この記事では「胸を撫で下ろす」を解説する。
慣用句「胸を撫で下ろす」は簡単に言うと「安心する」意味です。不安なことや悩み事があると胸が詰まる思いをするよな、それがすっと下りる感覚でしょう。良く耳にする言葉だから、くわしい意味や使い方を知って使いこなせるようになろう。
今回、いつも不安なペシミスト・語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「胸を撫で下ろす」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「胸を撫で下ろす」の意味・使い方

image by iStockphoto

緊張や強い不安があるとドキドキする胸に手を当てますよね。そして解消されると「あ~良かった」とその手を下ろす。これが「胸を撫(な)で下(お)ろす」しぐさです。慣用句としてだけでなく実際にしている「胸を撫で下ろす」、くわしく意味をみていきましょう。

「胸を撫で下ろす」の意味

まずは辞書で意味を調べてみましょう。

心配事が解決してほっとする。安心する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胸(むね)を撫(な)で下(お)ろ・す」より

意味の説明にある「ほっとする」とは緊張がとけて安心する、気持ちが楽になることです。「ほっと」は息をはくオノマトペ、不安で詰まっていた息がはき出され体の力が抜けた感でしょう。胸は人でいうと横隔膜よりも上の部分、心臓や肺・胃・乳房、そして心などの意味があります。「胸を撫で下ろす」は心配事から解放され、手で胸を撫でて下ろすこと、また、ほっと大きな呼吸をしたともいえるでしょう。

「胸」を使う慣用句はたくさん!

緊張や悩み事から解放され安心する「胸を撫で下ろす」は、「胸のつかえが下りる」とも表現できます。「つかえ」は「痞え」と書き、病気や心配で胸が詰まるような感じがするものです。これが下りるとはなくなること。苦しい胸の内が解決した比ゆ的表現です。

ほかにも「胸」を使う慣用句はたくさんあります。たとえば「胸がおどる」は期待や興奮でわくわくすること、「胸をたたく」は相手の依頼を引き受ける気持ちの表現、「胸が悪い」は腹立たしいなど。続きは対義語の項でご紹介しますね。

\次のページで「「胸を撫で下ろす」の使い方・例文」を解説!/

「胸を撫で下ろす」の使い方・例文

意味が分かったので、使って確認しましょう。

・入学試験、合格の便りに当人はもちろん家族も胸を撫で下ろした。
・実家近くの河が氾濫、家族全員の無事を確認して私は胸を撫で下ろした。
・健康診断で引っかかった夫は精密検査を受けたが異常なし。妻子は胸を撫で下ろした。

いずれも心配事が解消されて安心したことを表した例文です。試験の結果発表はどんなものでもドキドキ。受けた人よりも家族が気になってしかたがないものです。また、いつ起こるかわからない災害、家族知人の安否確認は絶対しますよね。病気の気配、しっかり状態を調べてもらわないと自分も家族も不安でなりません。不調のサインは見逃さず、早め早めの対処が有効ですよ。

「胸を撫で下ろす」の類義語は?

image by iStockphoto

それでは、心配事がなくなってほっとする表現で別の言葉をみていきましょう。

「安堵(あんど)」:うまくいって安心すること

「安堵」とは気がかりなことがなくなって安心することです。「堵」とは垣根のことで、垣根の内に安心していること、安心して住まう意味もあります。8世紀「続日本紀」の言葉からですから、ずいぶん昔ですね。13世紀ごろから心が落ち着くといった意味でも使われるようになりました。「交通事故にあった母の怪我が軽くて安堵した」「迷子の息子が無事見つかって安堵した」と使います。

\次のページで「「安心」:心が落ち着いていること」を解説!/

「安心」:心が落ち着いていること

今までの説明でも何度も使っていますが「安心」は、気がかりなことがなく心が落ち着いていることです。「安心安全に仕事をしてほしい」「彼がいると心強い、安心だ」と使います。

「安心」と「安堵」の違いをお伝えしましょう。上記例文にもあるように「安心」は形容動詞として使いますが「安堵」は使えません。また「安心」は長く続く状態も表現「安堵」は瞬間的です。

「愁眉(しゅうび)を開く」:悲しみや心配がなくなる

「眉」はまゆで、「愁眉」は心配そうな顔つきをいいます。「愁眉を開く」とはぎゅっとしかめていた眉を元に戻すこと、すなわち、心配事や憂いがなくなって表情が明るくなる、ほっとした顔つきになることです。「合格の朗報に、娘は愁眉を開いて喜んだ」「大事な指輪が見つかった彼女は愁眉を開いた」と使います。

「胸を撫で下ろす」の対義語はなんだろう

image by iStockphoto

では次に安心するの反対語、不安である・安心できないといった関連の言葉をご紹介します。

「胸がつぶれる」:心配で苦しくなる

「胸」を使った慣用句「胸がつぶれる」は悲しみや心配事で胸がつぶれるように苦しくなることです。「母の病気の報告に胸がつぶれるようだった」「突然の恩師の悲報、生徒たちの胸がつぶれた」と使います。

