この記事では「しゃくり上げる」について解説する。

端的に言えばしゃくり上げるの意味は「息を吸い込みながらひっくひっくと泣く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「しゃくり上げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「しゃくり上げる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「しゃくり上げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しゃくり上げる」の意味は?

「しゃくり上げる」には、次のような意味があります。

声や息を何度も激しく吸い上げるようにして泣く。
[文]しゃくりあ・ぐ

出典:デジタル大辞泉(小学館)「しゃくり上げる」

「しゃくり上げる」とは息を吸い込みながら泣くことです。子どもが泣くのを、「ひっく、ひっく」とか「うっぐ、えっぐ」などという擬声語であらわすことがありますよね。それがまさに「しゃくり上げる」です。しゃくり上げて息が苦しい感覚は、だれもが思い出せるのではないでしょうか。

また、「下から上へ動かす」という意味でも「しゃくり上げる」という言葉を使うことがあります。これは「しゃくる」に「上げる」がくっついた、複合動詞。「あごをしゃくり上げる」「しゃくり上げるようなスイングでは、球は遠くに飛ばない」などと使います。「しゃくる」の意味については、下に辞書からの引用を載せるので確認してください。

人気RPGゲーム「ファイナルファンタジー」にある「しゃくりあげる」という技は、下から上へと頭を突き上げる攻撃のことだそう。「下から上へ動かす」という意味での使い方も、日常によくなじんでいるといえます。

1.中がくぼむように、えぐる。
2.すくうようにして上げる。しゃくう。
3.あごを前に出して頭部をやや後ろに引く。
4.すくうようにして動かす。あやつる。
5.そそのかす。おだてる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「抉る(しゃくる)」

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「しゃくり上げる」の語源は?

次に「しゃくり上げる」の語源を確認します。上で引用した「抉る(しゃくる)」に注目しましょう。「しゃくる」には、「すくうように上へあげる」という意味のほかに「えぐる」という意味があります。そこから、お腹をえぐる(しゃくる)ように感じる「横隔膜のけいれん」を「しゃっくり」と呼ぶようになりました。

「しゃっくり」と「しゃくり上げる」が近いものであるのは、経験からも分かりますね。ひっくひっくとしゃくり上げたあとは、それがしゃっくりとなって残り、止まらなくなるもの。「しゃっくり」そして「しゃくり上げる」という言葉は、「えぐる」という意味の「抉る(しゃくる)」から来ているのです。

ちなみに「しゃくり上げる」を漢字で書くと「噦り上げる」。「噦」はとても難しい漢字ですが、「しゃっくり」や「むかつく」という意味があります。「むかつく」とは「吐き気がする」という意味です。

「しゃくり上げる」の使い方・例文

「しゃくり上げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.娘は、不機嫌な表情でずっとしゃくり上げている。この強情さは誰に似たんだろう。空腹の赤ん坊みたいに泣き叫ぶわけじゃないからまだいいけど、こんな泣き方をしているとしゃっくりが止まらなくなって、あとで苦しくなるのに。
2.今日もゴルフのトレーニングに行ってきたんだが、「上からボールをたたく」と意識しても、どうしてもしゃくり上げちゃうんだよな。インパクトのときに手首が返っているとアドバイスされたけれど、直し方が分からないよ。
3.ボイススクールのレッスンで、講師のかたから「しゃくり」という歌唱法を教わっているの。しゃくりをタイミングよく使えば、演歌が感情豊かな印象になるのよ。もちろんほかの曲にも効果があって、カラオケの採点もアップするって。お友だちに早く披露したいわ。

例文1の「しゃくり上げる」は「息を吸い込みながら泣く」という意味です。泣くのをやめようと思ってそうするのは、小さい子どもにはむずかしいですね。なぜ泣いていたのか分からなくなるくらいまで、ひっくひっくと泣き続けることもあります。

例文2の「しゃくり上げる」は「下から上へ動かす」という意味です。ゴルフのスイングでは、イメージしている動きと実際の動きが違っていることも多くあります。しゃくり上げるつもりでスイングしていなくても、ヘッド部分の動きとしてはしゃくり上げてしまっている、という状況です。

例文3の「しゃくり」とは、ある音を発声するときに出だしをその音より低く発声して、つなげるように音程をあげてその音を出す歌唱法のこと。「下から上へ動かす」という意味の「しゃくり上げる」から生まれた言葉でしょう。

「しゃくり上げる」の類義語は?違いは?

