この記事では「一寸の虫にも五分の魂」について解説する。

端的に言えば一寸の虫にも五分の魂の意味は「非力でも馬鹿にできない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸の虫にも五分の魂」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸の虫にも五分の魂」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸の虫にも五分の魂」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸の虫にも五分の魂」の意味は?

「一寸の虫にも五分の魂」には、次のような意味があります。

どんなに小さく弱いものにも相応の意地があるのだから侮ってはならないということ。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「一寸の虫にも五分の魂」

一寸は尺貫法の単位で約3cmです。また五分は約1.5cmになります。「一寸の虫にも五分の魂」とはそれほど小さな虫にも意地があるという意味がこめられたことわざです。これを人間になぞらえてどんなに非力な弱者であっても、なにかしらの取り柄があるからけっして侮ったり馬鹿にしてはいけないとの戒めがこめられています。

「一寸の虫にも五分の魂」の語源は?

次に「一寸の虫にも五分の魂」の語源を確認しておきましょう。その由来には諸説あります。一番有力な説が鎌倉時代に六波羅探題や執権の補佐を務めた北条重時が武士としての心構えを説いた『極楽寺殿御消息(ごくらくじどのごしょうそく)』です。この書には「たとへにも一寸のむしには、五分のたましゐとて、あやしの虫けらもいのちをはをしむ事我にたかふへからす」と書かれており、これが初出ではないかと言われています。また近松門左衛門作の浄瑠璃『天智天皇』にも「青蝿は小さいけれども毒あって、腹中に入って五尺の人の命を取る。一寸の虫に五分の魂」のくだりがあるほか、勝海舟の父親・勝小吉(こきち)が町人を切り捨てた武士に立腹し言い放った言葉からきているとの説もあります。この場合、町人を虫に例えているわけですから、勝小吉も旗本として町人を見下していたことがはからずも明らかになりました。

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「一寸の虫にも五分の魂」の使い方・例文

「一寸の虫にも五分の魂」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.甲子園でいきなり強豪校と対戦することになってしまった。一寸の虫にも五分の魂だ、力を合わせて意地を見せつけてやろう。
2.今度就職しようとする会社は名にし負う大企業で、優秀な人材が入社しようと試験に臨むから、かなり激戦になるだろう。しかし一寸の虫にも五分の魂の意気込みでがんばろう。
3.一寸の虫にも五分の魂というから、どんなに小さな虫でも無益な殺生はしてはいけない。

「一寸の虫にも五分の魂」とは、単に虫のことを指して言っているのではありません。私たち人間にこそ当てはまるのです。たとえどんな身分や職業であろうが、一生懸命生きている人たちには人それぞれに意地や根性があることを表現しています。そのような一人の小さな人間の心意気が大切だと教えているのです。

「一寸の虫にも五分の魂」の類義語は?違いは?

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次に「一寸の虫にも五分の魂」の類義語を見ていきましょう。

その1「山椒は小粒でもぴりりと辛い」

「山椒は小粒でもぴりりと辛い」は「一寸の虫にも五分の魂」と似た意味の言葉です。山椒の実は非常に小さなものですが、強い辛みがあります。小さな実だからと侮っていると思いがけない辛さに驚くから馬鹿にしてはいけないとの教えです。

\次のページで「その2「蛞蝓にも角」」を解説!/

その2「蛞蝓にも角」

「蛞蝓(なめくじ)にも角」とは蛞蝓のような小さな生き物にも一人前の角が生えているという意味で、「一寸の虫にも五分の魂」と同じようなことを表す言い方です。

その3「痩せ腕にも骨」

「瘦せ腕にも骨」とは、どんなに細い腕でも骨が通っていることを表しています。いかに弱々しく見えてもそれなりの気骨はあるという意味で「一寸の虫にも五分の魂」の類義語と言えるでしょう。

その4「匹夫も志を奪うべからず」

「匹夫(ひっぷ)も志を奪うべからず」の匹夫とは身分の卑しい男のことです。たとえどんなに身分の低い立場の人間であっても、その志を奪うことは誰にもできないという意味で少々ニュアンスは違いますが、「一寸の虫にも五分の魂」の類義語としてもいいでしょう。なお似た言葉に「匹夫の勇」がありますが、こちらは血気にはやるだけのつまらない勇気のことですからまったく意味が違います。

「一寸の虫にも五分の魂」の対義語は?

