この記事では「為になる」について解説する。

端的に言えば為になるの意味は「役立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「為になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「為になる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「為になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「為になる」の意味は?

「為になる」には、次のような意味があります。

役に立つ。利益になる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「為になる」

「為になる」は自分や大多数の人にとって役に立つこと、利益になることを意味します。そもそも「為」という漢字一字でその人やそのものの役に立つことを表しているのです。ただし「為」がなにかを達成する手段として使われる場合もあります。例えば「お金を稼ぐ為に働く」「いい大学に入る為に勉強する」などがそうした例です。これらは目前の問題を解決するときに使う表現と言えます。

「為になる」の語源は?

次に「為になる」の語源を確認しておきましょう。「為」一字で「あることに手を加えてうまく仕上げる」という意味があります。したがって「為」とは相手があなたのことを思って、好意的であるにせよ悪意があるにせよ、ある目的を達成するために「事を為す」ことです。ただし「為になる」に限れば相手があなたにとって利益になるように配慮する場面で使われます。

\次のページで「「為になる」の使い方・例文」を解説!/

「為になる」の使い方・例文

「為になる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.あの先生の授業は、おもしろいうえに為になるからいつも楽しみだ。
2.物事に前向きに取り組むことは時間がたつのも忘れるし、なにより自身が向上する為になる。
3.会社の為になる社員は手間暇を惜しまないし、何事も努力するから仕事のスキルも上達が早い。

「為になる」は自分や他人あるいは組織の利益になったり役立ったりする場合に使います。例えば「腹八分に医者いらず」ということわざは、食事を腹いっぱいになるほど食べずにほどほどにすることが健康の「為になる」という先人の知恵が詰まっているのです。ところで「為になる」によく似た言葉に「為にする」があります。ある目的に役立てようとする点は共通していますが「為にする」とは下心を持って事を行うことです。その点が「為になる」とは異なっています。

「為になる」の類義語は?違いは?

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ここでは「為になる」の類義語を見ていきましょう。何事に対してもメリットになることですから、その類義語もたくさんあります。

その1「勉強になる」

「勉強になる」は、その結果が自分の知識や経験になり、ひいては利益をもたらしてくれますから「為になる」の類義語と言えるでしょう。よく前座など新人の落語家が高座に上がる前に「勉強させていただきます」と言ったり、高座を終えたあとには「勉強させていただきました」と楽屋にいる師匠や先輩にあいさつするのは定番になっています。これも毎日の高座が自分の芸を磨くための勉強と捉えているわけです。

しかし春風亭昇太師匠はけっして「勉強させていただきます」とは言いませんでした。なぜならその言葉の裏には甘えがあると思ったからです。お客様からお金をいただいていながら「勉強させていただきます」と言ったのでは「今日は失敗してもいいか」との甘い考えが心の奥底にあることになります。それではお客様に失礼じゃないかと考えたところが師匠のプロ根性を感じさせるエピソードです。

\次のページで「その2「参考になる」」を解説!/

その2「参考になる」

「参考になる」も「為になる」の類義語です。ただし目上の人に対して使うときは注意しなければいけません。「参考になる」という言葉には、自分の意見は決まっているがあなたの意見も参考程度にするというニュアンスがあり、相手の取りようによっては大変失礼な言い方になるのです。より丁寧に言う場合は「勉強になりました」と言ったほうが無難でしょう。とはいうものの、口にするのは簡単ですが実行しなければなんにもなりません。「勉強になりました」という言葉が口先だけで終わらないよう実際に行動することが大切です。

その3「価値のある」

最後にもう一つ「為になる」の類義語を挙げておきましょう。それが「価値のある」です。例えばメディアではあらゆる方法で「価値のある」情報を探しています。「価値のある」情報は読者や視聴者の「為になる」ものであり、そうした情報を伝える手段は現代ではメディアが最も有効です。機会を逃さず私たちの「為になる」情報を伝えてくれるメディアは、非常に便利な手段だと言えます。

「為になる」の対義語は?

