この記事では「分をわきまえる」について解説する。

端的に言えば分をわきまえるの意味は「身の程を心得て、出しゃばらない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「分をわきまえる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「分をわきまえる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「分をわきまえる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「分をわきまえる」の意味は?

「分をわきまえる」の意味を知るために、「分(ぶん)」と「わきまえる」について調べましょう。「分」「わきまえる」には、次のような意味があります。

1.分けられた部分。分けまえ。
2.ある範囲の分量。区別されたもの。
3.その人の持っている身分や能力。身の程。分際。
4.当然なすべきつとめ。本分。
5.物事の状態・様子・程度。
6.仮にそうであるとする状態。
7.しな。ほう。
8.それだけのこと。だけ。
9. 他の名詞につけて用いる。
㋐それに相当するもの、それに見合うものの意を表す。
㋑その身分に準じる意を表す。
㋒成分の意を表す。
㋓区切られた時間の意を表す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「分」

1.物事の違いを見分ける。弁別する。区別する。
2.物事の道理をよく知っている。心得ている。
3.つぐなう。弁償する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「わきまえる」

それぞれたくさんの意味がありますね。「分」の3の意味と「わきまえる」の2の意味に注目しましょう。「その人の身分、見の程、分際」を「よく心得ている」となります。これが「分をわきまえる」の意味。「分をわきまえる」とは、身の程をよく心得ていて出しゃばらないことをいいます。

「分をわきまえる」の読み方は、「ぶをわきまえる」「ぶんをわきまえる」どちらも間違いではありません。「分が悪い」では「ぶ」、「分不相応」では「ぶん」と読むため、正解はどちらだと気になるかもしれませんね。しかし、どちらで読んでも大丈夫です。

\次のページで「「分をわきまえる」の語源は?」を解説!/

「分をわきまえる」の語源は?

次に「分をわきまえる」の語源を確認しておきましょう。

「分」という字は「八(右と左に分ける意味)」と「刀」でできています。つまり「2つに切り分ける」という意味。人と人には違いがあり「分かれて」います。農業を営む人、医者、料理人、政治家…それぞれの能力の「持ち前」があるわけです。この「持ち前」が「身の程」という意味につながっています

「わきまえる」は、漢字では「弁える」と書くのを知っていますか?しかし、これは戦後決められた制度によるもの。本来は「辨える」と書くのです。「辨」の字には「区別する」という意味があり、そのとおり「わきまえる」には「物事の違いを見分ける」という意味があります。そこから「違いが分かる」すなわち「ものごとを心得ている」という意味が生まれたのですね。

「分をわきまえる」の使い方・例文

「分をわきまえる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.相手は関連子会社200社をもつグループ企業の創業者だぞ、分をわきまえなさい!君は自分の立場というものをまったく分かっていない!
2.空気を読んで発言しろだの、分をわきまえた行動をとれだの、身の丈に合った服装をしろだの…上司の時代遅れの価値観にはもうウンザリだ。
3.江戸時代は生まれつき身分が決まっていたが、お互いが分をわきまえてのんびり暮らしていたという。現代の競争社会より幸福度は高かったかもしれない。

どの「分をわきまえる」も、「身の程を心得て、出しゃばらない」という意味が感じとれますね。

例文1は、大企業の創業者に対する態度について「分をわきまえろ」とお叱りを受けている文章です。例文2では、会社で「分をわきまえた行動」を求められることに対しヘキエキとしています。日常ではこのように、誰かに対して命令したり呼びかけたりする形で使うことが多いでしょう。

例文1と2の重い雰囲気とは逆に、例文3は「分をわきまえる」良さを示している文章です。生まれつき身分が決まっていることを「不平等」ととらえるのは簡単ですが、江戸時代の町民は武士になりたいなどとはあまり考えず、「分をわきまえて」平和に暮らしていたと考えられています。考えてみると時代劇に出てくる町の人々は、みな平和に暮らしているようにみえますね。

「分をわきまえる」の類義語は?違いは?

