この記事では「押し切る」について解説する。

端的に言えば押し切るの意味は「反対をしりぞけて成し遂げようとする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「押し切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「押し切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「押し切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「押し切る」の意味は?

「押し切る」には、次のような意味があります。

1.押しつけて切る。
2.反対・抵抗・困難などを退けて目的を達しようとする。
3.「切る」を強めていう語。断ち切る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「押し切る」

「押し切る」とは、反対するものを退けて、目的を成し遂げようとすることです。「両親の反対を押し切って、私は彼と結婚した」のように使います。

上の1の意味にあるとおり、単純に「押しつけて切る」という意味でも使いますよ。押し切り式のペーパーカッターを見たことはありますか?数十枚の紙を一度に切ることができる、裁断機です。用紙をそろえて置き、上から包丁のような長い刃のカッターをおろし、押しつけて一気に切ります。まさに「押し切る」動作そのものですね。

上の3の「『切る』を強めていう」というのは、現代ではあまりなじみがない使い方です。「押す」は接頭語であり、主な意味は「切る」の部分。「年の瀬が押し迫る」や「波が押し寄せる」の「押し」と同じですね。

「押し切る」の語源は?

次に「押し切る」の語源を確認しておきましょう。「押し切る」という言葉は、「押す」と「切る」がくっついたものと考えるのが自然ですね。そのまま「押しつけて切る」という意味で使っていたものが、だんだんと「ムリヤリでもやろうとする」という意味を持つようになったのでしょう。

上の3の「切る」の意味を強める使い方は、古文の中で見ることがありますよ。室町時代に成立した「太平記」には「自ら髻(もとどり)押し切りて」とあります。「髻(もとどり)」とは髪を頭の上で束ねた部分のこと。ただの「切りて」より強い意味を込め「まさに切り落とした」という感じでしょうか。現代ではあまり見ませんが、古くはこの使い方が主流だったのかもしれません。

\次のページで「「押し切る」の使い方・例文」を解説!/

「押し切る」の使い方・例文

「押し切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.私は新米の教師。家庭に配る書類をさばくのが苦手だったが、今は他の先生と同じレベルでこなせるようになった。今回は1枚の紙で2名分とれるようにコピーをとり、印刷終了したら押し切りカッターで勢いよく裁断、前後を確認してそれぞれのクラス分を手早くまとめ、配布物ボックスの中へ。流れるようにスムーズだ。
2.転職サイトで見つけた中国での日本語教師の仕事に、俺は挑戦することにした。中国語は少ししか話せないし、家族の反対もあったが、押し切って決めた。「支援はしないからな」とか、家族が言うことに当初はビビっていた俺だが、最後には覚悟が決まっていた。
3.我が企業のトップは、問題はなかったという姿勢でこの窮状を押し切るつもりのようだ。なんでも明るみに出るこのネット社会で、そんな強行突破がはたして通用するだろうか。時代錯誤のやり方に、はなはだ疑問を感じる。

例文1の「押し切る」は「押しつけて切る」という意味で使っています。学校の先生がクラスに配布する書類は数十枚、学年全体では百枚から数百枚でしょうか。紙の束も押し切り式ペーパーカッターがあれば、簡単に裁断できます。

例文2と3の「押し切る」は「反対をしりぞけて成し遂げようとする」という意味。例文2では、自分の不安な気持ちや家族の反対を「押し切って」中国での就職を決心したようです。例文3は、世間やマスコミからの追及を「押し切って」、責任を逃れようとしている状況でしょうか。「強行突破」という言葉からも「押し切る」のニュアンスを感じとれます。

「押し切る」の類義語は?違いは?