続いて「一寸の虫にも五分の魂」の対義語を紹介しましょう。

その1「独活の大木」

「独活(うど)の大木」の独活は草類の一種で樹木ではありません。1.5mほどに育ちますが、茎は食用にもならず柔らかすぎて木材にも適さないところから「大きいだけでなんの役にも立たない」との意味になりました。「一寸の虫にも五分の魂」の対義語としてふさわしいでしょう。ただし独活の若芽は食用になりますから「役立たず」と切って捨てるのはいささか気の毒に思います。

その2「大男総身に知恵が回りかね」

「大男総身に知恵が回りかね」とは体ばかり大きくて知恵の回らない人を嘲った言い方で、「一寸の虫にも五分の魂」の対義語として使われます。体の大きな人は総じて動きが鈍いところからこのような言葉ができたのでしょうが、知恵と体の大小は関係ないことは言うまでもありません。このほか「一寸の虫にも五分の魂」の対義語には「大男の見かけだおし」「張り子の虎」などがあります。

\次のページで「「一寸の虫にも五分の魂」の英訳は?」を解説!/

「一寸の虫にも五分の魂」の英訳は?

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最後に「一寸の虫にも五分の魂」の英訳を見ていきましょう。

「Even a worm will turn.」

「Even a worm will turn.」を直訳すると「ミミズでさえ立ち向かってくる」となります。「worm」は普通、細長く脚のないミミズや蛭などを指しますから、ここでは便宜上ミミズと訳しました。一般的な昆虫の場合は「bug」と言います。ミミズのようなか弱い存在でも、いざ身を守るためなら立ち向かってくるという意味ですから、日本語でいう「一寸の虫にも五分の魂」に適した英訳と言えるでしょう。このフレーズは「一寸の虫にも五分の魂」を英語で言うときの決まり文句ですから、ぜひ覚えておいてください。

「一寸の虫にも五分の魂」を使いこなそう

この記事では「一寸の虫にも五分の魂」の意味・使い方・類語などを説明しました。最近は「一寸の虫にも五分の魂」などという言葉はあまり使わなくなりましたが、学歴、職歴にかかわらず互いに相手を尊重し、日々の生活を送っていきたいものです。

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【ことわざ】「一寸の虫にも五分の魂」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「一寸の虫にも五分の魂」について解説する。

端的に言えば一寸の虫にも五分の魂の意味は「非力でも馬鹿にできない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸の虫にも五分の魂」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸の虫にも五分の魂」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸の虫にも五分の魂」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸の虫にも五分の魂」の意味は?

「一寸の虫にも五分の魂」には、次のような意味があります。

どんなに小さく弱いものにも相応の意地があるのだから侮ってはならないということ。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「一寸の虫にも五分の魂」

一寸は尺貫法の単位で約3cmです。また五分は約1.5cmになります。「一寸の虫にも五分の魂」とはそれほど小さな虫にも意地があるという意味がこめられたことわざです。これを人間になぞらえてどんなに非力な弱者であっても、なにかしらの取り柄があるからけっして侮ったり馬鹿にしてはいけないとの戒めがこめられています。

「一寸の虫にも五分の魂」の語源は?

次に「一寸の虫にも五分の魂」の語源を確認しておきましょう。その由来には諸説あります。一番有力な説が鎌倉時代に六波羅探題や執権の補佐を務めた北条重時が武士としての心構えを説いた『極楽寺殿御消息(ごくらくじどのごしょうそく)』です。この書には「たとへにも一寸のむしには、五分のたましゐとて、あやしの虫けらもいのちをはをしむ事我にたかふへからす」と書かれており、これが初出ではないかと言われています。また近松門左衛門作の浄瑠璃『天智天皇』にも「青蝿は小さいけれども毒あって、腹中に入って五尺の人の命を取る。一寸の虫に五分の魂」のくだりがあるほか、勝海舟の父親・勝小吉(こきち)が町人を切り捨てた武士に立腹し言い放った言葉からきているとの説もあります。この場合、町人を虫に例えているわけですから、勝小吉も旗本として町人を見下していたことがはからずも明らかになりました。

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