平安時代日本史鎌倉時代

男と女が入れ替わる奇想天外なお話「とりかへばや物語」について元大学教員が5分でわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。とりかえばや物語のあらすじは、男と女が入れ替わって成長しながら、最後にはふたりとも成功を収めるというトランスジェンダーを扱った話。今風の話と思いきや、なんと平安時代の末期に成立したと言われている。今でもとりかえばや物語をモチーフとして小説、映画、アニメ、テレビドラマは多い。

そんなとりかえばや物語は、そのストーリーの特殊性から長らく評価されてこなかった。そんなとりかえばや物語が成立した時代背景や物語の内容について、日本史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ひこすけ

アメリカの歴史や文化を専門とする元大学教員。平安時代に興味があり、気になったことを調べている。とりかえばや物語は兄妹が入れ替わるという話。平安時代に書かれたとは思えないほどの奇想天外な内容。そんなとりかえばや物語についてまとめてみた。

とりかへばや物語とは

image by PIXTA / 68144072

とりかへばや物語の作者は不明。もとになる古本(こほん)と呼ばれる作品は、平安時代後期に成立しました。私たちが知っている「とりかへばや物語」は古本に改作を加え、鎌倉時代初期に成立したもの。その内容は、現代で言うトランスジェンダーの設定で、古典の概念をぶっ壊すようなエンタメ性に富んでいる作品です。

主人公は双子の男女

とりかえばや物語の主人公は、左大臣の子どもである双子の男女。ひとりは内気で女性的な男の子、もうひとりは活発で男性的な女の子でした。父親の左大臣は日ごろからふたりを取り替えたいものだと思っていました。そこで男の子を「姫君」として、女の子を「若君」として育てることにします。

若君(女の子)は男として宮廷に出仕、才気あふれる若者として高い官職に就き、出世街道まっしぐら。右大臣の娘と女同士であることを伏せて結婚します。姫君(男の子)は女性として宮中入り。主君である女東宮(女性の皇太子)に恋をして関係を持ちます。

双子のサクセスストーリーでもある

若君の妻は、夫の親友の中将に恋をして密通、夫婦仲は破綻します。さらに若君は中将に正体を見破られることに。女性の姿に戻った若君は、なんと中将の子を産みました。姫君(男の子)も男性の姿に戻り、ゆくえ知れずの妹を捜しだしました。

ふたりは周囲に知られないように元の性に戻り、「男の子」は関白に、「女の子」は中宮になりました。ちなみに中宮は天皇の后。大出世となります。奇想天外な結末ではありますが、当時の貴族たちの夢物語という一面もありました。

とてもユニークな設定のとりかえばや物語。明治時代の男性学者からは「吐き気を催す」「変態的」など散々な評価でした。とくに明治時代は男尊女卑の考え方が強くありました。そのため女性のほうが有能、出世能力があるという設定は許しがたかったのです・しかし今では、現代にも通用する面白いストーリーとして再評価。かたちを変えて、映画化、マンガ化、ドラマ化されています。

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男と女が入れ替わる話は今でも多い。今でもよく知られている例が「君の名は。」だろう。これは、とりかえばや物語をヒントにした作品と言ってもいいだろう。とくに少女漫画にはとりかえばや物語の再生産と言えるようなストーリーにあふれているから、ぜひチェックしてくれ。

\次のページで「古本とりかへばや物語が生れた時代背景」を解説!/

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