今回は「生産者」について解説していきます。
生産者というのは、生物学を学習すると頻繁に目にする言葉です。生産者の概念は、生態系内の物質やエネルギーの流れについて知る上で重要になるぞ。また、近年話題にされることが多い環境問題について学ぶ際にも、生産者の概念が必要不可欠になる。このような背景から、生産者について学んだことが無駄になることはないはずです。ぜひこの機会に、生産者についての理解を深めてくれ。
工学の視点で生態系について学んだことがある学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。
ライター/通りすがりのペンギン船長
工学部所属の現役理系大学生。環境工学を専攻している。高校時代は生物を学んでいなかったが、大学進学後に工学的な視点から生態系について詳しく学んだ。
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生産者という言葉を聞くと、工業や農業に従事する人々を連想する方が多いかもしれません。このような人々は人間の社会における生産者です。人間社会における生産者は、消費者が必要とする資源(野菜などの食べ物や日用品)を作り出していますよね。
ですが、今回は人間の社会よりも大きなスケールで生産者について考えます。つまり、生態系の中における生産者について考えるのです。以下では、生態系の中で生産者がどのような立ち位置をとっているのかを詳しく解説していきます。
解説の中には生物学の専門用語がいくつか登場しますが、これらは生産者の概念を理解する上で重要なキーワードになりますよ。ですから、見慣れない単語が登場したときには、その意味を理解することを忘れずに行ってくださいね。それでは、解説をはじめます。
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生態系の中において、生産者というのは主に植物のことをさします。陸上に生えている植物はもちろんのこと、海や川などの水圏に生息する植物プランクトンも生産者に属しますよ。
これらの植物は、食物連鎖の最下層に位置していますよね。これは、人間を含む動物が、植物によって生産された資源を消費することで生命を維持していることを意味します。以上のような背景から、生態系の中で植物が生産者と呼ばれているのです。
\次のページで「生産者の役割」を解説!/
生産者の役割は、生態系を維持するために必要な資源を生み出すことです。これらの資源には、生物が体を動かすために必要なエネルギーや生物が個体サイズを大きくして成長するための物質が含まれています。
生物が体を動かすために必要なエネルギーになるものは、デンプンなどの炭水化物です。炭水化物は光合成によって生成されます。また、成長するために必要な物質はアミノ酸です。アミノ酸は、光合成によって得られたエネルギーを利用して合成されます。アミノ酸はタンパク質のもとになる物質ですよ。
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生産者が主に行っている光合成はどのような化学反応なのでしょうか。光合成は無機物である水と二酸化炭素から有機物である炭水化物を作り出す反応です。生産者の注目すべき特徴はここにありますよ。光合成の代表的な化学反応を式で表現すると6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2となります。
また、先ほど光合成で得られたエネルギーを利用して、アミノ酸を合成すると述べました。ここで登場するアミノ酸も有機物です。アミノ酸は主に炭素、酸素、窒素から成る物質であり、この窒素成分は土壌中から根を通じて供給されるものですよ。
私たち人間を含む消費者が利用する有機物の供給を担っているという意味で生産者が重要であることは言うまでもないですが、生産者の重要性は他の側面からも伺い知ることができます。
生産者である植物は消費者が呼吸時に排出した二酸化炭素を、酸素に変換することが可能です。消費者が生きていくためには、酸素は必ず必要になりますから、このような点でも消費者は生産者に依存しているのですね。
\次のページで「生産者と生態系全体の関係」を解説!/
ここまで、生産者とは一体どのような生物であるのかということを中心に解説を記述してきました。以下では、分解者および消費者との関係に焦点を当てて、生産者について解説していきますね。このような観点で消費者について学ぶことで、他の生物との区分方法についてより深く理解できるようになるでしょう。
これより前に述べた事柄と重なる部分もありますが、生態系の中で生産者がどのような振る舞いをしているのかを理解するためにも、記事の最後まで読んでみてください。それでは、説明をはじめます。
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まずは、分解者との関係を考えていきましょう。分解者は生産者と消費者の排出物や死骸に含まれる有機物を無機物に変換する役割をになっています。細菌類や微生物が分解者にあたりますよ。また、ダンゴムシやミミズなどの生物も分解者に分類できます。これらの生物は、植物の死骸である落ち葉などを分解しますよ。
実は、生産者が光合成やアミノ酸合成を行う際に使用する無機物は、分解者から供給されています。つまり、分解者が存在しない場合、生産者は代謝を行うことができなくなるのです。以上のことから、生産者は分解者からの資源に依存していると言えます。
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最後に、消費者と生産者の関係を再確認しておきましょう。消費者が代謝を行い、成長するためには、生産者を摂取する必要があります。人間の食事の中では、野菜や海藻類などの食材が生産者ですよね。また、私たちが食べる肉類や魚貝類は、生産者が生み出す資源によって成長しています。このような背景を考えると、生産者である植物は私たちの生活を支える重要な存在だと言えますよね。
実際、「自然の恵み」のようなフレーズは、この考え方に基づいて生まれたのです。ですが、人類が経済活動を行うために生産者である植物に大きな負荷をかけると、生産者の数は減少します。その結果、人類の生活が破綻する可能性もあるのです。
近年注目されている環境問題も、生産者である植物に関連するものが多くなっています。このような事態を避けるために、持続可能な社会を実現することが急がれていますよ。
\次のページで「生産者について本質的に理解しよう!」を解説!/
生産者という言葉自体は中学校や高校の理科の教科書で取り扱われており、生物学の用語の中でも基礎的なものである言えます。ですが、化学や環境問題の知識まで関連づけて、生産者について説明されることはほとんどありません。この記事では、以上のような細かい部分も簡単に説明しましたよね。
このように、他分野の知識と併せて体系的に学ぶと、生産者についての本質的な理解を得ることができますよ。ぜひ、この機会に生産者について詳しく学んでみてくださいね。