この記事では「鬼の霍乱」について解説する。

端的に言えば鬼の霍乱の意味は「体の丈夫な人が珍しく病気にかかること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「鬼の霍乱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「鬼の霍乱」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「鬼の霍乱」の意味や語源・使い方まとめ

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鬼の霍乱」の読み方は「おにのかくらん」です。あまり聞き慣れない慣用句ですが、年配の方がしばしば使っていますね。「霍乱」と言う言葉も、馴染みが無い人が多いと思います。いったいどんな意味なのでしょうか。
また誤用の多い言葉でもありますから、この機会に自信を持って使えるようしっかりと覚えましょう。

それでは早速「鬼の霍乱」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「鬼の霍乱」の意味は?

まず初めに「鬼の霍乱」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「鬼の霍乱」には、次のような意味があります。

1.ふだんきわめて健康な人が珍しく病気になることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼の霍乱」

2.病気しそうにも思われない、ふだん丈夫な人が珍しく病気をすること。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「鬼の霍乱」

上記の通り「鬼の霍乱」は、ふだん丈夫な人が珍しく病気になった時に使われる慣用句です。

「珍しく病気にかかる」と言う意味が正しいのですが、この「珍しい」と言う意味が転じて、「珍しい行動をする」と言う間違った意味で使われている事がありますので注意しましょう。

また、「鬼の攪乱」と書き間違えることも多いです。「攪乱」(または撹乱とも書く)は「かき乱す」と言う意味ですね。そのほかにも「鬼の錯乱(さくらん)」と、間違えやすいようです。

このように、書き間違い、意味の間違いなど、誤用がとても多い慣用句ですから気をつけましょう。

「鬼の霍乱」の語源は?

次に「鬼の霍乱」の語源を確認しておきましょう。

霍乱(かくらん)」という言葉は、日常では使うことがなく、知らない人も多いと思いますので説明します。

「霍乱」とは、手を振りまわしもがく、と言う意味の「きかくりょうらん(揮霍撩乱)」から由来した、漢方医学の専門用語です。東洋医学においては、暑気あたりなどを指します。現代で言うところの「日射病」の事ですね。また、夏にひきやすい胃腸風邪なども、「霍乱」に分類されます。

また、「鬼」は強い人を比喩している表現です。つまり「鬼の霍乱」は、「強いはずの鬼が、暑気あたりになる」ことを例えにしているのですね。このことから、「普段丈夫な人が珍しく病気になる」と言う意味の「鬼の霍乱」と言う慣用句が生まれたのです。

\次のページで「「鬼の霍乱」の使い方・例文」を解説!/

「鬼の霍乱」の使い方・例文

それでは「鬼の霍乱」の使い方を実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.寒い冬に薄着でも体調一つ崩さなかったお父さんが入院するなんて、まさに鬼の霍乱だね。
2.いつも元気いっぱいで登校し皆勤賞目前だったのに、まさかの鬼の霍乱でインフルエンザにかかってしまった。
3.久々に風邪をひいたら肺炎になってしまい、病床で横たわる私に家族が鬼の霍乱だと驚いていた。

例文の通り「鬼の霍乱」は、いつも丈夫な人や体の強い人が突然病気をする、と言う意味で使われます。また、「鬼の霍乱」は、親しい人を相手に、少々の揶揄をこめて使われることが多いです。褒め言葉でも、マイナスのニュアンスがある言葉でもありませんが、大病を患ってしまった人に使うには、不謹慎と思われ、ふさわしくないので気をつけましょう。
また、目上の人に使うのもやめておいた方が無難でしょう。

「鬼の霍乱」の類義語は?違いは?

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「鬼の霍乱」は、ぴったり同じ意味の言葉がない慣用句ですが、似ている言葉として「病には勝たれぬ」と言うことわざがありますので紹介しましょう。

「病には勝たれぬ」

病には勝たれぬ(やまいにはかたれぬ)」は、病気の怖さについて伝えることわざです。どんなに強い人も、病気になってはどうすることもできないという意味を持っています。
身体が丈夫な人でも油断はできない、と言うことですね。

丈夫な人でも病気にかかると言う意味合いでは、「鬼の霍乱」と似た表現でしょう。

\次のページで「「鬼の霍乱」の対義語は?」を解説!/

「鬼の霍乱」の対義語は?

