今回は「自然浄化」について解説していきます。

自然浄化は、自然環境の中における物質循環の機能の一部です。自然浄化という概念は、近年注目されることが多い環境問題について学ぶ際に、非常に重要となる。また、自然浄化そのものが環境問題を解決するために、活用されることもあるぞ。このような理由から、自然浄化について知っておくことで損をすることはないと言える。ぜひ、この機会に自然浄化について学んでくれ。

工学の視点で生態系について学んだことがある学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

工学部所属の現役理系大学生。環境工学を専攻している。高校時代は生物を学んでいなかったが、大学進学後に工学的な視点から生態系について詳しく学んだ。

自然浄化について学ぼう!

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この記事のメインテーマは『自然浄化』です。自然環境が有する物質循環の仕組みの中に、自然浄化が組み込まれています今回の記事では、主に土壌圏や水圏(河川や湖沼、海洋)における自然浄化について解説しますね

実は、自然浄化と環境汚染の間は深い関係がありますよ。人類の歴史の中でも、様々な汚染に悩まされるという場面は数多く存在します。特に、近代以降の環境汚染は深刻であり、多くの人々の健康を害してきました。そして、世界レベルで考えると、現在でも環境汚染に直面している人々は多くいますよね

以上のような理由から、自然浄化について学ぶことには多くの意義があると言えます。記事の前半では、自然浄化についての基礎知識を身につけましょう。そして、記事の後半では、自然浄化に関する身近な話題をご紹介しますね

汚染とは?

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私が汚染という言葉を用いるとき、その定義について意識することはほとんどありません。ここでは、自然浄化について勉強する前に、科学的な視点で汚染の意味合いを確認しておきましょう

汚染というのは、『自然環境中に人類を含む生物にとって有害な物質が過剰に存在している状態』のことをさします。汚染原因物質には、有機物と無機物が存在しますよ。有機物の汚染物質には、有機溶媒や合成洗浄剤などがあります無機物の汚染物質としては、重金属などがありますよ。また、海洋汚染の一種である赤潮はプランクトンなどの微生物が大量発生することで生じます

水質汚濁などの環境汚染が生じれば、健康被害などだけでなく、水利用の際のコストが増えるのです。このように、環境汚染というのは様々な損失につながってしまいますよ。また、汚染された環境の回復にも、コストが必要です。

自然浄化とは?

自然浄化とは?

image by Study-Z編集部

自然環境は、汚染を自ら解消する自然浄化という能力を有していますよ。この能力は、自浄作用という言葉で表現されることもあります。自然浄化のプロセスは、希釈沈殿吸着分解などに分けられますよ。

希釈というのは、汚染物質が大量の河川水や大気と混合され、拡散することを指します。希釈によって、汚染物質の濃度が減少し、生物への悪影響が小さくなりますよ。また、沈殿は水中の汚染物質が凝集して沈むことであり、吸着は汚染物質が物質に高密度でくっつくことです。

分解というのは、汚染物質が化学反応によって、別の無害な物質に姿を変えることですよ。分解には、酸化還元反応や太陽光による光分解などが含まれています。

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自然浄化と汚染の関係

ある程度小さい規模の環境汚染であれば、自然浄化のみで汚染を解消することができますよ。しかしながら、汚染の規模が限界値を超えると、自然浄化の能力のみでは環境を元に戻すことは不可能になります。近代以降の深刻な環境汚染は、自然浄化で対応できる量をはるかに超える汚染物質が環境中に放出されることで生じていますよ。このような場合、人工的に汚染物質を除去するという対応が必要になってしまいます。

以上のことから、根本的に環境汚染を解消する方法は、自然浄化能力で対応できない量の汚染物質を放出しないことだと言えますよ法律などで規定される環境基準値は、この考え方に基づいています。そして、環境基準値を決定するために、様々な研究が行われているのです。

自然浄化メカニズムの活用

環境汚染を緩和する方法として、人工的に汚染物質を除去するというものがありますよね。この手法は何も問題がないように思われますが、それは実情と異なります。人工的に汚染物質を除去する過程では、様々な資源やエネルギーを消費するのです

このような背景から、近年は省資源・省エネルギーという条件を満たす新しい汚染緩和の方法が提案されるようになってきました。その中には、自然浄化メカニズムを活用したものが複数あります。ここでは、身近なところで利用される自然浄化メカニズムを活用した技術について紹介しますね

河川改良による自然浄化

Yamato River in Sakurai, Nara02.JPG
Kansai explorer - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, リンクによる

ここでは、大阪府と奈良県を流れる一級河川である大和川における河川改良による自然浄化について説明します。かつて、大和川は一級河川の水質ランキングで常にワースト上位になるほど汚い川でした。ですが、様々な河川改良工事により河川がもつ自然浄化を強化し、水質改善を行いました