切なくてたまらない気持ちを「胸が締め付けられる」、苦痛を感じて「胸が張り裂ける」とも表現します

\次のページで「「憂慮(ゆうりょ)」:とても心配すること」を解説!/

「憂慮(ゆうりょ)」:とても心配すること

「憂慮」とは強い危機感があってとても心配すること、「うりょ」は誤読です。「憂」は「うれ・える」や「う・い」と読み、心配すること、嘆き・悲しみなどもいいます。使い方は「長期間の紛争を憂慮する」「急激な円安は憂慮すべき状態だ」などです。

「心痛(しんつう)」:心配して心が痛むこと

「心痛」はひどく心配すること・心配して思い悩むこと・胸が痛くなることをいいます。使い方は「事件に巻き込まれた彼女を思って心痛する」「不良行動ばかりする息子に心痛した母は寝込んでしまった」などです。

「胸を撫で下ろす」の英訳は?

image by iStockphoto

「胸を撫で下ろす」を英語でどう表現するのでしょう。胸は英語で「chest」、心・心臓なら「heart」ですが、意味に相応しい慣用句や句動詞的表現はないようです。そこで「relief:安心」「relieved:安心した」の使い方をご紹介しましょう。

「be relieved」:安心した

名詞「relief」は安心・救援などと訳される単語で、カタカナ日本語でも「リリーフ」と使われ、野球で継投する選手をいいますね。動詞が「relieve」:和らげる・楽にする、その過去形・過去分詞形が「relieved」:安心した・ほっとした・解放されたと訳されます。「that」や「to」「at」などで何に安堵したのか表現できます、例文で確認しましょう。

・I was relieved at her words.
(私は彼女の言葉に胸を撫で下ろした)
・He was relieved to hear that news.
(彼はそのニュースを聞いて胸を撫で下ろした)
・She was relieved that her friend passed it.
(友人の試験合格に彼女はほっとした)

「胸を撫で下ろす」でリラックスしよう

この記事では「胸を撫で下ろす」の意味・使い方・類語などを説明しました。意味は心配事がなくなって安心すること、類義語は「安堵」、対義語は「胸がつぶれる」、英語は「be relieved」と表現できることが分かりましたね。

人は不安な時またはリラックスしたい時に自分の体を触るくせがあるようです。髪や顔を触ったり、爪を噛んだり、腕を組んだりする動作で「自己親密行動」「自己タッチ」といわれています。「胸を撫で下ろす」もストレスから解放された時の無意識のしぐさかもしれませんね。

" /> 簡単でわかりやすい!「胸を撫で下ろす」の意味や使い方は?類語や「胸」を使った慣用句を語学系主婦ライターが詳しく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

簡単でわかりやすい!「胸を撫で下ろす」の意味や使い方は?類語や「胸」を使った慣用句を語学系主婦ライターが詳しく解説

この記事では「胸を撫で下ろす」を解説する。
慣用句「胸を撫で下ろす」は簡単に言うと「安心する」意味です。不安なことや悩み事があると胸が詰まる思いをするよな、それがすっと下りる感覚でしょう。良く耳にする言葉だから、くわしい意味や使い方を知って使いこなせるようになろう。
今回、いつも不安なペシミスト・語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「胸を撫で下ろす」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「胸を撫で下ろす」の意味・使い方

image by iStockphoto

緊張や強い不安があるとドキドキする胸に手を当てますよね。そして解消されると「あ~良かった」とその手を下ろす。これが「胸を撫(な)で下(お)ろす」しぐさです。慣用句としてだけでなく実際にしている「胸を撫で下ろす」、くわしく意味をみていきましょう。

「胸を撫で下ろす」の意味

まずは辞書で意味を調べてみましょう。

心配事が解決してほっとする。安心する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胸(むね)を撫(な)で下(お)ろ・す」より

意味の説明にある「ほっとする」とは緊張がとけて安心する、気持ちが楽になることです。「ほっと」は息をはくオノマトペ、不安で詰まっていた息がはき出され体の力が抜けた感でしょう。胸は人でいうと横隔膜よりも上の部分、心臓や肺・胃・乳房、そして心などの意味があります。「胸を撫で下ろす」は心配事から解放され、手で胸を撫でて下ろすこと、また、ほっと大きな呼吸をしたともいえるでしょう。

「胸」を使う慣用句はたくさん!

緊張や悩み事から解放され安心する「胸を撫で下ろす」は、「胸のつかえが下りる」とも表現できます。「つかえ」は「痞え」と書き、病気や心配で胸が詰まるような感じがするものです。これが下りるとはなくなること。苦しい胸の内が解決した比ゆ的表現です。

ほかにも「胸」を使う慣用句はたくさんあります。たとえば「胸がおどる」は期待や興奮でわくわくすること、「胸をたたく」は相手の依頼を引き受ける気持ちの表現、「胸が悪い」は腹立たしいなど。続きは対義語の項でご紹介しますね。

\次のページで「「胸を撫で下ろす」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: