この記事では「うっそり」について解説する。

端的に言えばうっそりの意味は「ぼんやりしている様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「うっそり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「うっそり」の意味や語源・使い方まとめ

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うっそり」という表現は聞いたことがありますか?「うっとり」と見間違えそうになりますが、まったく別の言葉です。小説に登場することが多い「うっそり」を、意味や語源・使い方まで見ていきましょう。今までは前後の文章から何となく理解したつもりになっていたり、読み飛ばしてしまっていたりした「うっそり」を、情景に合わせて丁寧に読み解くようになれますよ。

「うっそり」の意味は?

「うっそり」には、次のような意味があります。

1.心を奪われてぼうっとしているさま。
2.ぼんやりしていること。うっかりしていること。また、そのさまや、そういう人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「うっそり」

「うっそり」とは何か気になることがあり、そちらに注意を奪われてぼうっとしている様子を表します。またうっかりした不注意をする人や、ぼんやりしていて捉えどころのない人を表現するのにも使う表現です。

「うっそりと」と使う場合の「うっそり」は副詞、「うっそりな」という表現は形容動詞で、形容動詞としてつかわれる「うっそり」のほうが、やや古い言葉になります。

「うっそり」の語源は?

次に「うっそり」の語源を確認しておきましょう。

「うっそり」の語源については諸説ありますが、近世の方言だったという説があります。上方(京都や大阪)では「うっかりしている様子、うっかり者」という意味で使われていました。また中部・近畿地方では「不注意なこと、ぼんやりしている人」という意味で使われていたようです。元々は方言だったものが、全国に広がり使われるようになったというのは、面白い事例ですね。

\次のページで「「うっそり」の使い方・例文」を解説!/

「うっそり」の使い方・例文

「うっそり」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ふと堤防に目をやると、女性がうっそりした様子で立っているのが見えた。
2.「おい、君!」講義中にうっそりした表情でいる学生に、私は何度も声をかけたが返事が戻ってくることはなかった。
3.木枯らしが吹く本当に寒い日だったのに、その人は浮世離れした様子でうっそりと歩いて行った。

「うっそり」は「何かに心を奪われてぼうっとしている」、「ぼんやりしている」という様子を表していましたね。気持ちがここになく、どこか非現実的な存在という印象も相手に与える言葉です。

例文1は堤防に「うっそりした」女性が立っているのが見えたのですね。何かに注意を奪われた様子で遠くを見つめていたのでしょう。

例文2は大学の先生が講義中に「うっそりした」学生に声をかけています。授業中のよそ見は良くあることかもしれませんが、この学生は先生が何度声をかけても気づかなかったのですね。それだけ気になることがあったということが分かります。

例文3は本当に寒い日なのに、その人の周りだけ温度がなくなったように感じさせるほど「うっそりと」、つまり気温よりもっと気になることがある様子で歩いて行った、という意味です。

「うっそり」の類義語は?違いは?

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「うっそり」の類義語を見てみましょう。同じ意味を持つ別の表現を知ることで、「うっそり」への理解が一層深まりますよ。

その1「心ここにあらず」

心ここにあらず」とは、「心が他のことにとらわれて、当面のことに心を集中できない」という意味です。まさに「うっそり」の「心を奪われて、思わずぼうっとしてしまう」と同義ですね。「うっそり」と入れ替えて使える表現です。

\次のページで「その2「虜になる」」を解説!/

その2「虜になる」

虜(とりこ)になる」とは「ある対象に心を奪われ、離れられない思いになること」という意味です。「うっそり」した状態が、何かの魅力に取り付かれていることによる場合に使える類義語表現になります。

その3「粗忽」

粗忽(そこつ)」とは「軽率で不注意なこと。そそっかしいこと」という意味です。また不注意に伴って発生したミスやあやまちも指すことができます。「うっそり」の「不注意によりぼうっとしている」という意味の類義語と言えますね。

「うっそり」の対義語は?

「うっそり」の対義語になる表現にはどのようなものがあるでしょうか。いくつか見てみましょう。

その1「集中している」

集中している」という表現は「うっそり」の対義語になりますね。「うっそり」が「心を奪われぼうっとしている」さまに対し、「集中している」とは「特定の対象に関心が集まっている」ことを指します。

その2「注意深い」

注意深い」も「うっそり」の対義表現になります。「うっそり」の2つ目の意味である「注意が不足してそそっかしい」と対義になる言葉ですね。「注意深い」は「ものごとによく気を配り、慎重で念入りだ」という意味です。

「うっそり」の英訳は?

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「うっそり」した様子は世界共通ですよね。では「うっそり」を英語で表現するとどのようになるのでしょうか?

\次のページで「その1「vacantly」」を解説!/

その1「vacantly」

vacantly」は「ぼんやり」と訳される英単語です。「vacant」が「空っぽ、空いている」という意味なので、注意力がおろそかになっているというニュアンスで使われます。まさに「うっそり」ですね。

その2「absent-mindedly」

少々長い表現ですが「absent-mindedly」も「うっそり」の英訳として使えます。こちらも「ぼんやり」と訳されますが、「absent」は「留守、不在」、「mind」は「思い、意識」です。つまり「自分の意識がお留守になっている」という意味を表しています。

その3「carelessly」

「うっそり」の「不注意、そそっかしい」という意味を英語にすると「carelessly」となります。「care」が「注意」、「less」は「少ない、ない」という意味で、2つが合わさることで「注意不足」という意味です。

「うっそり」を使いこなそう

この記事では「うっそり」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日常生活でも「うっそり」してしまう場面というのは良くあるものです。心を奪われている対象が思いがけず美しいものや、好きな人といったポジティブなものばかりならいいのですが、何か心配事があって目の前のことが手につかないというのでは困りますね。「うっそり」した様子の人がいたら、様子をうかがいながら気になるようなら声をかけてあげた方が良いかもしれません。

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国語言葉の意味

「うっそり」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「うっそり」について解説する。

端的に言えばうっそりの意味は「ぼんやりしている様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「うっそり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「うっそり」の意味や語源・使い方まとめ

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うっそり」という表現は聞いたことがありますか?「うっとり」と見間違えそうになりますが、まったく別の言葉です。小説に登場することが多い「うっそり」を、意味や語源・使い方まで見ていきましょう。今までは前後の文章から何となく理解したつもりになっていたり、読み飛ばしてしまっていたりした「うっそり」を、情景に合わせて丁寧に読み解くようになれますよ。

「うっそり」の意味は?

「うっそり」には、次のような意味があります。

1.心を奪われてぼうっとしているさま。
2.ぼんやりしていること。うっかりしていること。また、そのさまや、そういう人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「うっそり」

「うっそり」とは何か気になることがあり、そちらに注意を奪われてぼうっとしている様子を表します。またうっかりした不注意をする人や、ぼんやりしていて捉えどころのない人を表現するのにも使う表現です。

「うっそりと」と使う場合の「うっそり」は副詞、「うっそりな」という表現は形容動詞で、形容動詞としてつかわれる「うっそり」のほうが、やや古い言葉になります。

「うっそり」の語源は?

次に「うっそり」の語源を確認しておきましょう。

「うっそり」の語源については諸説ありますが、近世の方言だったという説があります。上方(京都や大阪)では「うっかりしている様子、うっかり者」という意味で使われていました。また中部・近畿地方では「不注意なこと、ぼんやりしている人」という意味で使われていたようです。元々は方言だったものが、全国に広がり使われるようになったというのは、面白い事例ですね。

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