この記事では「完膚なきまで」について解説する。

端的に言えば完膚なきまでの意味は「徹底的に」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「完膚なきまで」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。息子達が小さい時でも、意見の相違がある場合には完膚なきまで相手を論破してしまったという彼女が「完膚なきまで」について解説する。

「完膚なきまで」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「完膚なきまで」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「完膚なきまで」の意味は?

「完膚なきまで」には、次のような意味があります。

1.無傷のところがないほど徹底的に。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「完膚なきまで」

これは我が家の長男が小学校の低学年だった時の話です。もし彼が「完膚なきまで」という言葉を使いこなせたら…多分こう言ったでしょう。「お父さんに完膚なきまで論破された!」

我が家の長男は友達が持っているものを欲しがり、直ぐに「買って、買って!」というタイプ。その日も父親に「買って、買って!」を連発していました。すると父親は「わかった。『それがどうしても必要なものだ』とお父さんを納得させることができたら、買ってやろう」と言ったのです。「ダメだ。買わないよ」と言われると思っていた長男は大喜び。

そしてそれから、父親を納得させるための想定問答を毎日私と繰り返し、遂に論争を挑んだのです。しかし、当然のことながら、小学校(しかも低学年)が父親に論争を挑んで勝てる訳がありません。論争が思いもしない方向に展開していく状況に「あれ…おかしいぞ…おかしいぞ」と慌てる長男。そして父親は我が子が小さいことなどお構いなく、徹底的に論破しました。

完膚なきまでに論破されてしまった長男。その後も懲りずに挑んでいきましたが、いつも返り討ちに。しかし、父親との論争は自分の考えを論理的に相手に伝える訓練になり、「世の中は甘くない」ということを実感することになったようです。

「完膚なきまで」の語源は?

次に「完膚なきまで」の語源を確認しておきましょう。

中国の唐の時代の正史に唐書があります。正史とは古代中国から明の時代までの各王朝が前の王朝の歴史書と認めたもの。その唐書の「劉迺伝」の中に「完膚なきまで」の由来があります。

完膚とは傷のない皮膚のこと。「劉迺伝」によると唐の忠士劉迺は「傷のない皮膚がなくなるまで」つまり「全身傷だらけになるまで徹底してお灸をすえられ、拷問にかけられても敵に寝返ることはなかった」と記されていて、これが「完膚なきまで」の語源となりました。

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「完膚なきまで」の使い方・例文

「完膚なきまで」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.カラーコンタクトを注意されたその生徒は「個性の尊重」という最近の社会の風潮を武器に先生に反論したが、完膚なきまで論破され、説教された。

2.平常心で試験に臨み、手ごたえがあったので「これで国家資格を手に入れた。無事に就職できる」と思っていたが結果は不合格で、私は完膚なきまでに打ちのめされた。

3.世間では「今回はチャンピオンの圧勝だろう」と言われていたが、実際には挑戦者が完膚なきまでにチャンピオンを打ち負かした。ボクシングの試合は終わってみなければわからないものだ。

「校則」をめぐって先生と生徒が論争するのは昔も今も変わりません。先生を完膚なきまで論破するのはかなり難しいこと。それよりも「校則という制限の中でいかに個性を光らせることができるか」を考えてみるのはどうでしょう。

「合格したと確信していたのに「不合格」。これは完膚なきまでに打ちのめされてしまいますね。我が家の次男の大学受験がこの状態でした。付き添って行った夫の話によると…受験を終えて入試会場から出て来た次男は自信満々。そのまま部屋探しに行ったそうです。ところが結果は不合格。かなり落ち込んだ次男はその後、学生マンションではなく予備校の寮へ。しかし、完膚なきまで打ちのめされた次男もここで「世の中は甘くない」ということを痛感し、「先々までしっかり考えるようになった」といいます。

スポーツの試合に於いて、番狂わせは珍しいことではありません。挑戦者は並々ならぬ努力をしてきたはずですよね。それに対してチャンピオンはどこかに油断があったのかもしれません。「完膚なきまで打ちのめされた」は日常生活でよく用いられる表現です。

「完膚なきまで」の類義語は?違いは?

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では「完膚なきまで」の類義語をみていきましょう。

「とことん」

「完膚なきまで」に続く言葉を考えてみましょう。「完膚なきまで打ちのめす」「ー叩き潰す」「ー論破する」…相手をねじ伏せる単語が続きますね。それに対して「とことん」はどうでしょうか。「とことん褒める」「とことん話し合う」「とことん頑張る」…「完膚なきまで」という表現よりも広い範囲で用いられていることがわかります。

「完膚なきまで」と「とことん」は共に「徹底的に」という意味合いを表現する言葉ですが、このような違いがあるのです。

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「完膚なきまで」の対義語は?