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「押し切る」の類義語には「押し通す」があげられます。

「押し通す」

「押し通す」は、無理があっても貫き通すこと。「反対をしりぞけて成し遂げようとする」という「押し切る」とよく似た言葉です。「強い態度で押し切る」「強い態度で押し通す」はどちらも、抵抗にあっても強引にやり遂げようとするという意味ですね。

よく似た二つの言葉ですが、言い換えできない場合もあります。「兄の反対を押し切り、私は東京に向かった」という文章は「兄の反対を押し通し、私は東京に向かった」とは言い換えられません。

これは「切る」と「通す」のあらわすイメージによるもの。「押し切る」は「切る」が意味するとおり、「反対をしりぞける」「反対するものを排除する」ニュアンスがありますね。対して「押し通す」は「通す」がイメージさせるように「貫き通す」「変えずにやりぬく」という意味をもちます。注意して使い分けましょう。

\次のページで「「押し切る」の対義語は?」を解説!/

「押し切る」の対義語は?

「押し切る」の対義語は「押し切られる」です。

「押し切られる」

「押し切られる」は、好ましく思わないことを受け入れてしまい、相手に従うことです。「押し切る」と「押し切られる」ですから、能動・受動という言葉のかたちの上でも対義語と分かりますね。「押し切られる」もよく使う言葉です。

「親の反対を押し切って家を出た」という場合は、親の立場からは「子どもが家を出るのを反対したが押し切られた」となるわけですね。

「押し切る」の英訳は?

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「押し切る」の英訳には「persist」を使います。

「persist」

「persist」は「固執する」「やり通す」「しつこく主張する」といった意味を持ちます。「押し切る」のニュアンスを表現できる英単語です。例で確認しましょう。

She persisted in what she said.
(彼女は自分の言ったことに固執した。= 彼女は自分の意見で押し切った。)

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「押し切る」を使いこなそう

この記事では「押し切る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「押し切る」は、反対をしりぞけて成し遂げようとすることです。「押しつけて切る」という意味でも使います。

何かを押し切ろうとするのは勇気がいりますね。まずは、自分の力を信じるのが大事です。また、自分に反対するものの立場からも考えてみるなど、客観的な判断も大切でしょう。そうしてみて、やはり押し切るしかないという結果に至ったのなら、存分に押し切ってみたら良いのではないでしょうか。

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国語言葉の意味

「押し切る」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「押し切る」について解説する。

端的に言えば押し切るの意味は「反対をしりぞけて成し遂げようとする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「押し切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「押し切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「押し切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「押し切る」の意味は?

「押し切る」には、次のような意味があります。

1.押しつけて切る。
2.反対・抵抗・困難などを退けて目的を達しようとする。
3.「切る」を強めていう語。断ち切る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「押し切る」

「押し切る」とは、反対するものを退けて、目的を成し遂げようとすることです。「両親の反対を押し切って、私は彼と結婚した」のように使います。

上の1の意味にあるとおり、単純に「押しつけて切る」という意味でも使いますよ。押し切り式のペーパーカッターを見たことはありますか?数十枚の紙を一度に切ることができる、裁断機です。用紙をそろえて置き、上から包丁のような長い刃のカッターをおろし、押しつけて一気に切ります。まさに「押し切る」動作そのものですね。

上の3の「『切る』を強めていう」というのは、現代ではあまりなじみがない使い方です。「押す」は接頭語であり、主な意味は「切る」の部分。「年の瀬が押し迫る」や「波が押し寄せる」の「押し」と同じですね。

「押し切る」の語源は?

次に「押し切る」の語源を確認しておきましょう。「押し切る」という言葉は、「押す」と「切る」がくっついたものと考えるのが自然ですね。そのまま「押しつけて切る」という意味で使っていたものが、だんだんと「ムリヤリでもやろうとする」という意味を持つようになったのでしょう。

上の3の「切る」の意味を強める使い方は、古文の中で見ることがありますよ。室町時代に成立した「太平記」には「自ら髻(もとどり)押し切りて」とあります。「髻(もとどり)」とは髪を頭の上で束ねた部分のこと。ただの「切りて」より強い意味を込め「まさに切り落とした」という感じでしょうか。現代ではあまり見ませんが、古くはこの使い方が主流だったのかもしれません。

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