この記事では「一難去ってまた一難」について解説する。

端的に言えば一難去ってまた一難の意味は「災難が次々襲ってくること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「一難去ってまた一難」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「一難去ってまた一難」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一難去ってまた一難」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一難去ってまた一難」の意味は?

「一難去ってまた一難」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

一つの災難が過ぎてほっとする間もなく、また次の災難が起きること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一難(いちなん)去(さ)ってまた一難(いちなん)」

一難去ってまた一難」は「いちなん・さって・また・いちなん」と読み、「1つの災難が終わった後で、すぐに次の災難が発生する」という意味のことわざです。次々と運の悪い出来事や災い、不幸やトラブルに見舞われたときに使用することわざですね。

「一難去ってまた一難」の語源は?

次に「一難去ってまた一難」の語源を確認しておきましょう。

「一難去ってまた一難」の語源はよく分かっていません。現在に残る文献では、1902年に発行された宮崎滔天の自叙伝『三十三年の夢』の「前途は猶遼遠なり、行路難も亦未だ尽きざるなり、然り、一難漸く去りて一難復来れり」が初出です。ただ、ことわざであるため、これよりさらに前の時代から使われていたと考えられるでしょう。

「一難去ってまた一難」の使い方・例文

「一難去ってまた一難」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「一難去ってまた一難」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.大型台風の上陸被害からようやく復興したところで大地震が発生するとは、一難去ってまた一難だな…。
2.ようやく盲腸が完治して退院したのに、今度は交通事故で足を骨折してしまった…。一難去ってまた一難とはまさにこのことだよ。
3.リーグ打点トップの4番を打ち取ったが、次の5番バッターはリーグホームラン数トップだ。一難去ってまた一難の打線だな。

例文1では、「大型台風の被害」という災難が復興によって終了した直後に、「大地震」という新たな災難が発生した…という文脈で「一難去ってまた一難」が使用されています。

例文2では、「盲腸」という災難が退院したことにより終了しました。しかし、すぐ後に「交通事故に遭い骨折する」という新しい災難に見舞われました…という文脈で「一難去ってまた一難」が使用されています。

例文3では、「リーグ打率トップの4番打者と対戦する」という災難が、打ち取ったことで無事に終了しましたが、直後に「リーグホームラン数トップの5番と対戦する」という災難が控えている…という文脈で「一難去ってまた一難」が使用されていますね。

ここまで見てきた通り「一難去ってまた一難」は、1つ目の災難が終わり区切りがついたところで、すぐに2つ目の災難がやってくる…という意味となります。1つ目の災難と2つ目の災難が同時進行することは原則ないので気を付けましょう。

「一難去ってまた一難」の類義語は?違いは?

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「一難去ってまた一難」の類義語には「虎口を逃れて竜穴に入る」「前門の虎、後門の狼」「泣き面に蜂」があります。意味などを確認していきましょう。

その1「虎口を逃れて竜穴に入る」

虎口を逃れて竜穴に入る」は「ここうを・のがれて・りゅうけつに・はいる」と読む、「一難を逃れて、また他の難儀にあう。次々に災難にあうたとえ」という意味のことわざです。虎が住んでいる場所から逃れて別の穴に逃げたら、そこには竜が住んでいた…とはまさに恐ろしいですよね。

「一難去ってまた一難」とは意味やニュアンスの違いはありません。例文を確認してみましょう。

・上からハトが糞を落としてきたので避けたら、下にあった犬の糞を踏んでしまった。まさに虎口を逃れて竜穴に入るだな…。
・娘の高校受験がようやく終わったと思ったら、今年は息子の大学受験だ。虎口を逃れて竜穴に入るような展開だなぁ。

その2「前門の虎、後門の狼」

前門の虎後門の狼」は「ぜんもんのとら・こうもんのおおかみ」と読む、「一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ」の意味を持ったことわざです。中国の『評史』という書籍が由来となっています。前の門に虎がいて、それを避けても後ろの門に狼がいたら身動きが取れないですよね…。

こちらも、「一難去ってまた一難」と意味やニュアンスの違いはありません。例文を見てみましょう。

\次のページで「その3「泣き面に蜂」」を解説!/

・コストの値上がりには何とか対応したが、今度は売り上げの大幅減ときた。まさにうちの会社は前門の虎後門の狼の操業状態だ。
・今日は学校では先生に怒られ、家に帰ってはお母さんに怒られる。まさに前門の虎後門の狼の日だ。