次に「為になる」の対義語を見ていきましょう。類義語の逆の言葉を考えればいいのですからそれほど難しくはないと思います。

その1「無益」

「為になる」が誰かの利益になることですから、対義語の一つとして「無益」が挙げられます。「無益」の対義語には「有益」がありますが、そもそも「有益」とは「為になる」ことですから、その対義語として「無益」も候補の一つに挙げていいでしょう。「無益」とは利益のないこと、無駄なことを指します。なお「無益」の類義語に「無用」がありますが、これは「必要がない」という意味ですから厳密には「為になる」の対義語とは言えません。あくまで「役に立たない」とか「利益がない」という場合に限定したときに「無益」は「為になる」の対義語となるのです。

その2「価値がない」

「価値がない」も「為になる」の対義語と言えるでしょう。なんの利益も生みださないことですから、まさに「為になる」の反対語としてふさわしいのではないでしょうか。なお「価値がない」の名詞「無価値」は「為になる」の対義語でもありますが、さらに刑法学では「負の方向に価値があること」つまり積極的に害を及ぼす有害性や危険性があることを意味します。

その3「値打ちがない」

最後に「為になる」の対義語として「値打ちがない」を挙げておきましょう。利益になることを表す言葉が「為になる」ですから、なんの利益ももたらさない「値打ちがない」状況は、まさに「為になる」の対義語としてふさわしいものです。たとえ高価な商品を買ったとしても、それがあなたを満足させなければ為にならず、お金を払っただけの「値打ちがない」ことになります。

\次のページで「「為になる」の英訳は?」を解説!/

「為になる」の英訳は?

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最後に「為になる」の英訳を見ていきましょう。いろいろな言い方がありますが、主なものを紹介します。

その1「useful」

まず挙げられるのが「useful」です。「有用な」とか「役に立つ」という意味がありますから、日本語の「為になる」の英訳と考えてもいいでしょう。「useful」の語尾を「ful」から「less」に変えると「役に立たない」とまったく反対の意味になります。この場合の「less」は前の動詞や名詞を否定する「~のない」「~しない」という接尾辞です。

その2「instructive」

「instructive」は「為になる」「有益な」という意味です。「instruct」が「指示する」「指図する」を表す動詞で、この単語から派生して「教える」という意味に変わり、さらにそれが「為になる」を表す「instructive」になりました。ちなみに「instruct」から派生した言葉の一つに「instructor」があり、これには「指導者」「教官」などの意味があります。日本語でも「インストラクター」と言えば誰でもご存じの言葉ではないでしょうか。

その3「edifying」

「edifying」も「為になる」の英訳です。ただ「edifying」は多分に教訓的な意味を含んでおり教育や宗教家の説教が「為になる」場合に使われます。このほか「salutary」や「to be good for」なども「為になる」の英語です。

「為になる」を使いこなそう

この記事では「為になる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「為になる」の類義語や対義語を挙げましたが、これらはほんの一部です。ほかにも様々な言葉があります。あなたも類義語や対義語を考えてみてください。

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国語言葉の意味

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端的に言えば為になるの意味は「役立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「為になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「為になる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「為になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「為になる」の意味は?

「為になる」には、次のような意味があります。

役に立つ。利益になる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「為になる」

「為になる」は自分や大多数の人にとって役に立つこと、利益になることを意味します。そもそも「為」という漢字一字でその人やそのものの役に立つことを表しているのです。ただし「為」がなにかを達成する手段として使われる場合もあります。例えば「お金を稼ぐ為に働く」「いい大学に入る為に勉強する」などがそうした例です。これらは目前の問題を解決するときに使う表現と言えます。

「為になる」の語源は?

次に「為になる」の語源を確認しておきましょう。「為」一字で「あることに手を加えてうまく仕上げる」という意味があります。したがって「為」とは相手があなたのことを思って、好意的であるにせよ悪意があるにせよ、ある目的を達成するために「事を為す」ことです。ただし「為になる」に限れば相手があなたにとって利益になるように配慮する場面で使われます。

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