
大衆文化が生れた背景は労働の機械化
ブルジョワ階級以外の人々が従事していたのは肉体労働。しかし、工場などが機械化されたことにより、時間的に余裕がある中流階級層が増えてきます。そのような人々は、仕事が休みの日になると、給料を使って余暇を楽しむように。その結果文化の担い手とみなされていなかった層が社会や経済に対して影響力を持つようになりました。
中産階級層が楽しんだのは、買い物、劇場、映画、飲食など。デパートやレストラン、アミューズメント施設などが至る所に立ち並びます。ジェットコースターのような刺激的な娯楽が増えてきたことも19世紀末の特徴。購買意欲を刺激するポスターやイルミネーションも出現するなど、大衆文化が形成されていきました。

商品の生産の機械化は資本主義の拡大と共にある。おそらく大衆文化とは資本主義とセットで考えたほうがいいだろう。パトロンが支援する芸術は資本主義とは無縁の世界だった。
大衆文化に影響を与えた複製技術とは?

大衆文化は、さまざまなジャンルにより形成されていますが、キーワードとなるのが複製技術。ひとつの創作物を複製して、無数の人々に発信できるようになったことで、同じような趣向を持つ大衆グループが出てきました。
複製技術について論じたヴァルター ・ベンヤミン
大衆文化について初めて本格的に論じたのがドイツの文化評論家であるヴァルター・ベンヤミン。1936年に著した「複製技術時代の芸術」は、現在の文化研究に今でも大きな影響を与えています。
「複製技術時代の芸術」で比較されたのはハイカルチャーとポピュラーカルチャー。ベンヤミンによると、絵画や音楽のような唯一無二の存在であるハイカルチャーは、芸術に高級感を与えてきました。しかしながら、写真や映画のように機械的に複製できるようになったことで、芸術の特権性がなくなったと考えます。
大衆文化のキーワードとなるアウラ
ハイカルチャーに属する作品は「今」「ここ」にしか存在しません。ベンヤミンは、この唯一無二のオリジナル性が作品に「アウラ」を与えると考えました。アウラとは簡単にいうと神秘的なもの。アウラをまとっているからこそ、その作品は特別なものとなりえたのです。
しかし、複製技術の発達により、作品のコピーを大量に生産できるようになりました。そのため、かつて芸術作品にあった唯一無二の性質は消滅。アウラが取り除かれたとこにより、これまでのような権威性はなくなるとベンヤミンは考えました。

とくに写真は文化の大衆化に大きな影響を与えた。すぐれた絵画を描ける人は限られている。しかし写真は機会だからアマチュアでもすばらしい作品を残せた。大衆文化はプロとアマチュアの境界線を消滅させたと言ってもいいだろう。
ショッピングも大衆文化のひとつ

19世紀末のヨーロッパやアメリカでは、余暇を楽しむ大衆をターゲットに、デパートやショッピングモールの先駆けとなるような場所が誕生。私たちにとっての日常の一部であるショッピングも大衆文化のひとつと言えます。
\次のページで「購買意欲を刺激するための文化が生まれる」を解説!/