この記事では「片時」について解説する。
端的に言えば「片時」の意味は「一時の半分、わずかの間」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「片時」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「片時」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「片時」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「片時」の意味は?

「片時」には、次のような意味があります。

ほんのしばらくの間。ちょっとの間。へんじ。「片時も目が離せない」

出典:コトバンク

「片時も」は後ろに打消しの表現を伴って、ほんの短い時間も「…しない」という意味を表します。結果的に「まったく」「ぜんぜん」などという全部否定の意味になりますが、否定を誇張するニュアンスがありますよ。

「片時」の語源は?

次に「片時」の語源を確認しておきましょう。残念ながら「片時」の語源ははっきりとはわかっていませんので、ここでは「片」と「時」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「片」は木を縦に半分切った右側の形を描いた字。半分にした木、つまり「きれはし」「かたわれ」を表します。また「時」は太陽をあらわす「日(ひへん)」とうつる意味の音を示す「寺」とを合わせた字。太陽が移動することから過ぎていくもの、つまり「とき」を表します。

\次のページで「「片時」の使い方・例文」を解説!/

「片時」の使い方・例文

「片時」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.事態は一刻を争うと伝えられるほど彼女の容体はかたときも目が離せない状態だった。素子はほかの事はさておきいちにちじゅうやすまずに彼女に付き添っていた。

2.姫君はお母さんに何度注意されても肌身離さずチヤン人形を抱きしめ、昼夜問わずかたときもじっとしていない。そして、我慢できないことがあるとひととき黙り込み自分勝手なことを目的もなく要求してくる。

3.選手は監督の指示をかたときも忘れたことはない。日頃から脳裡に重要性の高い単語として焼き付けておくので、試合中もランダムにピックアップして反芻することができる。

例文1からは彼女が差し迫った状況に置かれている様子が伝わってきますし、例文2からは多動性や衝動性のある子供であることが読み取れます。また、例文3はスポーツマンらしい心意気を示していることが伺えますね。

「片時」の類義語は?違いは?

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「片時も」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「急きょ」

「急きょ」は突然の事態に対して時間をおかずに対応する様子を表します。「課長の急死で出張先からきゅうきょ呼び戻された」や「ピッチャーが負傷したので、きゅうきょセンターの選手がリリーフに立った」など述語にかかる修飾語として用いられますよ。ややかたい文章語で公式の発言や報道によく用いられます突然の事態に対して時間をおかずに対応する点にポイントがあり、単に行動にかかるまでの所要時間が短いという意味ではありません。「片時も」との違いは「片時も」は後ろに打消しの表現を伴ってほんの短い時間も「…しない」という意味を表すという点です。

\次のページで「その2「至急」」を解説!/

その2「至急」

「至急」は時間をおかずに行動する様子を表します。「課長はしきゅうの用があってさっき出かけた」は名詞にかかる修飾語、「お父様にしきゅうにお目にかかりたいんですが」や「しきゅう御連絡いただきたい」は述語にかかる修飾語の用法行動をおこすにあたって切迫感の暗示があり単に短時間内に行動するという意味ではありませんまだ達成されていない未来のことについて用いることが多く、過去のことについてはふつう用いません。また「至急」は「早急」に似ていますが「早急」には切迫感の暗示はありません。ちなみに「片時」との違いは、「片時も」は後ろに打消しの表現を伴ってほんの短い時間も「…しない」という意味を表すという点です。

その3「即座」

「即座」は「教授は新しい本の企画にそくざに同意してくれた」や「この仕事にはそくざの判断が要求される」など時間をおかずに行動する様子を表しますふつう「即座に」の形で述語にかかる修飾語として用いられますが、名詞にかかる修飾語になることもありますよ。とても客観的な表現で特定の感情は暗示されていません。「即座に」は「すぐ」「ただちに」などに似ていますが「すぐ」よりも時間的に短い暗示がありますし、「ただちに」は切迫感の暗示があります。なお「片時」との違いは「片時も」は後ろに打消しの表現を伴ってほんの短い時間も「…しない」という意味を表すという点。

「片時」の対義語は?

