この記事では「鶴の一声」について解説する。

端的に言えば鶴の一声の意味は「様々な意見を押さえつけて権力者が発する一言」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

放送局の制作現場の最前線で10年の経験を積んだsinpeito88を呼んです。一緒に「鶴の一声」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/sinpeito88

放送局の現場で10年間、ニュース原稿などを日々執筆。より正確な情報を届けられるよう言葉の探求を続けている。

「鶴の一声」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鶴の一声」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。尚、「鶴の一声」は「つるのひとこえ」と読みます。「つるのいっせい」と読むのは間違いなので注意です。

「鶴の一声」の意味は?

「鶴の一声」には、次のような意味があります。

多くの人の議論や意見をおさえつける、有力者・権威者の一言。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鶴の一声」

「鶴の一声」は「多くの議論や意見をおさえつける、有力者や権力者の一言」の意味です。その一言によって、良い方向に向かったのか、悪い方向に向かったのかは関係なく使われます。ただ、多くの場合はネガティブな意味で使用される言葉です。一代で会社を大きくして成功者となった人間が、会社の未来を良い方向に導いた場合に言った言葉を「鶴の一声」と表現できます。一方で、経営感覚のない無能な権力者や、優秀なブレーンの進言を受け入れずに発せられたものも「鶴の一声」が使用可能です。

強力なリーダーシップを持つ人間の金言から、無能社長の迷惑発言まで「鶴の一声」という言葉。ただ、社会背景や会社での地位などを超えて多様な意見を排除しないように努めていくことが求められる現代社会では、「鶴の一声」自体、あまり良いものとされないのが実情となっています。

「鶴の一声」の語源は?

次に「鶴の一声」の語源を確認しておきましょう。

元々は「雀の千声鶴の一声」という言葉があり、これは「つまらない者のたくさんの意見よりも、優れたものの意見のほうが優れている」という意味の言葉でした。この後半部分の「鶴の一声」のみが独立して使われるようになり、「優れているもの、すなわち権力者」となったのです。

また、鶴は甲高く鳴いて周囲の動物たちを威圧します。そうした姿をなぞらえて、このことわざが生まれているのです。

\次のページで「「鶴の一声」の使い方・例文」を解説!/

「鶴の一声」の使い方・例文

「鶴の一声」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

監督やコーチは反対したが、GMの鶴の一声で人望ある選手を退団させた。

「鶴の一声」は、周囲の意見をおさえつける、有力者や権力者の一言という意味です。例文のように監督やコーチが反対したにもかかわらず、GMがその反対のことを決めてしまったという際は、まさに「鶴の一声」となります。語源である「雀の千声鶴の一声」で言うと、監督やコーチが「その選手は必要だから、契約を更新すべきだ」と進言しているのが「雀の千声」であり、GMが「おれが要らないというのだから要らない」と言ったことが「鶴の一声」となるわけです。

しかし、この例文からも推察できるように監督やコーチの発言が「つまらない者たちの意見」とは言い切れません。むしろ、チームの状況を考えれば必要な選手を退団させてはいけないという発言こそが「鶴の一声」かもしれないのです。こうしたことからも「鶴の一声」と単体でつかわれる際には「その権力者の一言が良い方向に導くものかどうか」は関係がないということが分かります。

「鶴の一声」の類義語は?違いは?

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「鶴の一声」は「様々な意見をおさえつける、有力者や権力者の一言」という意味です。この類義語としてあげられるものには「天の声」「さじ加減」といった言葉があります。いずれも「権力者の一言」という意味合いでつかわれる言葉です。しかし、ニュアンスが少しずつ違います。

まず「天の声」は「権力者や影響力の強い者の意見」という意味の言葉です。「天声」という言葉があり、「神様から授けられた声や言葉」という意味があることから、「権力者」を「神様」に見立てて使われます。また、「さじ加減」は「手加減、手ごころ」という意味の言葉です。これはつまり「権力者の手加減、手ごころの加え方次第で、すべてが変わってしまう」ということで「鶴の一声」と同じような意味合いでつかわれます。

その1「天の声」

「天の声」は「権力者や有力者、影響力が強い者の意見」という意味の言葉です。「トップダウン」のように「上から下へ向かって、有無を言わさずに従わせる」ようなニュアンスを持っています。「鶴」は甲高く鳴いて周囲を威圧していましたが、「天」つまり、「上の立場」から下々の者に命令するような発言を指して使われるのです。