「鬼の霍乱」の対義語はぴったりのものはありません。しかし、反対の意味に近い表現として「病上手に死に下手」と言うことわざがありますから紹介します。

「病上手に死に下手」

病上手に死に下手(やまいじょうずにしにべた)」は、よく病気にかかる体の弱い人は、丈夫な人より体調に気をつける必要があるのでかえって長生きをする、と言う意味です。簡単に言えば、体の弱い人ほど長生き、と言うことですね。

「病上手」「死に下手」と言う表現が、少々ブラックジョークのような印象のことわざですから、使う時には気心の知れた人に限定しておいた方が良いでしょう。

「鬼」を使った慣用句、ことわざ

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「鬼の霍乱」と同じように、「鬼」を使った慣用句やことわざは数多くあります。その中でも、有名なものを三つ紹介しましょう。

鬼が笑う」(おにがわらう)は、「来年のことを言うと鬼が笑う」という言い回しで聞いた事があるでしょう。予想がつかないような未来のことを言うと鬼ですらせせら笑う、と言う意味です。つまり、予測できないことを言う人をからかう意味で使う言葉ですね。

鬼に金棒」(おににかなぼう)も有名な言葉で、有名ないろはかるたにも用いられていますね。ただでさえ強い鬼が、金棒を持つとさらに強くなる、と言う例えで、「もともと優れているものが、一層の力を得る」と言うことです。

鬼の居ぬ間に洗濯」(おにのいぬまにせんたく)も良く使われる表現ですね。ここで言う「洗濯」とは「命の洗濯」を指し、心を安らげリラックスする、と言う意味合いです。つまり、「鬼の居ぬ間に洗濯」は、目上の人やこわい人、うるさい人がいない間に、のんびりリラックスをする、と言うことですね。

「鬼の霍乱」を使いこなそう

この記事では「鬼の霍乱」の意味・使い方・類語などを説明しました。

意味の項目で説明した通り、「鬼の霍乱」は使い方、書き方の間違いが多い慣用句です。特に、単純に「珍しい」と言う意味で用いている間違いが多く散見されます。
例えば「あのケチな人が夕飯を奢ろうなんて鬼の霍乱だね」などと、「珍しい」、「いつもとは違う行動をする」と言う意味合いで用いている文章を見かけますが、これは誤りです。
「鬼の霍乱」は、丈夫な人が珍しく病気になる、と言う意味ですから、気をつけましょう。

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【慣用句】「鬼の霍乱」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「鬼の霍乱」について解説する。

端的に言えば鬼の霍乱の意味は「体の丈夫な人が珍しく病気にかかること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「鬼の霍乱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「鬼の霍乱」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「鬼の霍乱」の意味や語源・使い方まとめ

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鬼の霍乱」の読み方は「おにのかくらん」です。あまり聞き慣れない慣用句ですが、年配の方がしばしば使っていますね。「霍乱」と言う言葉も、馴染みが無い人が多いと思います。いったいどんな意味なのでしょうか。
また誤用の多い言葉でもありますから、この機会に自信を持って使えるようしっかりと覚えましょう。

それでは早速「鬼の霍乱」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「鬼の霍乱」の意味は?

まず初めに「鬼の霍乱」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「鬼の霍乱」には、次のような意味があります。

1.ふだんきわめて健康な人が珍しく病気になることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼の霍乱」

2.病気しそうにも思われない、ふだん丈夫な人が珍しく病気をすること。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「鬼の霍乱」

上記の通り「鬼の霍乱」は、ふだん丈夫な人が珍しく病気になった時に使われる慣用句です。

「珍しく病気にかかる」と言う意味が正しいのですが、この「珍しい」と言う意味が転じて、「珍しい行動をする」と言う間違った意味で使われている事がありますので注意しましょう。

また、「鬼の攪乱」と書き間違えることも多いです。「攪乱」(または撹乱とも書く)は「かき乱す」と言う意味ですね。そのほかにも「鬼の錯乱(さくらん)」と、間違えやすいようです。

このように、書き間違い、意味の間違いなど、誤用がとても多い慣用句ですから気をつけましょう。

「鬼の霍乱」の語源は?

次に「鬼の霍乱」の語源を確認しておきましょう。

霍乱(かくらん)」という言葉は、日常では使うことがなく、知らない人も多いと思いますので説明します。

「霍乱」とは、手を振りまわしもがく、と言う意味の「きかくりょうらん(揮霍撩乱)」から由来した、漢方医学の専門用語です。東洋医学においては、暑気あたりなどを指します。現代で言うところの「日射病」の事ですね。また、夏にひきやすい胃腸風邪なども、「霍乱」に分類されます。

また、「鬼」は強い人を比喩している表現です。つまり「鬼の霍乱」は、「強いはずの鬼が、暑気あたりになる」ことを例えにしているのですね。このことから、「普段丈夫な人が珍しく病気になる」と言う意味の「鬼の霍乱」と言う慣用句が生まれたのです。

\次のページで「「鬼の霍乱」の使い方・例文」を解説!/

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