この記事では「月夜に提灯(つきよにちょうちん)」について解説する。
端的に言えば、月夜に提灯の意味は「無駄なこと」です。「月夜に提灯」だけで使うこともありますが、さらに別の言葉を足して表現することもあるぞ。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「月夜に提灯」の意味をチェックし、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「月夜に提灯」の意味・例文と使い方

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さっそく「月夜に提灯」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「月夜に提灯」の意味

まずは辞書で「月夜に提灯」の意味をチェックしましょう。

不必要なこと、むだなことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「月夜に提灯」

「月夜」とは月が照っている夜、月が美しい夜のこと。明るく月が照っている夜に提灯を灯(とも)すことから「月夜に提灯」「不必要なこと」「無駄なこと」という意味になりました。街路灯や看板が灯っている現代では、深夜でも真っ暗ではないですね。闇夜の暗さや満月の明るさを知らないと「月夜に提灯」という言葉は実感しづらいかもしれません。

「月夜に提灯」の例文と使い方

次に「月夜に提灯」の例文で使い方を見ていきましょう。

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1.母が入院することになった。病衣は借りることになっているのに、ボストンバッグの中身を点検したらパジャマや部屋着が何着も入っていた。月夜に提灯なので、母に言い聞かせて中身を抜いた。
2.彼女はちょっとしたお出かけでも、大きなトートバックの中にハンカチ・ティッシュはもちろん、傘やソーイングセット、絆創膏などたくさんの荷物を入れて持ち歩いている。月夜に提灯だと思うのだが、持っていないと不安だからといって決して荷物を減らそうとはしない。

最初の例文は、着る必要がないと思われるパジャマや部屋着を入院の荷物の中に入れていたのが無駄だということです。荷作りに時間や労力がかかることも、重い荷物をたくさん持っていくことも無駄ですね。2番目の例文は、不必要と思われるものをついたくさん持ち歩いてしまうということです。いつも大きなカバンになんでもかんでも詰め込んでいる人、まわりにもいるのではないでしょうか。

「月夜に提灯」に続く言葉は?

「月夜に提灯」は単独で使うこともありますが、別の言葉を続けて使うこともあります。どんな言葉を続けるのか見ていきましょう。

「月夜に提灯夏火鉢(なつひばち)」:無駄なこと

「火鉢」は陶器や金属の器の中に灰を入れ、その上で炭を燃焼させる暖房器具。部屋全体を温めるほどではありませんが、お湯を沸かしたり、網を置いて餅を焼いたりと、簡単な調理器具としての機能もあります。冬の季語にもなっていますよ。「夏火鉢」は「月夜に提灯」と同じように無駄なもののこと。「月夜に提灯夏火鉢」は、同じような意味の言葉を重ねて無駄なものであることを強調しているのです。

「月夜に提灯も外聞(がいぶん)」:無駄でも世間体のためにする

昔、月夜には提灯を灯さないのが一般的でした。しかし、商家などでは繁盛していることを示すために、わざと月夜でも提灯を灯すことがありました。「月夜に提灯も外聞」は、明るく月が照らす夜にわざわざ提灯をともすのは、世間体のためやむを得ないことから「無駄なことでも、世間体のためにはしなければならないことがある」という意味です。

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「月夜に提灯」の類義語

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「月夜に提灯」と似たような意味を持つ言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「無用の長物(むようのちょうぶつ)」:あっても益のないもの

「無用」には「役に立たないこと」「いらないこと」という意味があります。「長物」は「長いばかりで役に立たないもの」という意味です。「無用の長物」「あっても役に立たず、かえってじゃまになるもの」「あっても益がないもの」という意味ですよ。

「夏炉冬扇(かろとうせん)」:季節はずれの役に立たないもの

「夏炉」は「夏のいろり」、「冬扇」は「冬の扇」。暑い夏にいろりを使ったり、寒い冬に扇であおいだりするのは、季節はずれですね。そこから「夏炉冬扇」「無用の物事」「役に立たない」という意味になりました。語源は『論衡(ろんこう)』逢遇篇(ほうぐうへん)の「なほ夏を以て炉を進め、冬を以て扇を奏するが如し」です。

「月夜に提灯」の反対語

「月夜に提灯」と反対の意味を持つ言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「無用の用」:役に立たなさそうだが実は有用

「無用の用」「役に立たないと思われているが、別の意味でとても大切な役割を果たす」こと。語源は荘子の『人間世(じんかんせい)』の「人は皆、有用の用を知れども、無用の用を知る莫し」という一節です。意味は「誰でも役に立つものが役に立つことは知っているが、役に立たないものが役に立つことは知らない」ですよ。

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「月夜に提灯」の英訳

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英語では「月夜に提灯」はどのように表現するのでしょうか。

「To carry a lantern in midday」:真昼にランプを持ち歩く

「a lantern」はランタン、つまり手提げランプのこと。「midday」は「真昼」ですね。To carry a lantern in middayは直訳だと「真昼にランプを持ち歩く」です。昼間にランプを持ち歩いても無駄なことなので「月夜に提灯」という意味になりますね。

日本語でも英語でも、明るいのに照明器具を持っているという意味あいの言葉で無駄なことを表現しているのは、興味深いですね。

シーンに応じて「月夜に提灯」を使いこなそう!

この記事では、「月夜に提灯」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「月夜に提灯」は、明るく月が照っている夜に提灯を灯すことから「不必要なこと」「無駄なこと」という意味の言葉になりました。単独で使うこともありますが、さらに言葉を重ねて「月夜に提灯夏火鉢」「月夜に提灯も外聞」という形でも使われます。一見風流な言葉のようにみえますが、ちょっと残念な意味合いですね。

人里離れた場所でもない限り、街灯などの影響で夜でも空が明るい現代では、意味が実感しづらい言葉になってしまいました。しかし、ストレートに「無駄!」というより、やんわりと「月夜に提灯ですね」と伝えたほうがよい場合があるかもしれません。シーンに応じて「月夜に提灯」を使いこなせるようになってくださいね。

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国語言葉の意味

「月夜に提灯」に続く言葉は?意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

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端的に言えば、月夜に提灯の意味は「無駄なこと」です。「月夜に提灯」だけで使うこともありますが、さらに別の言葉を足して表現することもあるぞ。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「月夜に提灯」の意味をチェックし、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「月夜に提灯」の意味・例文と使い方

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さっそく「月夜に提灯」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「月夜に提灯」の意味

まずは辞書で「月夜に提灯」の意味をチェックしましょう。

不必要なこと、むだなことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「月夜に提灯」

「月夜」とは月が照っている夜、月が美しい夜のこと。明るく月が照っている夜に提灯を灯(とも)すことから「月夜に提灯」「不必要なこと」「無駄なこと」という意味になりました。街路灯や看板が灯っている現代では、深夜でも真っ暗ではないですね。闇夜の暗さや満月の明るさを知らないと「月夜に提灯」という言葉は実感しづらいかもしれません。

「月夜に提灯」の例文と使い方

次に「月夜に提灯」の例文で使い方を見ていきましょう。

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