
「押し切る」の使い方・例文
「押し切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.私は新米の教師。家庭に配る書類をさばくのが苦手だったが、今は他の先生と同じレベルでこなせるようになった。今回は1枚の紙で2名分とれるようにコピーをとり、印刷終了したら押し切りカッターで勢いよく裁断、前後を確認してそれぞれのクラス分を手早くまとめ、配布物ボックスの中へ。流れるようにスムーズだ。
2.転職サイトで見つけた中国での日本語教師の仕事に、俺は挑戦することにした。中国語は少ししか話せないし、家族の反対もあったが、押し切って決めた。「支援はしないからな」とか、家族が言うことに当初はビビっていた俺だが、最後には覚悟が決まっていた。
3.我が企業のトップは、問題はなかったという姿勢でこの窮状を押し切るつもりのようだ。なんでも明るみに出るこのネット社会で、そんな強行突破がはたして通用するだろうか。時代錯誤のやり方に、はなはだ疑問を感じる。
例文1の「押し切る」は「押しつけて切る」という意味で使っています。学校の先生がクラスに配布する書類は数十枚、学年全体では百枚から数百枚でしょうか。紙の束も押し切り式ペーパーカッターがあれば、簡単に裁断できます。
例文2と3の「押し切る」は「反対をしりぞけて成し遂げようとする」という意味。例文2では、自分の不安な気持ちや家族の反対を「押し切って」中国での就職を決心したようです。例文3は、世間やマスコミからの追及を「押し切って」、責任を逃れようとしている状況でしょうか。「強行突破」という言葉からも「押し切る」のニュアンスを感じとれます。
「押し通す」
「押し通す」は、無理があっても貫き通すこと。「反対をしりぞけて成し遂げようとする」という「押し切る」とよく似た言葉です。「強い態度で押し切る」「強い態度で押し通す」はどちらも、抵抗にあっても強引にやり遂げようとするという意味ですね。
よく似た二つの言葉ですが、言い換えできない場合もあります。「兄の反対を押し切り、私は東京に向かった」という文章は「兄の反対を押し通し、私は東京に向かった」とは言い換えられません。
これは「切る」と「通す」のあらわすイメージによるもの。「押し切る」は「切る」が意味するとおり、「反対をしりぞける」「反対するものを排除する」ニュアンスがありますね。対して「押し通す」は「通す」がイメージさせるように「貫き通す」「変えずにやりぬく」という意味をもちます。注意して使い分けましょう。
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