この記事では「拵える」について解説する。

端的に言えば拵えるの意味は「作り上げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「拵える」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「拵える」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「拵える」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「拵える」の意味は?

「拵える」には、次のような意味があります。

こさ・える〔こさへる〕【×拵える】
[動ア下一]《「こしらえる」の音変化》「こしらえる」の俗な言い方。

こしら・える〔こしらへる〕【×拵える】
[動ア下一][文]こしら・ふ[ハ下二]
1 ある材料を用いて、形の整ったものやある機能をもったものを作り上げる。また、結果として不本意なものを作ってしまう。
2 手を加えて、美しく見せるようにする。化粧したり衣装を整えたりして飾る。
3 工夫を巡らし、ないことをあるかのように見せかける。
4 手を尽くして、必要なものを整える。用意する。
5 友人・愛人などを作る。
6 なだめる。とりなす。
7 計画する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

拵える」と書いて「こさえる」とも「こしらえる」とも読むことができます。どちらで読んでも同じ意味にはなりますが、意味がずらりと並んでいることからもわかる通り、「拵える」はとても抽象的な表現で、その分柔軟に幅広く使うことのできる言葉です。

辞書の意味はかなり細かく分類されていますが、もっと大きく2つに分けて考えるとわかりやすくなります。1つは「あれこれ手を加えて思うようなものに仕上げる」といった意味で、辞書の意味で言うと1〜5、7はこちらの分類です。他にも「不本意な形で何かに傷や汚れを負わせてしまう」という意味でも用いられることもあるので、覚えておきましょう。もう1つは「ことばをもって相手をこちらの思うようにさせる」と言う意味で、辞書の意味の6はこちらに入り、その他にも「納得させる」「上手く言いくるめる」という意味で使われることもあります。

「拵える」の語源は?

次に「拵える」の語源を確認しておきましょう。ここでは漢字に注目して解説していきます。

」という漢字は「ソン」とも読むことがヒントとなるように、手偏と右側の「存(ソン)」という字が合わさった構成です。「存」は「存在」のように「そこにある」というような意味や、「つなぎとめる」「存在させる」といった意味があります。そこに手偏が加わった「拵える」は、手を加えて物がそこに「在る」状態するというところから、「仕上げる」「準備する」という主な意味を持つようになったと言えるでしょう。

\次のページで「「拵える」の使い方・例文」を解説!/

「拵える」の使い方・例文

「拵える」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.母は早起きして友達の分までお弁当を拵えてくれた。
2.姉はいつも何時間もかけて顔や身なりを拵えている。
3.口実を拵えて会社をサボってしまった。

意味が多い「拵える」ですが、今回はその中でも3つの意味での例文を用意しました。それぞれどのような意味で用いられるか、予想してみてください。

まず1は、「形あるものを作る」という意味で解釈ができます。食事や物、ビジネスシーンであれば企画書、報告書などの種類を対象にして使うことも可能です。2は、「美しく見せるようにする」という意味で使われています。洋服に関しては「スーツを拵える」のように、その日のためにわざわざいいものを用意することを指して使われることが多いです。最後の3は「ないことをあるかのように見せかける」という意味にあたります。簡単に言えば、「巧妙な嘘をつく」ということになりますね。

「拵える」の類義語は?違いは?

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次に、「拵える」と似ている意味の関連語をいくつか紹介していきます。

その1「作る」

ものを生み出したり、目的に従った形、状態にする」という意味で、この手の言葉の中では最も一般的で、かつ抽象的な表現だと言えるでしょう。「拵える」も、「作る」という言葉のくくりの中にあるとイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

「作る」にも色々あります。芸術作品などを作ることを指す「制作」や、機械や道具を使って物品を作る「製作」、「創作」のような「新しいものを初めて作り出す」ことなど、細かく分類していくことが可能です。「拵える」はその中でもまだ抽象的な表現ではありますが、「作り上げる」「美しく見せる」「見せかける」のように「目的に対する準備のためになにかを作る」というニュアンスだと考えるとわかりやすいでしょう。

\次のページで「その2「築く」」を解説!/

その2「築く」

きずく」と読み、「材料に手を加えて、新しい何かを作る・完成させる」という意味では、こちらも「拵える」や「作る」と共通した意味を持っていますが、この2語と比べるとより具体的な表現です。以下で詳しく見ていきましょう。

「築く」には2つの意味があります。1つは「建造物を作る」で、土や石で積み上げ固めて大きなものを作る、という意味です。「城を築く」「土台を築く」のように使用されます。もう1つは「ある行為を重ねてしっかりと安定したものをつくりだす」という意味で、こちらは地位、財産、国土、人間関係など、目に見えないものに対しても使う事が可能です。後者の意味は、「作る」に関連する言葉の中でも特徴的な意味ですので、ぜひ覚えておきましょう。

その3「仕立てる」

最後に「仕立てる」という言葉を紹介します。こちらも「拵える」と同じように「作る」という言葉の中の一つと捉えることが可能です。また「拵える」と同じように使うことができる意味を多くもっており、「材料に手を加えて物を作り上げる」「手を尽くしてそれらしく見えるものを作り上げる」などは、共通した意味になります。

「仕立てる」の特徴としては「教え込んで一人前にする」や「ある用向きのために乗り物を用意する」など、「作る」「拵える」などとは一線を画した独特の意味も持っていることです。また、「仕立てる」の場合は「作り上げる」の意味の場合は特に衣服を対象に用いられることが多くなります。

「拵える」の対義語は?

