

端的に言えば怒り心頭に発するの意味は「激しく怒る」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は難関私大の文学部を卒業し、表現技法にも造詣が深い十木陽来を呼んだ。一緒に「怒り心頭に発する」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/十木陽来
難関私大の文学部卒ライター。現代文芸の表現技法を学びながら趣味で小説を書いたりもしてきた。その知識を使って様々な言葉の意味をわかりやすく丁寧に解説する記事を書いている。
「怒り心頭に発する」の意味や語源・使い方まとめ

皆さんは「怒り心頭に発する」を正しく使えていますか? 「怒り心頭に達する」と言っている方も非常に多く見受けられますが、実はこれは誤用なんです。「怒り心頭に発する」は間違えて使っている人が非常に多い慣用句であるといわれています。今日はこの記事を読むことで正しい意味と使い方を理解し、日常で活用してもらえると幸いです。
それでは早速「怒り心頭に発する」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
「怒り心頭に発する」の意味は?
「怒り心頭に発する」は「怒り心頭に達する」と間違えている人が多いと先ほど述べましたが、この慣用句はどういった意味を持つのでしょうか。辞書を紐解いてみると、次のような意味が書かれていました。
激しく怒る。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「怒り心頭に発する」
意味だけを見ると、実に単純ですね。ただ単に怒るだけでなく、激しく怒るというところがポイントです。やや堅苦しい言い方ではありますが、怒りの度合いを端的に表す言葉として表現の選択肢の一つになるでしょう。ただし、「怒り心頭に達する」と間違えて使っている人が多いのが現状です。
平成24年度に文化庁によって行われた『国語に関する世論調査』では、本来の言い方である「怒り心頭に発する」を使用している人は23.6パーセント、本来の言い方ではない「怒り心頭に達する」を使用している人は67.1パーセントという調査結果が出ていました。本来の言い方ではない方が多く使われているという、顕著な逆転現象が現れていますね。データ自体は少し古いですが、現在においても認識についてはさほど変わりはないか、やや認知度が高まった程度であると思われるでしょう。今後この言い方が更に定着するのか、それとも正しい言い方へ修正されていくか注目されるところです。
「怒り心頭に発する」の語源は?
次に「怒り心頭に発する」の語源を確認しておきましょう。「心頭」の読み方は「しんとう」です。文字だけを見てみると「こころとあたま」という意味にも見えますが、これは誤りで単純に「こころ」という意味を表します。「頭」という漢字は中国語において名詞や動詞などの後につける接尾語であり、「あたま」という意味はありません。
つまり「怒り心頭に発する」は「怒りがこころに発する」ということではなく、「こころから怒りを発している」ということなのです。「達する」だとこころがゴールになってしまいますが、本来はこころがスタートなので「発する」が正しいということがよくわかりますね。
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