この記事では「衷心」について解説する。

端的に言えば衷心の意味は「心の底」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「衷心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。衷心より詫びるためなら土下座も厭わない。プライドはとっく捨てた。捨ててからはむしろ楽になったので、人に勧めたいくらいだそうだ。

「衷心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「衷心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衷心」の意味は?

「衷心」には、次のような意味があります。

心の中。心の底。衷情。「衷心よりわびる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「衷心」

まず、「衷心」を「あいしん」と誤って読む例が見受けられます。「衷」という漢字を、哀愁の「哀」と間違えているためでしょう。正しくは「ちゅうしん」と読みます。

「衷心」の意味は「心の奥底、心の中の本当の気持ち」です。普段の話し言葉ではあまり使われず、おもに冠婚葬祭での書き言葉として使われています。

「衷心」の語源は?

次に「衷心」の語源を確認しておきましょう。

「衷」という漢字を普段あまり使わないという人もいるでしょう。そもそも「衷」は高校で習うレベルの漢字ですので、易しい部類ではないということになります。しかし、「折衷案」や「和洋折衷」などといった熟語で「衷」という漢字を使った人もいるはずです。

そんな「衷」という漢字には、2つの意味があります。1つは先ほど出た「折衷案」や「和洋折衷」で使われている「なか、なかほど、偏らない」で、おそらくこちらの方がよく知られているでしょう。もう1つが「心のうち、まごころ」で、こちらが「衷心」に使われている意味です。つまり、「衷」と「心」が合わさって、「心より、まごころ込めて」という意味の「衷心」という熟語ができたということになります。

\次のページで「「衷心」の使い方・例文」を解説!/

「衷心」の使い方・例文

「衷心」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.衷心より深くお詫び申し上げます。
2.このたびは、貴社の新社屋が完成されましたことを衷心よりお慶び申し上げます。
3.本日はこの大会をどうにか開催する運びとなりましたが、まずは先日の火災で犠牲になられた方々に衷心より哀悼の意を表すため、会場の皆様に1分間の黙祷をお願いいたします。

「衷心」という言葉を、単に「衷心」だけで使うことはほぼないと言っていいでしょう。ほとんどが「衷心より」という形で使います

また、「衷心(より)」は非常にかしこまった言葉です。ビジネスシーンでは、目上の人に対してだけしか使いません。しかも、「衷心(より)」は話し言葉であまり使わず、挨拶状や礼状などの書き言葉として用います

ところで、この「衷心より〜」と聞いて、お悔やみの弔電を連想する人が多いのではないでしょうか。確かに「衷心より哀悼の意を表します」や「衷心よりお悔やみ申し上げます」という言葉を葬儀の場で聞くことが多いでしょう。しかし、「衷心」はそういった場に限られるわけではなく、たとえば結婚式の祝電でも「衷心よりお慶び申し上げます」などと聞けるはずです。しかも、「衷心」を使うのは冠婚葬祭だけに限りません。例文2のようなお祝いでも用いますし、お詫び・お願い・感謝の意を述べるなど、「衷心」という言葉によってそういった気持ちがあることを相手に強調して伝えることができます。

「衷心」の類義語は?違いは?

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ところで、「衷心」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「本音」

「心からの気持ち」と聞いて、「本音」という言葉の意味と思った人も多いはずです。実際に、辞書には「本心から出る言葉」などと書いてあります。

しかし、「衷心」の意味はあくまでも「心の奥底」です。もし「本音」の意味である「本心から出る言葉」に似せるためには、「衷心より申し上げる」などとすべきでしょう。

ところで、「衷心」はほとんどの場合で「衷心より」という形で使われると前述しました。よって、その「衷心より」の類義語も見ておく必要があるでしょう。「心より」「心から」「心底」「誠に」「切に」などが「衷心より」の類義語となります。

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「衷心」の対義語は?

では、「衷心」の対義語も見ていきましょう。

「建前」

「衷心」の類義語が「本音」であることは前の項目でふれました。そうなると、「本音」の対義語が「衷心」の対義語にもなると言ってもいいでしょう。

「本音」の対義語といえば、あの言葉がすぐに思い出されるはずです。そう、「建前」しかありえません。念のため辞書で「建前」の意味を調べると、「表向きの考え」とあります。心の奥底にある本当の気持ちではなく、あくまでも表面だけで示す考えということです。それならば、「衷心」の対義語としても差し支えありません。

「衷心」の英訳は?

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さらに「衷心」の英訳も見ていきましょう。

「from (the bottom of) one's heart」

単に「衷心」だけなら「in one's heart」となるでしょう。しかし、現実的には「衷心より」として使うことがほとんどですので、「衷心より」の英訳を見ていくことにしましょう。

「衷心より」は「心から」などと言い換えられる言葉です。よって、「from one's heart」と英訳することができます。もし、「心の奥底から」や「まごころ込めて」などと強調したければ、「from the bottom of one's heart」にすると良いでしょう。「bottom of〜」で「〜の底」です。

「衷心」を使いこなそう

この記事では「衷心」の意味・使い方・類語などを説明しました。

お祝いでもお詫びでも、相手に対して心からの気持ちを表さなければなりません。そんなときには「衷心」という言葉を使うと良いでしょう。「衷心より〜」などと手紙にしたためれば、受け取った相手は悪い気がしないはずです。ただし、「衷心」を使うのはあくまでも書状だけにして、話すときには別の言い方に変えましょう。あくまでも「衷心」はかしこまった言い方です。あなたが親しい友人に「衷心よりゴメン」なんて謝れば、ビックリされますので気を付けましょう。

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「衷心」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「衷心」について解説する。

端的に言えば衷心の意味は「心の底」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「衷心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。衷心より詫びるためなら土下座も厭わない。プライドはとっく捨てた。捨ててからはむしろ楽になったので、人に勧めたいくらいだそうだ。

「衷心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「衷心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衷心」の意味は?

「衷心」には、次のような意味があります。

心の中。心の底。衷情。「衷心よりわびる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「衷心」

まず、「衷心」を「あいしん」と誤って読む例が見受けられます。「衷」という漢字を、哀愁の「哀」と間違えているためでしょう。正しくは「ちゅうしん」と読みます。

「衷心」の意味は「心の奥底、心の中の本当の気持ち」です。普段の話し言葉ではあまり使われず、おもに冠婚葬祭での書き言葉として使われています。

「衷心」の語源は?

次に「衷心」の語源を確認しておきましょう。

「衷」という漢字を普段あまり使わないという人もいるでしょう。そもそも「衷」は高校で習うレベルの漢字ですので、易しい部類ではないということになります。しかし、「折衷案」や「和洋折衷」などといった熟語で「衷」という漢字を使った人もいるはずです。

そんな「衷」という漢字には、2つの意味があります。1つは先ほど出た「折衷案」や「和洋折衷」で使われている「なか、なかほど、偏らない」で、おそらくこちらの方がよく知られているでしょう。もう1つが「心のうち、まごころ」で、こちらが「衷心」に使われている意味です。つまり、「衷」と「心」が合わさって、「心より、まごころ込めて」という意味の「衷心」という熟語ができたということになります。

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