今回は植物のからだを構成する「組織」について学習していこう。

多細胞生物の体は、さまざまな種類の細胞によってできているが、それらは「組織」というまとまりをつくって機能している。植物の組織にはどんなものがあるのか、全体像を把握できるようになろう。


大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

組織とは?

生物のからだを構成しているものは細胞です。単細胞生物であればたった一つの細胞で生きていますが、多細胞生物では細胞が色々な機能・形状のものに分化し、複雑なからだを維持するためにはたらいています。

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さて、皆さんの身体の細胞は、どのように配置しているでしょうか?いろいろな細胞が、からだ中にランダムに分布していることはないでしょう。皮膚の表面に筋肉の細胞があったり、神経の細胞がむき出しになっていたり…なんてことはありません。

それぞれの機能・形状をもった細胞はある程度集まり、存在しています。それぞれの細胞は、適切な場所に集まっていることで、その機能を果たすことができるのです。

このような、同じ機能・形状をもった細胞の集まりが「組織」とよばれます。

はい。動物の場合は、「上皮組織」「結合組織」「筋組織」「神経組織」の4つの組織に分けるのが一般的です。

今回は植物の組織についての学習ですが、植物の場合は組織の分け方がもう少し複雑になります。

植物の組織は大きく「分裂組織」と「永久組織」に分けられる

植物の組織は、まず大きく「分裂組織」と「永久組織」の2つのグループに分けて考えることができます。

分裂組織は、細胞分裂が盛んにおこなわれている組織をまとめたグループです。この後詳しくご紹介していきますが、植物体のどの場所にあるかによって、茎頂分裂組織や根端分裂組織などに細分することができます。

\次のページで「①分裂組織」を解説!/

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分裂した細胞が成熟し、それぞれの機能に分化した細胞からなるのが永久組織です。成熟組織とよばれることもあります。「分裂組織以外の部分」ととらえてしまっても構わないでしょう。こちらも位置する場所や機能によって表皮組織や通同組織などに分けられているんです。

植物体の中でも、分裂組織にあたる部分はごく一部。大部分は永久組織からなります。

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それでは、分裂組織と永久組織にふくまれる組織には、それぞれどんなものがあるのか、見ていきましょう。

①分裂組織

まずは分裂組織を見ていきましょう。

1.茎頂分裂組織

茎(シュート)の先端にある分裂組織が茎頂分裂組織(けいちょうぶんれつそしき)です。植物が地上部で茎をのばし、そのからだを縦方向に生長させていくときには、この茎頂分裂組織で盛んに細胞分裂が行われています。

2.根端分裂組織

茎頂分裂組織の反対、地下の根の先端にあり、盛んに細胞分裂を行う組織は根端分裂組織(こんたんぶんれつそしき)とよばれます。ここでの細胞分裂によって、根はどんどんとその長さを増していくのです。

なお、茎頂分裂組織と根端分裂組織は、まとめて頂端分裂組織(ちょうたんぶんれつそしき)ともいわれます。

また、植物の伸長(縦方向の生長)を引き起こすため、これらの組織のある部分は成長点という名前でもよばれるのです。

3.形成層

形成層(けいせいそう)は茎や根に存在し、それらが太くなっていく(肥大成長する)ために必要な分裂組織です。

形成層は全ての植物でみられるわけではなく、双子葉植物と裸子植物でよく発達します。

一般的に、形成層は維管束の木部と師部(篩部)の境に位置しています。形成層よりも内側が木部、外側が師部です。

\次のページで「②永久組織」を解説!/

②永久組織

植物の組織の分け方は、研究者や文献によって少しずつ表現が異なることがあります。今回は、永久組織の代表的な分類として、以下の4種類に分ける方法をご紹介しましょう。

1.表皮組織

葉の表面や根の表面に位置し、植物のからだを外部環境から隔てている組織を表皮組織(ひょうひそしき)とよびます。表皮組織系とよばれたり、ただ単に表皮系とだけ呼ばれることもあるようです。

