この記事では「肩入れ」について解説する。

端的に言えば肩入れの意味は「支援すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「肩入れ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「肩入れ」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 60015033

それでは早速「肩入れ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肩入れ」の意味は?

「肩入れ」には、次のような意味があります。

かた‐いれ【肩入れ】
[名](スル)

1 ひいきすること。力を貸すこと。支援。

2 着物の肩の部分を別の布で、はぎ合わせること。また、その布。肩当て。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

肩入れする」といった形でよく用いられ、聞いたことがあるという方も多いかもしれません。ただ「力を貸す」「支援する」という意味だけではなく、「特定の人への偏った支援」を指す「ひいきする」というようなニュアンスで使用されるのが一般的です。また、2のような限定的な意味も含まれているので、合わせて知っておきましょう。

「肩入れ」の語源は?

次に「肩入れ」の語源を確認しておきましょう。一般的に「肩入れ」の語源と言われているのが、一昔前の労働中の動作にあります。

畑仕事や農作業をして働く人々の姿をイメージしてみてください。二人組が肩に長い棒を乗せ、その棒に荷物をかけて運んでいる様子が頭に浮かびませんでしょうか。実際に見たことがなくとも、教科書やテレビなどで一度は目にしたことがあるかと思います。昔はあのように棒を使って、協力して重いものを運んでいました。

では次に、そうして荷物を運ぶ二人が「お願い、重たいから誰か手伝ってくれ」と、道中で周りの人に声をかけたとします。周りの人たちは、どのように二人を加勢するでしょうか。もちろん、棒の下に「肩を入れて」一緒に荷物を持ちますよね。この「肩入れ」という言葉は、まさにこのような動作から「手伝う」という意味で使われるようになったと言われています。

\次のページで「「肩入れ」の使い方・例文」を解説!/

「肩入れ」の使い方・例文

「肩入れ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.上司は有利な情報を彼に提供するなどして、肩入れをしている。
2.特定の子ばかり応援して、肩入れする担任の先生の行動は目に余る。
3.彼の組織に対する異常な肩入れ行為には、何か目的があるようだ。

もともとは「手助けする」という意味だった「肩入れ」ですが、今では「特定の人への偏った支援」というニュアンスで使われることが主流になりました。そのため、ただ「助ける」「お手伝いする」という意味ではなく、例文のように「人が行なっている支援をひいきだと感じる」というような場合に使うことが多いです。

逆に「助ける」「支援する」という純粋な意味で使うと、意図しない方向で意味が伝わってしまうかもしれません。紛らわしい表現は避けた方がいいでしょう。

「肩入れ」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 33526474

次に、「肩入れ」と似ている意味の関連語をいくつか紹介していきます。

その1「贔屓(ひいき)」

ここまでも何度か登場した「贔屓(ひいき)」という表現です。「気に入った者に特別に目をかけ、力添えして助けること」を指し、「肩入れ」の批判を含んだニュアンスは、まさにこの「ひいき」という表現で説明することができます。

違いとしては、「肩入れ」には単に「支援する」という意味も含まれているのに対し、「贔屓」は「気に入った者だけに特別に目をかける」という場合にしか使われません。また、「贔屓」には「贔屓贔屓(ひいきびいき)」「依怙贔屓(えこひいき)」「贔屓目(ひいきめ)」などの派生後が多く存在します。機会があればぜひ調べてみてください。

\次のページで「その2「後押し」」を解説!/

その2「後押し」

次に「後押し」という言葉です。「荷車を後ろから押すこと」から転じて「助力すること」「後援すること」という意味も持つようになりました。「支援する」と言う意味の「肩入れ」と似た意味の類義語として挙げられます。

詳しく比較すると、「後押し」には「肩入れ」のように「ひいき」のニュアンスが含まれないことが違いとして挙げられる点です。文脈によっては「肩入れ」と言い換えることができない場合がありますので、注意しましょう。

その3「後ろ盾」

「後楯」「後盾」などと表記されることもあります。「陰にあって助けたり、守ったりすること」を指す言葉です。背後を防ぐために盾となるものから転じて、「後援」「援助者」といった意味を持つようになりました。後者の意味で「肩入れ」と意味が類似しています。また、いい意味でも少し影のあるニュアンスでも使えるというのも「肩入れ」との共通点です。

細かい違いとしては、「肩入れ」はどちらかといえば直接的な支援を指し、「後ろ盾」は「後方支援」や「裏で支える、支持する」というニュアンスになる点にあります。「背後を守る盾」というイメージを持っているとわかりやすいでしょう。

ちなみに「後ろ盾」に似た表現として「尻押し(尻おし)」「うしろ押し」といった言葉もあります。機会があれば調べてみてください。

「肩入れ」の対義語は?

