーズにいかなくなってしまうのです。また、腎臓が弱くなることでもむくみが出やすくなります。

普段の生活の中で、それまでに感じたことのないような”むくみ”が現れたら、それは体からのサインかもしれません。

「組織液はどこからきて、どこへいくのか?」

組織液について、かなり専門的な内容までお話してきました。

高校の生物学であれば、組織液の役割や、組織液の由来(どこからきて、どこへいくのか?)をしっかりと説明できるようになっておけば十分でしょう。医学や薬学などに関係する方であれば、その成分や関連する体の症状・病気の話までおさえておく必要がありますね。

体液というのは何気ない存在のようですが、体内のすべての細胞に関係し、その活動を左右する重要な物質でもあります。ぜひ今一度、組織液も含めた他の体液について勉強しておきましょう。

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体の仕組み・器官理科生物

体液の一種「組織液」とは?何のためにあるの?現役講師がわかりやすく解説します

この記事では「組織液」について学習していこう。

組織液は体液の一種です。よく知られていることですが、動物の体の大部分は水分でできている。体内にある水分=”体液”の機能や成分、仕組みを知ることは、自分たちの身体や健康についてよく知るための第一歩になるはずです。自分自身の体の中で何が起きているのか、しっかりイメージしながら読んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

組織液とは?

今回のテーマは「組織液(そしきえき)」ですね。組織液は生物の体内を満たしている体液の一種で、細胞間に存在しています。間質液(かんしつえき)や細胞間液と呼ばれることも少なくありません。

組織液の成分や役割を知るには、体内に存在する他の体液についても理解しておく必要があります。まずは体液とは何なのか、を把握しておきましょう。

体液とは?

生物の体内に存在している液体を体液といいます。胃液のような消化液や、汗や涙といった液体は、”体の外”に分泌された液体(外分泌)なので、多くの場合体液には含めません。

体液は、細胞の内側にあるか、外側にあるかによって大きく細胞内液細胞外液に分けられます。ヒトでは体重のうちの約6割が水分ですが、その内訳は約4割が細胞内液、約2割が細胞外液だといわれているんです。

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細胞内液と細胞外液では、含まれている成分に違いがあります。体内では細胞内液と細胞外液をうまく循環させ、栄養などの必要成分を輸送し続けることで、細胞が生きていくのに適切な環境がつくられているのです。

細胞外液はさらに細かく分けられます。ここでは代表的な3つを覚えましょう。血管内を流れる血液に含まれる血しょう(血漿)、リンパ管内を流れるリンパ液、そして今回のテーマである組織液です。

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はじめにも書いたように、組織液は細胞と細胞の間を満たす液体であり、血管やリンパ管のように管の中を流れているわけではありません。そのため、組織液は管外液、血しょうやリンパ液は管内液と区分されることもあります。

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