「片時も」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「しきり」

「しきり」は間隔を置かずに何度も繰り返す様子を表します。「彼はデートに遅れたのを弁解することしきりだ」は「…することしきりだ」の形で述語になる用法、「暗いやぶの中でウグイスがしきりに鳴いている」は述語にかかる修飾語の用法で、名詞にかかる修飾語にはあまりなりません前者が基本的な用法で、間隔を置かずに何度も同じ行為や状態が繰り返される様子を表しますよ。「朝から雪がしきりに降っている」はこれから一歩進んで、動作や行為が継続する様子を表します。また「彼はさっきからしきりに考え込んでいるみたいだ」はさらに進んで、継続される動作に没頭している様子を表しますとても客観的な表現で特定の感情は暗示されていません

「しきりに」は「しばしば」「しょっちゅう」や「ひっきりなしに」などに似ていますが、「しばしば」は「しきりに」よりも頻度が低いですし、「しょっちゅう」は「しきりに」よりも頻度が高くしばしば慨嘆の暗示を伴います。そして「ひっきりなしに」は実際の行為がひんぱんに反復される様子を表しますよ。

その2「のべつ」

「のべつ」は動作や行為の頻度が非常に高い様子を表す副詞述語にかかる修飾語として用いられますややくだけた表現でかたい文章中には登場しません。「このディスクジョッキーはこんなにのべつまくなしにしゃべって、あごがくたびれないのかねえ」の「のべつまくなし」は「のべつ」を強調した表現で、まったく休みなく行為し続ける様子を表します。「あの夫婦はのべつ喧嘩ばかりしている」は非常に頻度が高い様子、「牛ってのべつ口を動かしてるんだね」は動作が継続する様子を表しますよ。

ふつうあまり好ましくない動作や行為の頻度が高かったり継続したりする場合に慨嘆の暗示を伴って用いられ、好ましい場合には用いられません。「のべつ」は「しょっちゅう」「四六時中」や「ひっきりなし」などに似ていますが、「しょっちゅう」は頻度についてだけでなく一般的な傾向を表す意味もありますし、「四六時中」は切れ目のない持続を誇張的に暗示します。そして「ひっきりなし」は実際の行為の頻度が非常に高くて切れ目がない様子を表し、一般的な傾向は表しません。

「片時」の英訳は?

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「片時」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「片時」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

\次のページで「「even for a moment」」を解説!/

「even for a moment」

「even for a moment」は「片時も、かた時も、片ときも、つかの間も、瞬時も」という意味です。「That fool can't look away for a moment」で「その愚者は片時も目を話せない」、「I can't forget you even for a moment」で「あなたのことは片時も忘れることができません」と書き表すことができますよ。

「片時」を使いこなそう

この記事では「片時も」の意味・使い方・類語などを説明しました。「片時も」は後ろに打消しの表現を伴ってほんの短い時間も「…しない」という意味を表す副詞「まったく」「ぜんぜん」という意味になり、否定を誇張するニュアンスがあると解説しましたね。後ろに打消しの表現を伴って打消しを強調する様子を表す「少しも」にも似ていますが、「少しも」はほんの少しの量もという量や程度の暗示がありますよ。参考にしてくださいね。

" /> 「片時」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「片時」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「片時」について解説する。
端的に言えば「片時」の意味は「一時の半分、わずかの間」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「片時」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「片時」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「片時」の意味は?

「片時」には、次のような意味があります。

ほんのしばらくの間。ちょっとの間。へんじ。「片時も目が離せない」

出典:コトバンク

「片時も」は後ろに打消しの表現を伴って、ほんの短い時間も「…しない」という意味を表します。結果的に「まったく」「ぜんぜん」などという全部否定の意味になりますが、否定を誇張するニュアンスがありますよ。

「片時」の語源は?

次に「片時」の語源を確認しておきましょう。残念ながら「片時」の語源ははっきりとはわかっていませんので、ここでは「片」と「時」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「片」は木を縦に半分切った右側の形を描いた字。半分にした木、つまり「きれはし」「かたわれ」を表します。また「時」は太陽をあらわす「日(ひへん)」とうつる意味の音を示す「寺」とを合わせた字。太陽が移動することから過ぎていくもの、つまり「とき」を表します。

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