多くの酸素が河川水にとけるようにする工夫(河川の深さの調整など)微生物が生息しやすい環境づくりなどを行った結果、水質が良くなったのです。また、河川の植生もコントロールしており、これも水質向上のための工夫の1つですよ

このような工夫を行うことで、従来から設置されている浄化施設の負担を減らすことができ、河川水浄化に必要なエネルギーの量も減らすことができたのです。大和川のように、河川工事の際に自然浄化能力を強化する措置を行うという手法は、今後も多くの河川で活用することができるでしょう。

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ファイトレメディエーションによる自然浄化

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自然浄化を活用した技術は他にも存在します。植物の中には、人体にとって有毒な重金属を積極的に吸収するハイパーアキュミュレーター植物と呼ばれるものがありますよこの植物を、重金属で汚染された土壌に植え付けると、土壌を浄化することができるのです

また、植物の根には根圏微生物が生息しています。根圏微生物の中には、環境汚染物質を分解できる個体も存在しており、これによって土壌の浄化を行う技術もありますよ。このように、植物の力をかりて土壌汚染を緩和する技術のことをファイトレメディエーションと呼びます。

自然浄化について理解を深めよう!

この記事では、自然浄化をメインテーマとして、お話を進めてきました。自然浄化について理解すると、環境汚染についての知識も身に付きます。そして、自然浄化と関係の深い環境浄化技術についても、ご紹介しましたよね。

水質汚染や土壌汚染、大気汚染などは、私たちが健康的な生活を送るために、必ず向き合わなければならない問題です。ですから、自然浄化について学ぶことは決して無駄にはなりません。ぜひこの機会に、自然浄化についての理解を深めてみてくださいね。

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理科生物

3分で簡単自然浄化!環境汚染との関係は?現役理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「自然浄化」について解説していきます。

自然浄化は、自然環境の中における物質循環の機能の一部です。自然浄化という概念は、近年注目されることが多い環境問題について学ぶ際に、非常に重要となる。また、自然浄化そのものが環境問題を解決するために、活用されることもあるぞ。このような理由から、自然浄化について知っておくことで損をすることはないと言える。ぜひ、この機会に自然浄化について学んでくれ。

工学の視点で生態系について学んだことがある学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

工学部所属の現役理系大学生。環境工学を専攻している。高校時代は生物を学んでいなかったが、大学進学後に工学的な視点から生態系について詳しく学んだ。

自然浄化について学ぼう!

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この記事のメインテーマは『自然浄化』です。自然環境が有する物質循環の仕組みの中に、自然浄化が組み込まれています今回の記事では、主に土壌圏や水圏(河川や湖沼、海洋)における自然浄化について解説しますね

実は、自然浄化と環境汚染の間は深い関係がありますよ。人類の歴史の中でも、様々な汚染に悩まされるという場面は数多く存在します。特に、近代以降の環境汚染は深刻であり、多くの人々の健康を害してきました。そして、世界レベルで考えると、現在でも環境汚染に直面している人々は多くいますよね

以上のような理由から、自然浄化について学ぶことには多くの意義があると言えます。記事の前半では、自然浄化についての基礎知識を身につけましょう。そして、記事の後半では、自然浄化に関する身近な話題をご紹介しますね

汚染とは?

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私が汚染という言葉を用いるとき、その定義について意識することはほとんどありません。ここでは、自然浄化について勉強する前に、科学的な視点で汚染の意味合いを確認しておきましょう

汚染というのは、『自然環境中に人類を含む生物にとって有害な物質が過剰に存在している状態』のことをさします。汚染原因物質には、有機物と無機物が存在しますよ。有機物の汚染物質には、有機溶媒や合成洗浄剤などがあります無機物の汚染物質としては、重金属などがありますよ。また、海洋汚染の一種である赤潮はプランクトンなどの微生物が大量発生することで生じます

水質汚濁などの環境汚染が生じれば、健康被害などだけでなく、水利用の際のコストが増えるのです。このように、環境汚染というのは様々な損失につながってしまいますよ。また、汚染された環境の回復にも、コストが必要です。

自然浄化とは?

自然浄化とは?

image by Study-Z編集部

自然環境は、汚染を自ら解消する自然浄化という能力を有していますよ。この能力は、自浄作用という言葉で表現されることもあります。自然浄化のプロセスは、希釈沈殿吸着分解などに分けられますよ。

希釈というのは、汚染物質が大量の河川水や大気と混合され、拡散することを指します。希釈によって、汚染物質の濃度が減少し、生物への悪影響が小さくなりますよ。また、沈殿は水中の汚染物質が凝集して沈むことであり、吸着は汚染物質が物質に高密度でくっつくことです。

分解というのは、汚染物質が化学反応によって、別の無害な物質に姿を変えることですよ。分解には、酸化還元反応や太陽光による光分解などが含まれています。

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