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「しゃくり上げる」の類義語には「泣きじゃくる」「すすり上げる」があります。

\次のページで「「泣きじゃくる」」を解説!/

「泣きじゃくる」

「泣きじゃくる」は、しゃくり上げながら泣くことです。「しゃくり上げる」にも「泣く」意味があるため、ほぼ同じ意味の言葉といえます。どちらも「ひっく、ひっく」とくり返し短く息を吸いながら、泣いている様子です。

違う点をあげるとすると、「泣きじゃくる」はまさに泣いているときに使うのに対し、「しゃくり上げる」は、もう涙が出終わったけれど「ひっく、ひっく」という息がまだ続いている状態もあらわせる点でしょうか。「あいつはまだ小さくしゃくり上げている」と使うと、もう泣き止んだけれど呼吸は完全にはもとに戻っていない状態だと分かります。

「すすり上げる」

「すすり上げる」とは、鼻水をすするために息を吸い上げながら泣くことです。子どもが泣きながら鼻水をすするときは、しゃくり上げるときと同じように苦しそうですよね。その苦しそうな様子が共通しているといえます。

似ている言葉の「すすり泣く」だと、少し大人の泣き方のイメージ。「すすり上げる」の場合は、ズズッと「息を吸い上げる」イメージから苦しそうな呼吸の様子が伝わります。やはり「しゃくり上げる」に似ているのは「すすり上げる」の方です。

「しゃくり上げる」の英訳は?

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「しゃくり上げる」の英訳には「sob convulsively」を使います。

「sob convulsively」

「sob」は「涙にむせぶ」「泣きじゃくる」という意味。「convulsively」は「けいれんをおこして」という意味です。つまり「sob convulsively」は「けいれんをおこすように泣きじゃくる」ということですね。まさに「しゃくり上げる」状態です。

「sob」は一緒に使う言葉により、いろいろな泣き方をあらわします。「しゃくり上げる」やその他の表現を例で見てみましょう。

My daughter was sobbing convulsively.
(娘はしゃくり上げていた。)

He sobbed bitterly.
(彼は激しくむせび泣いた。)

I was sobbing softly after he told me.
(彼が話したあと、私は静かに涙を流していた。)

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「しゃくり上げる」を使いこなそう

この記事では「しゃくり上げる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「しゃくり上げる」は「息を吸い込みながら泣く」という意味の言葉です。「しゃくる」と「上げる」の複合動詞である「しゃくり上げる」もあり、そちらの意味は「下から上へ動かす」となります。どちらもよく使う言葉です。

大人になってから、しゃくり上げるほどに泣いたことはあるでしょうか。泣くことはデトックスでもあります。悲しみも、感動も、思い切り吐き出してみるのが必要なときもあるでしょう。

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国語言葉の意味

「しゃくり上げる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「しゃくり上げる」について解説する。

端的に言えばしゃくり上げるの意味は「息を吸い込みながらひっくひっくと泣く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「しゃくり上げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「しゃくり上げる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「しゃくり上げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しゃくり上げる」の意味は?

「しゃくり上げる」には、次のような意味があります。

声や息を何度も激しく吸い上げるようにして泣く。
[文]しゃくりあ・ぐ

出典:デジタル大辞泉(小学館)「しゃくり上げる」

「しゃくり上げる」とは息を吸い込みながら泣くことです。子どもが泣くのを、「ひっく、ひっく」とか「うっぐ、えっぐ」などという擬声語であらわすことがありますよね。それがまさに「しゃくり上げる」です。しゃくり上げて息が苦しい感覚は、だれもが思い出せるのではないでしょうか。

また、「下から上へ動かす」という意味でも「しゃくり上げる」という言葉を使うことがあります。これは「しゃくる」に「上げる」がくっついた、複合動詞。「あごをしゃくり上げる」「しゃくり上げるようなスイングでは、球は遠くに飛ばない」などと使います。「しゃくる」の意味については、下に辞書からの引用を載せるので確認してください。

人気RPGゲーム「ファイナルファンタジー」にある「しゃくりあげる」という技は、下から上へと頭を突き上げる攻撃のことだそう。「下から上へ動かす」という意味での使い方も、日常によくなじんでいるといえます。

1.中がくぼむように、えぐる。
2.すくうようにして上げる。しゃくう。
3.あごを前に出して頭部をやや後ろに引く。
4.すくうようにして動かす。あやつる。
5.そそのかす。おだてる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「抉る(しゃくる)」

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