続いて対義語です。

「微温的」(びおんてき)

「微温的」とは「徹底していないこと」「手ぬるいこと」「中途半端なこと」です。あまり聞きなれない言葉ですが、「微温」は「微温い」と書いて「ぬるい」、「微温湯」と書いて「ぬるまゆ」と読みます。こちらの「微温い」「微温湯」はよく使う言葉ですね。

「そんな微温的な対応では相手に誤解を与える」(そんな中途半端な対応をしては、相手が誤解してしまう)、「微温的な調査では正確な結果を得ることができない」(徹底していない調査では正確な結果を手に入れることができない)というような用いられ方をします。

「完膚なきまで」の英訳は?

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「完膚なきまで」は英語でどのように表現されるのでしょうか。

英文1.  At this year's ordinary session of the Diet in Japan, the politician was thoroughly criticized by the opposition, saying, "Your act was a problem."

日本の今年の通常国会で、その政治家は「あなたの行為は問題だった」と野党から完膚なきまで批判された。

英文2.  "Please get married," he told her.But he got totally by her in front of his friends,and so his self-esteem was very hurt.

「結婚して下さい」と彼は彼女に言った。しかし、友達の前で完膚なきまでに振られてしまったので彼の自尊心は大変傷ついた。

英文1「the politician was thoroughly criticized」 の直訳は「その政治家は徹底的に批判された」。なので 「was thoroughly criticized」は日本語に訳すと「完膚なきまで批判された」と表現されます。

英文2「got totally dumped」が「完膚なきまでに振られる」という表現。got totally dumped」は「完全に捨てられた」という意味なので「完膚なきまでに振られる」と訳される訳ですね。

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「完膚なきまで」を使いこなそう

この記事では「完膚なきまで」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「完膚なきまで」は「無傷のところがないほど徹底的に」という意味。類義語には「とことん」、対義語には「微温的」という言葉があり、英語では「thoroughly」「totally」と表現すること等がわかりましたね。

この言葉を使った後には「完膚なきまでに叩きのめされたけど、そのお陰で学んだことも多かったよ」と言いたいですね。

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国語言葉の意味

【故事成語】「完膚無きまで」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「完膚なきまで」の使い方・例文

「完膚なきまで」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.カラーコンタクトを注意されたその生徒は「個性の尊重」という最近の社会の風潮を武器に先生に反論したが、完膚なきまで論破され、説教された。

2.平常心で試験に臨み、手ごたえがあったので「これで国家資格を手に入れた。無事に就職できる」と思っていたが結果は不合格で、私は完膚なきまでに打ちのめされた。

3.世間では「今回はチャンピオンの圧勝だろう」と言われていたが、実際には挑戦者が完膚なきまでにチャンピオンを打ち負かした。ボクシングの試合は終わってみなければわからないものだ。

「校則」をめぐって先生と生徒が論争するのは昔も今も変わりません。先生を完膚なきまで論破するのはかなり難しいこと。それよりも「校則という制限の中でいかに個性を光らせることができるか」を考えてみるのはどうでしょう。

「合格したと確信していたのに「不合格」。これは完膚なきまでに打ちのめされてしまいますね。我が家の次男の大学受験がこの状態でした。付き添って行った夫の話によると…受験を終えて入試会場から出て来た次男は自信満々。そのまま部屋探しに行ったそうです。ところが結果は不合格。かなり落ち込んだ次男はその後、学生マンションではなく予備校の寮へ。しかし、完膚なきまで打ちのめされた次男もここで「世の中は甘くない」ということを痛感し、「先々までしっかり考えるようになった」といいます。

スポーツの試合に於いて、番狂わせは珍しいことではありません。挑戦者は並々ならぬ努力をしてきたはずですよね。それに対してチャンピオンはどこかに油断があったのかもしれません。「完膚なきまで打ちのめされた」は日常生活でよく用いられる表現です。

「完膚なきまで」の類義語は?違いは?

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では「完膚なきまで」の類義語をみていきましょう。

「とことん」

「完膚なきまで」に続く言葉を考えてみましょう。「完膚なきまで打ちのめす」「ー叩き潰す」「ー論破する」…相手をねじ伏せる単語が続きますね。それに対して「とことん」はどうでしょうか。「とことん褒める」「とことん話し合う」「とことん頑張る」…「完膚なきまで」という表現よりも広い範囲で用いられていることがわかります。

「完膚なきまで」と「とことん」は共に「徹底的に」という意味合いを表現する言葉ですが、このような違いがあるのです。

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