この記事では、「尊ぶ」について解説する。
「尊ぶ」は現代文の授業なんかでも勉強するし、使われている漢字はわりかし普段から目にすることが多いでしょう。ですが「尊ぶ」という言葉の意味は理解できているようで、いざ説明を求められると、できるかどうか怪しい言葉の筆頭じゃないか?
今回は「尊ばれる」とは程遠い存在のライターである、ぷーやんを呼んです。自分とは縁がなさ過ぎて逆に気になり、「尊ぶ」の意味を調べたらしいのです。せっかくだからみんなに向けて説明してもらおう。

ライター/ぷーやん

webライター歴7年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。「尊ぶ」の意味を体感的に捉えられずに悩んだことがある。

「尊ぶ」の意味って?

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まずは「尊ぶ」の意味を、辞書と例文でみていきます。辞書で「尊ぶ」を引くにあたり、読み方に迷う方も多いでしょう。「尊ぶ」は「とうとぶ」または「たっとぶ」と読みます。どちらの読み方も間違いではありません。

辞書にみる「尊ぶ」

「尊ぶ」は、国語辞典で次のように書かれています。

[動バ五(四)]
1尊いものとしてあがめる。たっとぶ。「神仏を―・ぶ」
2 価値あるものとして重んじる。尊重する。たっとぶ。「人命を―・ぶ」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「尊ぶ」

「尊い」は「貴重である」や「敬うべき」という意味。対象を価値の高い、大切なものと思うことが「尊ぶ」ということです。自分自身がおのずから貴重だと思えることを、「尊ぶ」ことは簡単ですね。

問題はそうでもないことを、「尊ぶ」べきだと言われたときです。よく言われる『他人の意見を尊びましょう』などは、筆者はどうしても受け入れられませんでした。これが「尊ぶ」という言葉の難しいところではないでしょうか。この点は、この記事の最後にすこし考えてみることにします。

「尊ぶ」と「貴ぶ」の違いは?

さて「たっとぶ」あるいは「とうとぶ」とパソコンやスマホで変換すると、「尊ぶ」と「貴ぶ」の2通りの漢字が出てくるのではないでしょうか。これらはほとんど同じ意味ですが、それぞれの漢字は以下のように成り立っています。

尊ぶ:両手と酒だるの象形からなる漢字。
貴ぶ:貨幣が満たされている象形からなる漢字。

「尊ぶ」はお酒を捧げている形から、神仏など敬うべきと主観的に判断したものに対して使うイメージ。一方「貴ぶ」は客観的な価値を持つものを大切にする、というニュアンスですね。

\次のページで「例文で「尊ぶ」の使い方を確認!」を解説!/

例文で「尊ぶ」の使い方を確認!

辞書で言葉の意味を押さえたあとは、使い方が気になってくるもの。例文で「尊ぶ」がどのように使われるのかをみていきましょう。

1.彼は持論を披露することが好きなようだが、他人の意見を「尊ぶ」ことをしないので、まったく成長しない。
2.日々の生活の目まぐるしさのなかでは、自分が「尊ぶ」べきものを見失いがちだ。

例文1のように、自分の信じる考え方や成功体験を語りたくなるのは、人情というもの。しかし自分のことばかり話す人と一緒にいるのは、苦痛に感じる方も多いでしょう。例文2はいわゆる、『失って初めて大切さに気づく』というやつですね。日常の喧騒からちょっと心理的に離れて、一人でまったりと過ごして頭のなかを整理する時間を持ちたいものです。

「尊ぶ」の類義語3選!

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それでは、「尊ぶ」に関係する言葉について、類義語からご紹介します。

重んずる:価値あるものとしてみる

「重要」の意味の「重」を用いた表現です。同じく「重」を使って、『重きを置く』などとも言いますね。

崇(あが)める:大事に扱う

神様や教祖などを対象にして使われることが多く、宗教的な雰囲気のある言い回しです。宗教はもともと、人智を超えたものに対する畏怖の念によって興った側面もあります。

畏(おそ)れる:近づきがたいものとして敬う

単に怖いだけというよりは、敬いの心も含蓄した表現方法といえるでしょう。

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「尊ぶ」の対義語はなにがある?

「尊ぶ」の類義語の次は、対義語を押さえておきます。

卑(いや)しむ:見下す

『下品なものとみなして軽蔑する』という意味合いの言葉。よく『卑下する』とも言われます。

軽んずる:大切に想わない

類義語で挙げた「重んずる」に対する、とてもわかりやすい反対語です。価値がないものとみなすようなニュアンスですね。

見くびる:過小評価する

「くびる」は「首を絞めて絶命させる」という、過激な言葉です。「見くびる」は、『パッと見で切り捨てる』といったイメージで、対象を取るに足らないものと判断してしまうことを意味します。

「尊ぶ」の英語訳は?

「尊ぶ」の類義語と対義語を確認してきました。これらに加えて英語訳を押さえておくと、言葉の意味の理解がはかどるものです。「尊ぶ」の英語表現には、どんなものがあるでしょうか。

respect:尊重する

『リスペクト』はカタカナ英語として、すっかり定着していますね。あらためてこの単語の和訳をみてみると、動詞としては「尊重する」「敬う」「留意する」とあります。価値のあるものと認めて、気に留めておくといったニュアンスです。

esteem:尊重する

英和辞典で引くと、「尊重する」「重んじる」「高く評価する」と書かれている、「尊ぶ」の英語訳にぴったりな単語です。

\次のページで「人を「尊ぶ」とはどういうこと?」を解説!/

人を「尊ぶ」とはどういうこと?

