この記事では「目配(めくば)せ」について解説する。
端的に言えば、目配せの意味は「視線やまばたきで合図すること」です。「目配り」とは一字違うだけですが、その意味や違いを説明できるか。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「目配せ」の意味を確認し「目配り」との違いを調べるぞ。語源や例文、類義語なども見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「目配せ」の意味と「目配り」との違い

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はじめに「目配せ」の意味を押さえておきましょう。語源や「目配り」との違いについても解説しますよ。意味がわかったら、例文で使い方を見ていきましょう。

「目配せ」の意味

調べなくても意味はわかるという方もいらっしゃるかもしれませんが、国語辞典で「目配せ」の意味を確認しておきましょう。

目を動かして、意志を伝えたり合図をしたりすること。めくわせ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「目配せ」

「目配せ」とは「目を動かして意志を伝えること、目つきで合図をすること」です。「目配せ」という言葉は、辞書によっては「眴(めくば)せ」という表記が載っていることがあります。「眴(シュン)」の文字には「まばたきする」「目くばせする」という意味がありますよ。語釈をみると「めくわせ」とも書いてありますね。これは語源とも関係があります。次の項で語源について説明しましょう。

「目配せ」の語源は「めくはす」?

古語辞典を見ると「めくはす」という言葉が載っています。

目くばせをする。
 出典『源氏物語』「若菜上」
「『あな、かたはらいた』とめくはすれど、聞きも入れず」
[訳]「ああ、みっともないと」と目くばせをするけれど、聞き入れもしない。

出典:学研全訳古語辞典「めくはす」

\次のページで「意味も成り立ちも違う「目配せ」と「目配り」」を解説!/

「目(め)くはす」「目配せをする」「目つきで知らせる」という意味で、源氏物語でも使われているのがわかります。「めくはす」と「めくはせ(めくわせ)」は、江戸時代には「めくばす」「めくばせ」に変化していきました。元は、まばたきするとき上下のまぶたを合わせることを「目食わせ」といっていたのが、のちに「めくばせ」と発音するようになり、「配」の字があてられたのです。

意味も成り立ちも違う「目配せ」と「目配り」

「目配せ」と「目配り」は一字しか違いがありませんが、意味はどのように異なるのでしょうか。「目配り」の「目」には「見ること」「注意力」「洞察力」という意味があり、「配る」には「あちらこちらへと行き渡らせる」という意味があります。

「目配り」は「目を配ること」、つまり「いろいろなところに注意を行き届かせる」ことを表現していますよ。「目配せ」とは、意味も成り立ちも違っていることがお分かりいただけたでしょうか。

「目配せ」の使い方

例文で「目配せ」の使い方を見ていきましょう。

1.授業中、ノートの端にパラパラ漫画を描いていたら、ヤマダ君が目配せしてきた。ふと後ろを見たら先生が立っていた。
2.会議中、議長役のスズキさんが目配せしてきた。誰も意見を出さないので口火を切れということらしい。

最初の例文は、授業中にほかごとをしていたら先生が背後にいて、ヤマダ君がそれを目で合図して教えてくれたという意味です。2番目の例文は、会議で議論が活発にならないので、議長のスズキさんが意見を言ってほしいと目で伝えてきたという意味ですね。目配せは、言葉を使って伝えられないときに意志や気持ちを伝える手段ですよ。

「目配せ」の類義語

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「目配せ」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

\次のページで「「目遣(めづか)い」:目で合図すること」を解説!/

「目遣(めづか)い」:目で合図すること

「目遣い」「目で合図すること」と「物を見るときの目の動かし方」という意味があります。「彼がいることを目遣いで知らせる」という使い方をしますよ。ちなみに「上目遣(うわめづか)い」は、「顔は動かさないで、目だけを上に向けて相手を見ること」です。

「目引き袖ひき」:声を出さずに自分の意志を相手に伝える

「目引き袖引き」「めひきそでひき」と読みます。意味は「声を出さずに、目で合図したり袖を引いたりすることで、自分の意志を相手に伝えること」です。似た言葉で「目引き鼻引き」もあります。こちらは「目付きや鼻先で合図して、自分の意志を相手に伝えること」ですよ。

「アイコンタクト」:目で合図する

「アイコンタクト」は「人同士が話をしているときに目と目を合わせること」を意味しており、言葉以外のコミュニケーション方法のひとつです。特にスポーツでは、「目と目で合図を送って意志疎通すること」を指しています。

例えば球技で、ボールを持っていない選手がパスを欲しいときにボールを持っている選手に目で意志を伝えたり、ボールを持っている選手が持っていない選手にパスを送ることを視線で伝えようとしたりすることです。

「目配せ」の英訳は?