Leaf Tissue Structure jp.svg
Zephyris, すじにくシチュー - このファイルの派生元:  Leaf Tissue Structure.svg, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

表皮組織はほとんどの場合、一層の平べったい細胞からなります。さらにその表面には、表皮を乾燥などから守るためのクチクラ層が存在していることも多いですが、クチクラ層自体は細胞ではありません。

表皮細胞が特殊化した細胞も、表皮組織に含まれます。ガス交換を行うための気孔を形作る孔辺細胞や、根毛になる細胞は、いずれも表皮組織が変化したものです。

2.通道組織

管状になり、植物の体内で水分や養分を輸送するための通り道となっている組織をまとめて通道組織(つうどうそしき)といいます。

地中から吸い上げた水分を輸送する道管や、葉でつくられた養分を輸送する師管の細胞は、この通道組織に含まれているんです。

なお、道管や師管、仮道管はそれぞれ木部師部に含まれていますよね。

木部は道管、仮道管だけでなく、道管を支える繊維(木部繊維)や柔細胞(木部柔細胞)によっても構成されているものです。繊維はこの後ご紹介する機械組織、柔細胞は同じく後ほど登場する柔組織に分類されます。師部についても、やはり師管だけでなく、繊維や柔組織が構成要素に加わるのです。

つまり、木部や師部、そしてそれらをまとめた「維管束」というのは、複数の組織からなる構造体だということになります。

3.機械組織

機械組織(きかいそしき)は、植物体を機械的に支持したり、保護する役目をもった組織です。前述のように、茎などにみられる繊維は、この機械組織にほかなりません。

機械組織の細胞は、細胞壁の全体、またはその一部が分厚くなっています。これにより、植物のからだをしっかりと支えることができるのです。

\次のページで「4.柔組織」を解説!/

4.柔組織

最後にご紹介するのが柔組織(じゅうそしき)。細かく見ると、この柔組織は同化組織貯蔵組織という2つに分けることができます。

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同化組織は葉緑体をもち、盛んに光合成をする細胞からなる組織です。葉にあるさく状組織海綿状組織は、この同化組織にふくまれます。

貯蔵組織は名前の通り、物質の貯蔵に関係する組織です。根や茎によくみられます。

この柔組織と機械組織は、まとめて基本組織系ともよばれます。

組織が集まると…?

組織は、さらにそれぞれが集まって”器官”を構成します。動物の場合、器官とは心臓や肝臓、肺といった「臓器」などのイメージです。植物における器官とは、根、葉、茎、花などを指します。

植物にせよ動物にせよ、組織が集まって器官をつくり、その集まりによって個体が構成されている、という点は共通です。それぞれの生物について研究する際には、個体レベルだけでなく、器官のレベル、組織のレベルで考えていくことも重要なんですよ。

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体の仕組み・器官理科生物

植物の「組織」を総まとめ!分裂組織と永久組織?現役講師がかんたんわかりやすく解説!

4.柔組織

最後にご紹介するのが柔組織(じゅうそしき)。細かく見ると、この柔組織は同化組織貯蔵組織という2つに分けることができます。

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同化組織は葉緑体をもち、盛んに光合成をする細胞からなる組織です。葉にあるさく状組織海綿状組織は、この同化組織にふくまれます。

貯蔵組織は名前の通り、物質の貯蔵に関係する組織です。根や茎によくみられます。

この柔組織と機械組織は、まとめて基本組織系ともよばれます。

組織が集まると…?

組織は、さらにそれぞれが集まって”器官”を構成します。動物の場合、器官とは心臓や肝臓、肺といった「臓器」などのイメージです。植物における器官とは、根、葉、茎、花などを指します。

植物にせよ動物にせよ、組織が集まって器官をつくり、その集まりによって個体が構成されている、という点は共通です。それぞれの生物について研究する際には、個体レベルだけでなく、器官のレベル、組織のレベルで考えていくことも重要なんですよ。

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