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だれでも学校などで一度は、『人のことを尊びなさい(尊重しなさい)』と言われたことがあるのではないでしょうか。多くの方が受け入れられる言葉かと思いますが、筆者のように『嫌いなやつを重んじられない』という方も、決して少なくないでしょう。おそらく少数派であろうそんな方のために、「尊ぶ」ことの本質を考えてみたいと思います。

「尊ぶ」ことができないと敵だらけになる?

『嫌いな人を「尊ぶ」ことができない』という方は、二極化した考え方をされていませんでしょうか。認知療法で『白黒思想』とも呼ばれるこの考え方のもとでは、『正しいか間違っていないか』が判断基準になっていることでしょう。

しかし『正しさ』とは多くの場合、個人の哲学によるもの。自分の正しさにそぐわない他人を否定することは、 『他人も自分を否定しているのでは』という疑念を、無意識だとしても引き起こします。

これをこじらせると自分の行動のほとんどが否定される可能性にさらされ、身を護るために攻撃的になり、毎日が怒りと哀しみに満たされてしまうことになりかねません。本当は違うのに、周囲の人を敵だと認識してしまうということですね。これでは自分らしく振る舞うことも難しくなってしまいます。

「尊ぶ」ことのメリットとは?

一方で他人を「尊ぶ」ことができると、他人も自分を否定しないという想いにつながり、余計な闘争心がなくなって精神的に穏やかになれるのではないでしょうか。人に対して寛容になることは、自分が自分らしく生きられるようになるということ。こうしてお互いがお互いを人として大切にできるようになれば、助け合いが自然にできるようにもなるでしょう。

正当化ではなく「尊ぶ」

「尊ぶ」にあたって、一つ注意したいことがあります。それは「尊ぶ」ことは正当化することではない、ということ。極端な例ですが、ハラスメントをする人の言動を容認することは、その人を「尊ぶ」ということではありません。間違っていると思うことは、はっきりと『間違っている』と伝えてもOK。なぜならば、『間違っている』と思うあなた自身も「尊ばれる」べきだからです。

他人も自分も「尊ぶ」ことが大切

この記事では「尊ぶ」の意味について、様々な関連語とともに解説しました。また「尊ぶ」ということの、見逃されがちな意義や理由についても考察しています。

「尊ぶ」ことを自然にできている方にとっては、疑問に思う人がいることがむしろ疑問になるのではないでしょうか。とはいえ、『なぜ尊重しなければいけないのか?』と直接問われたとき、明確に答えることの難しい問題でもあると思います。大げさですが、人類の命題かもしれませんね。

この記事が「尊ぶ」という言葉の意味を確認し、『なぜ「尊ぶ」のか?』ということを考えてみるきっかけになれば幸いです。

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国語言葉の意味

「尊ぶ」と貴ぶの違いとは?言葉の意味・使い方・例文・類語・反対語・英語とともにwebライターが解説!

人を「尊ぶ」とはどういうこと?

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だれでも学校などで一度は、『人のことを尊びなさい(尊重しなさい)』と言われたことがあるのではないでしょうか。多くの方が受け入れられる言葉かと思いますが、筆者のように『嫌いなやつを重んじられない』という方も、決して少なくないでしょう。おそらく少数派であろうそんな方のために、「尊ぶ」ことの本質を考えてみたいと思います。

「尊ぶ」ことができないと敵だらけになる?

『嫌いな人を「尊ぶ」ことができない』という方は、二極化した考え方をされていませんでしょうか。認知療法で『白黒思想』とも呼ばれるこの考え方のもとでは、『正しいか間違っていないか』が判断基準になっていることでしょう。

しかし『正しさ』とは多くの場合、個人の哲学によるもの。自分の正しさにそぐわない他人を否定することは、 『他人も自分を否定しているのでは』という疑念を、無意識だとしても引き起こします。

これをこじらせると自分の行動のほとんどが否定される可能性にさらされ、身を護るために攻撃的になり、毎日が怒りと哀しみに満たされてしまうことになりかねません。本当は違うのに、周囲の人を敵だと認識してしまうということですね。これでは自分らしく振る舞うことも難しくなってしまいます。

「尊ぶ」ことのメリットとは?

一方で他人を「尊ぶ」ことができると、他人も自分を否定しないという想いにつながり、余計な闘争心がなくなって精神的に穏やかになれるのではないでしょうか。人に対して寛容になることは、自分が自分らしく生きられるようになるということ。こうしてお互いがお互いを人として大切にできるようになれば、助け合いが自然にできるようにもなるでしょう。

正当化ではなく「尊ぶ」

「尊ぶ」にあたって、一つ注意したいことがあります。それは「尊ぶ」ことは正当化することではない、ということ。極端な例ですが、ハラスメントをする人の言動を容認することは、その人を「尊ぶ」ということではありません。間違っていると思うことは、はっきりと『間違っている』と伝えてもOK。なぜならば、『間違っている』と思うあなた自身も「尊ばれる」べきだからです。

他人も自分も「尊ぶ」ことが大切

この記事では「尊ぶ」の意味について、様々な関連語とともに解説しました。また「尊ぶ」ということの、見逃されがちな意義や理由についても考察しています。

「尊ぶ」ことを自然にできている方にとっては、疑問に思う人がいることがむしろ疑問になるのではないでしょうか。とはいえ、『なぜ尊重しなければいけないのか?』と直接問われたとき、明確に答えることの難しい問題でもあると思います。大げさですが、人類の命題かもしれませんね。

この記事が「尊ぶ」という言葉の意味を確認し、『なぜ「尊ぶ」のか?』ということを考えてみるきっかけになれば幸いです。

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