また、ある朝の情報番組のコーナーで、ナレーションをする人を「天の声さん」と呼んでいますが、これは放送スタジオとは別な場所から、出演者の発言権をある程度制限して司会進行をすること。また、放送サブ(通常、スタジオより上階)から指令を受けて番組をコントロールしていることなどから、名づけられてものと思われます。

\次のページで「その2「さじ加減」」を解説!/

長年取材している記者が困惑するような選手起用を決めているのは、オーナーの「天の声」だ。

その2「さじ加減」

「さじ加減」は「手加減、手ごころ」という意味の言葉。この言葉単体では「鶴の一声」と同義にはなりませんが、主体者となる人物・団体が「さじ加減」することで、対象者の状況をコントロールしてしまえるという意味でつかわれることで同じ意味を持ちます。前述の「天の声」同様に「主体者のさじ加減」が被支配者の運命を左右できるということです。

若い社員が辞めていく理由は、この会社の昇進が現場での人望や評価ではなく、社長のさじ加減ひとつだからだ。

「鶴の一声」の対義語は?

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「様々な意見をおさえつける、有力者や権力者の一言」という意味の「鶴の一声」の対義語となる言葉は「様々な意見をおさえつける、有力者や権力者以外の一言」もしくは「有力者や権力者以外から出た、様々な意見」という意味を持つ言葉です。しかし、こうした意味の言葉は見つかりませんので、対義語としてあげられる言葉はないということになります。

また「鶴の一声」は「雀の千声鶴の一声」という言葉だったことを考えれば「雀の千声」は対義語となるかもしれませんが、こちらは独立して意味を持った言葉ではないので、対義語としてはあげられません。

「鶴の一声」を使いこなそう

この記事では「鶴の一声」の意味・使い方・類語などを説明しました。「様々な意見をおさえつける、有力者や権力者の一声」という意味のこの言葉。良い意味でも悪い意味でも使うことができるフレーズです。ただし、ニュアンスとしては「鶴の一声」で「意見が覆された」という印象があるため、あまり良い意味のときには使われません。むしろ、意見やここまでの道筋を台無しにする、「ちゃぶ台返し」を想起させるフレーズです。「また、(社長の)鶴の一声ですよ」と話している上司が多い職場は、早々に辞めたほうが賢明かもしれませんね。

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【ことわざ】「鶴の一声」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鶴の一声」について解説する。

端的に言えば鶴の一声の意味は「様々な意見を押さえつけて権力者が発する一言」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

放送局の制作現場の最前線で10年の経験を積んだsinpeito88を呼んです。一緒に「鶴の一声」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/sinpeito88

放送局の現場で10年間、ニュース原稿などを日々執筆。より正確な情報を届けられるよう言葉の探求を続けている。

「鶴の一声」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鶴の一声」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。尚、「鶴の一声」は「つるのひとこえ」と読みます。「つるのいっせい」と読むのは間違いなので注意です。

「鶴の一声」の意味は?

「鶴の一声」には、次のような意味があります。

多くの人の議論や意見をおさえつける、有力者・権威者の一言。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鶴の一声」

「鶴の一声」は「多くの議論や意見をおさえつける、有力者や権力者の一言」の意味です。その一言によって、良い方向に向かったのか、悪い方向に向かったのかは関係なく使われます。ただ、多くの場合はネガティブな意味で使用される言葉です。一代で会社を大きくして成功者となった人間が、会社の未来を良い方向に導いた場合に言った言葉を「鶴の一声」と表現できます。一方で、経営感覚のない無能な権力者や、優秀なブレーンの進言を受け入れずに発せられたものも「鶴の一声」が使用可能です。

強力なリーダーシップを持つ人間の金言から、無能社長の迷惑発言まで「鶴の一声」という言葉。ただ、社会背景や会社での地位などを超えて多様な意見を排除しないように努めていくことが求められる現代社会では、「鶴の一声」自体、あまり良いものとされないのが実情となっています。

「鶴の一声」の語源は?

次に「鶴の一声」の語源を確認しておきましょう。

元々は「雀の千声鶴の一声」という言葉があり、これは「つまらない者のたくさんの意見よりも、優れたものの意見のほうが優れている」という意味の言葉でした。この後半部分の「鶴の一声」のみが独立して使われるようになり、「優れているもの、すなわち権力者」となったのです。

また、鶴は甲高く鳴いて周囲の動物たちを威圧します。そうした姿をなぞらえて、このことわざが生まれているのです。

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