端的に言えば足元を見るの意味は「相手の弱みに付け込む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「足元を見る」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/柊 雅子
イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。マスク、消毒用アルコール、使い捨てのゴム手袋…去年は足元を見られ続けた一年だったと思う彼女が「足元を見る」について解説する。
「足元を見る」の意味は?
「足元を見る」には、次のような意味があります。
1.相手の弱みにつけこむ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「足元を見る」
では、この「足元」とは何でしょうか。
【あし‐もと足元/足下/足許】
1.足が地についている所。また、その周り。「暗いから―に注意して下さい」「―に犬がうずくまる」
2.足の下部。「―に泥はねを上げる」「―が寒い」
3.ある人の、ごく身近な所。身辺。「まず―を固めて仕事にかかる」
4.足の運び方。歩きぶり。足どり。「―がふらつく」「―がおぼつかない」
5.苦しい立場。差し迫った状況。弱点。弱み。「―につけ込む」
6.物事を行うためのよりどころ。立脚地。足掛かり。足場。「事業の―を固める」
7.家屋の地面に近い部分。縁の下や土台など。
8.近いこと。直近。最近。「―金利の安定」「―の企業業績は好調」「―の搭乗率は平均でも5割程度」
9.「足元瓦(あしもとがわら)」の略。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「足元」
「足元」には随分沢山の意味がありますね。この中で「足元を見る」の「足元」を表しているのは「2.足の下部」と「4.足の運び方。歩きぶり、足どり」です。
人間は二足歩行。疲れは足にきます。たまに長距離を歩くと、足がだるくなりますよね。自動車、電車、飛行機…現在では様々な移動手段がありますが、昔は自分の足が主な移動手段でした。鉄道が主な移動手段になるまで、一般庶民は何処へ行くにも歩いて行ったのです。
いくら足腰が強い昔の人でも、長距離の移動で足が疲れるのは同じこと。今、「もう、歩くのもキツイなぁ」と思ったらどうしますか。「タクシーで行こうか」と思いますよね。昔のタクシーに当たる商売が駕籠かきや馬方。駕籠かきは人を駕籠に乗せて、馬方は馬に乗せてそれぞれ運びました。その際、運賃を決めるポイントとなったのが「足元」なのです。
「足元を見る」の語源は?
次に「足元を見る」の語源を確認しておきましょう。
どうしようもなく疲れている時、費用はかかってもタクシーを使いますよね。昔の人も同じです。駕籠かきや馬方は旅人の足元を見て、疲れ具合を判断し「この疲れた人なら少々高くても利用するだろう」という人には高めの運賃を吹きかけました。これが「足元を見る」の由来です。
「足元を見る」の使い方・例文
「足元を見る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.運転中に自動車の調子が悪くなり近くの整備工場から修理に来てもらったが、足元を見られ、出張費込みでかなりの金額を請求された。
2.今月は原材料が品薄状態で、得意先に契約した通り製品を納品できるかどうか怪しくなってきた。我々の足元を見て、材料メーカーは納品価格の値上げを要求。交渉はしてみるが、値上げは避けられないだろう。
3.日本では病気の治療をしても、足元を見られ法外な治療費を請求されるようなことはない。
運転中のトラブルは運転手や同乗者を大変慌てさせますね。「直ぐに直してもらえるものなら、大抵のことには目をつぶる」と思ってしまいます。そのために修理にかかった費用を知って「足元を見られた」、つまり「弱みに付けこまれた」と思うことも多いでしょう。
ビジネスでの契約は大変重要です。どんな理由があっても契約した数は契約した値段で納品しなければなりません。足元を見られて(弱みにつけこまれて)材料メーカーに値上げを要求されても品薄状態の中で材料を確保するためには値上げに対して「NO」とは言えませんね。
病気になりたいと思ってなる人はいません。でも病気になってしまったら「何とかして治したい」と思いますよね。そのためには高額な治療費がかかる場合もありますが、日本ではさまざまな制度を利用することによって治療費を抑えることができます。病気という「弱み」のために「足元を見られること」はないのです。
このように「足元を見られる」側には「つけこまれる弱みがある」、「その弱みのために高い料金を請求される」ということがわかりますね。
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