「拵える」の対義語にはどのような表現があるでしょうか。

拵えるの対義語は「壊す」

大きく捉えると「作り上げる」という意味になる「拵える」の対義語は、「壊す」などが挙げられるでしょう。意味は言うまでもないかもしれませんが、辞書には「力を加えて物の形を損なわせる」とあり、こちらを読むと「拵える」の対義語にふさわしい表現であることがよりわかりやすくなりますね。

「拵える」の英訳は?

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最後に「拵える」の英語表現について見ていきましょう。

拵えるは英語で「make」「prepare」

大きく捉えると「作り上げる」という意味になりますので、英訳する場合はまず「make」を真っ先に検討してみるといいでしょう。とはいえ何を作るかによって「make」がふさわしくない場合には、他の単語に置き換えていく必要があります。なかなか思いつかない、という場合には「prepare」という表現も便利です。「prepare」は「準備する」という意味で、「拵える」の持つ「準備」のニュアンスに沿った英訳に繋がります。

ただし「化粧をする」といった意味の場合には「put on ~ makeup」といった特別な表現が必要な場合があるので注意が必要です。以下に例文を用意しておりますので、合わせて参考にしてみてください。

\次のページで「「拵える」を使いこなそう」を解説!/

I had an overcoat made.
コートを拵えてもらった。

Prepare lunch for three.
三人分の昼食を拵えてほしい。

My sister is putting on her makeup.
姉は顔を拵えているところです。

「拵える」を使いこなそう

この記事では「拵える」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「こさえる」「こしらえる」という読み方を覚えるだけでもレベルアップできますね。意味については1つ1つ丸暗記することよりも「目的に対する準備のためになにかを作ること」というニュアンスを覚えておけば、柔軟に理解しやすくなるかと思います。この機会にぜひ理解しておきましょう。

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国語言葉の意味

「拵える」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説!

この記事では「拵える」について解説する。

端的に言えば拵えるの意味は「作り上げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「拵える」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「拵える」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「拵える」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「拵える」の意味は?

「拵える」には、次のような意味があります。

こさ・える〔こさへる〕【×拵える】
[動ア下一]《「こしらえる」の音変化》「こしらえる」の俗な言い方。

こしら・える〔こしらへる〕【×拵える】
[動ア下一][文]こしら・ふ[ハ下二]
1 ある材料を用いて、形の整ったものやある機能をもったものを作り上げる。また、結果として不本意なものを作ってしまう。
2 手を加えて、美しく見せるようにする。化粧したり衣装を整えたりして飾る。
3 工夫を巡らし、ないことをあるかのように見せかける。
4 手を尽くして、必要なものを整える。用意する。
5 友人・愛人などを作る。
6 なだめる。とりなす。
7 計画する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

拵える」と書いて「こさえる」とも「こしらえる」とも読むことができます。どちらで読んでも同じ意味にはなりますが、意味がずらりと並んでいることからもわかる通り、「拵える」はとても抽象的な表現で、その分柔軟に幅広く使うことのできる言葉です。

辞書の意味はかなり細かく分類されていますが、もっと大きく2つに分けて考えるとわかりやすくなります。1つは「あれこれ手を加えて思うようなものに仕上げる」といった意味で、辞書の意味で言うと1〜5、7はこちらの分類です。他にも「不本意な形で何かに傷や汚れを負わせてしまう」という意味でも用いられることもあるので、覚えておきましょう。もう1つは「ことばをもって相手をこちらの思うようにさせる」と言う意味で、辞書の意味の6はこちらに入り、その他にも「納得させる」「上手く言いくるめる」という意味で使われることもあります。

「拵える」の語源は?

次に「拵える」の語源を確認しておきましょう。ここでは漢字に注目して解説していきます。

」という漢字は「ソン」とも読むことがヒントとなるように、手偏と右側の「存(ソン)」という字が合わさった構成です。「存」は「存在」のように「そこにある」というような意味や、「つなぎとめる」「存在させる」といった意味があります。そこに手偏が加わった「拵える」は、手を加えて物がそこに「在る」状態するというところから、「仕上げる」「準備する」という主な意味を持つようになったと言えるでしょう。

\次のページで「「拵える」の使い方・例文」を解説!/

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