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「分をわきまえる」の類義語には「分相応(ぶんそうおう)」があります。

\次のページで「「分相応(ぶんそうおう)」」を解説!/

「分相応(ぶんそうおう)」

「分相応」とは、身の程につりあっているという意味。「相応しい」と書いて「ふさわしい」と読むため、まさに「身の程に相応しい」と書いて「分相応」というわけです。「身の程を心得て、出しゃばらない」という意味の「分をわきまえる」とニュアンスがとても似ていますね。

「分相応の暮らしをする」と「分をわきまえた暮らしをする」、どちらも自分を律して質素に暮らしているような、ちょっと地味なイメージでしょうか。しかし「分相応に楽しむ」「分をわきまえて楽しむ」からは、ちゃっかりした明るさを感じませんか。「分相応」は、決してネガティブな言葉ではないのです。

「分をわきまえる」の対義語は?

「分をわきまえる」の対義語には「KY(ケーワイ)」があげられます。

「KY(ケーワイ)」

若者発祥の言葉が出てきて驚いたでしょうか。世間に広く浸透した「KY」は、辞書にも載っているのです(下に引用を掲載)。

「身の程を心得て、出しゃばらない」という「分をわきまえる」は、現代の感覚でいうところの「空気を読む」に当たるのではないでしょうか。逆に空気を読まないのが「KY」。「身の程なんて気にしない、出しゃばりたければ出しゃばる」という人がいたら、それはまさに「KY」でしょう。

しかし「KY」がその場の雰囲気を救うこともあります。忖度ばかりでは前に進めないと思った経験、みなさんはないでしょうか?

《「空気(kūki)を読めない(yomenai)」または「空気(kūki)を読め(yome)」の頭文字から》俗に、その場の雰囲気にふさわしくない発言や行動をする人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「KY」

「分をわきまえる」の英訳は?

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「分をわきまえる」の英訳には「know one's place」を使います。

「know one's place」

「know one's place」を直訳すると「自分の場所を知っている」。「場所」を「立ち位置」と意訳すると分かりやすくなりますね。「立ち位置を知っている」つまりは「分をわきまえている」という意味になります。

込める気持ちの強さやシチュエーションにより「know one's place」以外の表現も使えますよ。いくつか紹介します。

\次のページで「「分をわきまえる」を使いこなそう」を解説!/

He doesn't know his place.
(彼は分をわきまえていない。)

Pay more regard to your social standing.
(もっと分をわきまえたまえ。)

She should never forget who she is.
(彼女は分をわきまえるべきだ。)

「分をわきまえる」を使いこなそう

この記事では「分をわきまえる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「分をわきまえる」は「身の程を心得て、出しゃばらない」という意味の言葉です。日常では「分をわきまえなさい」のように、呼びかけの形や命令形で使うことが多いでしょう。

「分をわきまえる」という言葉からは、上を目指さずとも目の前の人生を楽しく過ごしていた、昔の人の明るさや強さを垣間見れます。人から強いられるのではなく、自分から「分をわきまえる」のが本来のありかたであり、この言葉の本来の使われ方なのではないでしょうか。

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国語言葉の意味

「分をわきまえる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「分をわきまえる」について解説する。

端的に言えば分をわきまえるの意味は「身の程を心得て、出しゃばらない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「分をわきまえる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「分をわきまえる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「分をわきまえる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「分をわきまえる」の意味は?

「分をわきまえる」の意味を知るために、「分(ぶん)」と「わきまえる」について調べましょう。「分」「わきまえる」には、次のような意味があります。

1.分けられた部分。分けまえ。
2.ある範囲の分量。区別されたもの。
3.その人の持っている身分や能力。身の程。分際。
4.当然なすべきつとめ。本分。
5.物事の状態・様子・程度。
6.仮にそうであるとする状態。
7.しな。ほう。
8.それだけのこと。だけ。
9. 他の名詞につけて用いる。
㋐それに相当するもの、それに見合うものの意を表す。
㋑その身分に準じる意を表す。
㋒成分の意を表す。
㋓区切られた時間の意を表す。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「分」

1.物事の違いを見分ける。弁別する。区別する。
2.物事の道理をよく知っている。心得ている。
3.つぐなう。弁償する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「わきまえる」

それぞれたくさんの意味がありますね。「分」の3の意味と「わきまえる」の2の意味に注目しましょう。「その人の身分、見の程、分際」を「よく心得ている」となります。これが「分をわきまえる」の意味。「分をわきまえる」とは、身の程をよく心得ていて出しゃばらないことをいいます。

「分をわきまえる」の読み方は、「ぶをわきまえる」「ぶんをわきまえる」どちらも間違いではありません。「分が悪い」では「ぶ」、「分不相応」では「ぶん」と読むため、正解はどちらだと気になるかもしれませんね。しかし、どちらで読んでも大丈夫です。

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