次に、「肩入れ」の対義語について見ていきましょう。ここでは「ひいきすること」という意味から考えていきます。

肩入れの対義語「公平」

「特定の人だけを支援する」という意味での「肩入れ」の対義語として、「公平」という言葉が挙げられます。「公平」は「かたよらず、えこひいきのないこと」という意味で、まさに対義語にふさわしいと言えるでしょう。

「肩入れ」の英訳は?

image by PIXTA / 65975022

最後に、「肩入れ」の英語表現について解説していきます。

肩入れは英語で「support」

カタカナ語としても馴染みのある「support」という単語が挙げられます。広い意味で「支える」という意味を指し、「物が倒れないように支える」という意味から、「人や組織を支援する」という意味まで使うことが可能です。文脈によっては「ひいき」というニュアンスにもなりうるので、「肩入れ」の英訳としてはピッタリの表現になります。また、動詞としても名詞としても使用可能です。

他の表現としては「backing」という名詞表現もあります。こちらは「back」という単語から連想されるように、「後援」という意味で訳されますが、同義の「肩入れ」という言葉の英訳として使うこともできるでしょう。

以下に例文を用意しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

\次のページで「「肩入れ」を使いこなそう」を解説!/

The union is supporting this candidate.
組合はこの候補者に肩入れをしている。

His group gets a backing .
彼のグループは肩入れを受けている。

「肩入れ」を使いこなそう

この記事では「肩入れ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

一般的には「ひいきすること」という意味で用いられることが多い表現です。「ひいき」という表現も、常に悪い意味になるわけではありませんが、「肩入れ」は「偏った支援」というニュアンスで、批判的な表現の中で用いられることが多くなっています。使い方や前後の文脈に注意しながら、正しく使いこなせるようにしましょう。

" /> 「肩入れ」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「肩入れ」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説!

この記事では「肩入れ」について解説する。

端的に言えば肩入れの意味は「支援すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「肩入れ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「肩入れ」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 60015033

それでは早速「肩入れ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肩入れ」の意味は?

「肩入れ」には、次のような意味があります。

かた‐いれ【肩入れ】
[名](スル)

1 ひいきすること。力を貸すこと。支援。

2 着物の肩の部分を別の布で、はぎ合わせること。また、その布。肩当て。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

肩入れする」といった形でよく用いられ、聞いたことがあるという方も多いかもしれません。ただ「力を貸す」「支援する」という意味だけではなく、「特定の人への偏った支援」を指す「ひいきする」というようなニュアンスで使用されるのが一般的です。また、2のような限定的な意味も含まれているので、合わせて知っておきましょう。

「肩入れ」の語源は?

次に「肩入れ」の語源を確認しておきましょう。一般的に「肩入れ」の語源と言われているのが、一昔前の労働中の動作にあります。

畑仕事や農作業をして働く人々の姿をイメージしてみてください。二人組が肩に長い棒を乗せ、その棒に荷物をかけて運んでいる様子が頭に浮かびませんでしょうか。実際に見たことがなくとも、教科書やテレビなどで一度は目にしたことがあるかと思います。昔はあのように棒を使って、協力して重いものを運んでいました。

では次に、そうして荷物を運ぶ二人が「お願い、重たいから誰か手伝ってくれ」と、道中で周りの人に声をかけたとします。周りの人たちは、どのように二人を加勢するでしょうか。もちろん、棒の下に「肩を入れて」一緒に荷物を持ちますよね。この「肩入れ」という言葉は、まさにこのような動作から「手伝う」という意味で使われるようになったと言われています。

\次のページで「「肩入れ」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: