その2「どこにでも」
「どこにでも」はすべての場所を許容する様子を表す副詞。「この程度の絵はどこにでもある」や「西洋タンポポは日本国中どこにでも咲いている」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。対象がありふれていて希少価値がないのですべての場所に存在するという意味ですが、存在場所を問題にするというよりは対象のなさを侮蔑的に表現するニュアンスで用いられますよ。「これはどこにでもある、ここにでもあるという品物じゃありません」がその典型的な例で、「どこにでもある、ここにでもある」で慣用的に用いられ、つまらないものではないという商品の品質について釈明する言葉です。
「学校はどこにでも行きたいところへ行けばよい」は進行するすべての方向を許容する場合。これも「どこに」と同様で到達点を問題にするニュアンスがあります。また「どこにでも」は「どこでも」にやや似ていますが、「どこでも」は任意の場所を表し場所を許容する暗示はありますが、対象を侮蔑する暗示はありません。後者の「どこにでも」は「どこへでも」に似ていますが、「どこへでも」は進行する方向を問題にするので放任の暗示がこもります。「至る所」との違いは「至る所」は該当する一つ一つの場所を確認したうえで述べるニュアンスがあるという点。
その3「どこへでも」
「どこへでも」は進行するすべての方向を許容する様子を表しますよ。「そんなに行きたけりゃ、アメリカでもどこへでも行っちまえ」や「忠実な犬は主人の行く所どこへでもついていく」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。また、進行方向を選ばない放任の暗示があるでしょう。「どこへでも」は「どこでも」や「どこにでも」に似ていますが、「どこでも」は任意の場所を表し方向の暗示はありませんし、「どこにでも」は到達点を問題にするニュアンスがあります。ちなみに「至る所」との違いは「至る所」は該当するすべての場所を表すという点でしょう。
「至る所」の対義語は?
「至る所」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
「ごく」
「ごく」は程度がはなはだしい様子を表します。「人気歌手の綾子も素顔はごく普通の女の子だ」や「ごく一部の政治家のために国民の政治への信頼が失われてしまった」などのように状態を表す語にかかる修飾語として用いられますよ。「ごくごく」は「ごく」をさらに強調した語。程度が極限に近い範囲にある様子を強調して表しますが、程度がはなはだしいこと自体については特定の感情は暗示されていません。また、極限に考えられるものの程度について用いられ、極限が存在しないものの程度についてはあまり用いられません。なお「ごく」は「きわめて」や「しごく」に似ていますが、「きわめて」はふつう名詞にかかる修飾語にはならず極限が存在しないものの程度についても用いられますし、「しごく」は文章語的で用法に制限があります。
「all over」
「all over」は「まったく終わって、そこいら中、いたるところ」という意味です。「All over New England, the situation was as it should be」で「ニューイングランドの至る所で事情はその通りであった」、「The dust was thick all over」で「ほこりが至る所に厚く積もっていた」と書き表すことができますよ。
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