その3「泣き面に蜂」

泣き面に蜂」は「なきつらに・はち」と読む、「不幸や不運が重なること」という意味のことわざです。表記や言い方は、「泣きっ面に蜂」と「」を加えても問題ありません。泣いている顔を蜂に刺されたら、災難のダブルパンチですよね…。

「一難去ってまた一難」とは、若干ニュアンスの違いがあるので気を付けましょう。「一難去ってまた一難」の場合は、1番目の災難が既に経穴している状態であることが暗示されるのに対し、「泣き面に蜂」の場合は、1番目の災難がまだ終わらないうちに、2番目(、3番目…)の災難が立て続けにやってきた…というニュアンスになります。

例文を見てみましょう。

・彼女にフラれたショックからまだ立ち直れていないのに、今度は会社をクビになった。まさに泣き面に蜂だ。
・ただでさえ売り上げが落ちていて厳しいところだったのに、コロナウイルスでさらに客が減ってしまった。泣き面に蜂だよ。

「一難去ってまた一難」の対義語は?

「一難去ってまた一難」の対義語は「渡りに船」です。意味などを確認していきましょう。

「渡りに船」

渡りに船」は「わたりにふね」と読み、「必要な物がそろったり、望ましい状態になったりして好都合なこと」という意味の慣用句です。これから川を渡ろうとするも交通手段がなくて困っているとき、突然船が現れたら助かりますよね。

「渡りに船」は厳密に言えば「一難去ってまた一難」の対義語ではありません。しかし、次々と災難が発生する様子を表す「一難去ってまた一難」と、必要な時に幸運が訪れる「渡りに船」には反対の意味があるともいえるでしょう。

例文を見てみましょう。

・最近パソコンの調子が悪かったが、電器屋さんに行くと新モデルが半額セールで販売されていたため、渡りに船と思って買ってしまった。
・お財布の事情が厳しく、給料日までは外食は控えようと思っていたが、部長がおごってくれるというので、渡りに船と思いついていった。

「一難去ってまた一難」の英訳は?

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「一難去ってまた一難」の英語表現は「out of the frying pan and into the fire」です。意味などを確認していきましょう。

\次のページで「「out of the frying pan and into the fire」」を解説!/

「out of the frying pan and into the fire」

out of the frying pan and into the fire」は直訳すると「フライパンの中から火の中へ」となり、「一難去ってまた一難」を表す英語のことわざです。英語にも同じ意味を表すことわざがあるのは驚きですよね。

例文を見てみましょう。

This is an instance of "out of the frying pan into the fire".

これはまさに「一難去ってまた一難」だ。

「一難去ってまた一難」を使いこなそう

この記事では「一難去ってまた一難」の意味・使い方・類語などを説明しました。

一難去ってまた一難」は「1つの災難が終わった後で、すぐに次の災難が発生する」という意味のことわざです。運の悪い出来事や大変なことが次々と発生するような場合に使用します。

ただ、「一難去ってまた一難」には、1つ目の災難が終わり区切りがついたところで、すぐに2つ目の災難がやってくる…というニュアンスがある点は注意が必要です。同時進行では原則ありません。ここが類義語の「泣き面に蜂」との微妙な違いですね。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「一難去ってまた一難」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「一難去ってまた一難」について解説する。

端的に言えば一難去ってまた一難の意味は「災難が次々襲ってくること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「一難去ってまた一難」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「一難去ってまた一難」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一難去ってまた一難」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一難去ってまた一難」の意味は?

「一難去ってまた一難」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

一つの災難が過ぎてほっとする間もなく、また次の災難が起きること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一難(いちなん)去(さ)ってまた一難(いちなん)」

一難去ってまた一難」は「いちなん・さって・また・いちなん」と読み、「1つの災難が終わった後で、すぐに次の災難が発生する」という意味のことわざです。次々と運の悪い出来事や災い、不幸やトラブルに見舞われたときに使用することわざですね。

「一難去ってまた一難」の語源は?

次に「一難去ってまた一難」の語源を確認しておきましょう。

「一難去ってまた一難」の語源はよく分かっていません。現在に残る文献では、1902年に発行された宮崎滔天の自叙伝『三十三年の夢』の「前途は猶遼遠なり、行路難も亦未だ尽きざるなり、然り、一難漸く去りて一難復来れり」が初出です。ただ、ことわざであるため、これよりさらに前の時代から使われていたと考えられるでしょう。

「一難去ってまた一難」の使い方・例文

「一難去ってまた一難」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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