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英語では「目配せ」をどのように表現するか見ていきましょう。

「wink」:目配せ

「winkは名詞では「まばたき」「目配せ」、動詞では「まばたきする」「ウインクする」「(光が)高速に点滅する」「(星が)きらめく」という意味です。

A nod is as good as a wink to a blind horse.
盲馬にはうなずいても目配せしても同じことだ。

\次のページで「「exchange glances」:視線を交わす」を解説!/

「A nod is as good as a wink to a blind horse.」は英語のことわざです。目の見えない馬に、うなずいても目配せしても通じませんね。日本のことわざでいうと「馬の耳に念仏」といったところでしょう。

「exchange glances」:視線を交わす

「exchange glances「視線を交わす」という意味です。

She shook hands with him, without exchanging glances.
彼女は彼と握手したが視線を交わさなかった。

「exchange」は「取り交わす」「やり取りする」、「glance」は「ちらっと見る」「一瞥」という意味です。exchange meaningful glancesは「意味ありげに見かわす」、「at a glance」は「ひと目見ただけで」「一見して」という意味ですよ。

「目配せ」を使いこなそう!

この記事では「目配せ」の意味を調べ、「目配り」との違いや使い方、類義語などを解説しました。

「目配せ」とは「目を動かして意志を伝えること、目つきで合図をすること」です。元は、目つきで知らせることを「めくはす」「めくわせ」と言っていたのが「めくばす」「めくばせ」に変化して「目配せ」の字があてられました。「目配り」「いろいろなところに注意を行き届かせる」という意味です。

「目配せ」も「目配り」も見た目はそっくりですが、成り立ちも意味も違います。どちらも自由自在に使いこなせるようになってくださいね。

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国語言葉の意味

「目配せ」は「目配り」と何が違う?意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員が解説

「目(め)くはす」「目配せをする」「目つきで知らせる」という意味で、源氏物語でも使われているのがわかります。「めくはす」と「めくはせ(めくわせ)」は、江戸時代には「めくばす」「めくばせ」に変化していきました。元は、まばたきするとき上下のまぶたを合わせることを「目食わせ」といっていたのが、のちに「めくばせ」と発音するようになり、「配」の字があてられたのです。

意味も成り立ちも違う「目配せ」と「目配り」

「目配せ」と「目配り」は一字しか違いがありませんが、意味はどのように異なるのでしょうか。「目配り」の「目」には「見ること」「注意力」「洞察力」という意味があり、「配る」には「あちらこちらへと行き渡らせる」という意味があります。

「目配り」は「目を配ること」、つまり「いろいろなところに注意を行き届かせる」ことを表現していますよ。「目配せ」とは、意味も成り立ちも違っていることがお分かりいただけたでしょうか。

「目配せ」の使い方

例文で「目配せ」の使い方を見ていきましょう。

1.授業中、ノートの端にパラパラ漫画を描いていたら、ヤマダ君が目配せしてきた。ふと後ろを見たら先生が立っていた。
2.会議中、議長役のスズキさんが目配せしてきた。誰も意見を出さないので口火を切れということらしい。

最初の例文は、授業中にほかごとをしていたら先生が背後にいて、ヤマダ君がそれを目で合図して教えてくれたという意味です。2番目の例文は、会議で議論が活発にならないので、議長のスズキさんが意見を言ってほしいと目で伝えてきたという意味ですね。目配せは、言葉を使って伝えられないときに意志や気持ちを伝える手段ですよ。

「目配せ」の類義語

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「目配せ」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

\次のページで「「目遣(めづか)い」:目で合図すること」を解説!/

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